第54話「毒舌のロリメイドさん」
新作短編『スタイル抜群の美少女が今日も今日とて言い寄ってくる』を載せました!
後書きの下にあるタイトル名から飛べますので、どうぞよろしくお願いいたします(*´▽`*)
短編ですが、がっつりと書き込んでおりますヾ(≧▽≦)ノ
「笹川さん、立っておられずにどうぞおかけください」
戸惑って立ち尽くしていた僕に対し、彼女は優しい笑みを浮かべて座るよう促してきた。
一応この子のほうが来訪者のはずなんだけど、あまりの自然体にここの主のように思えてしまう。
「それでは……失礼します」
僕は一応頭だけ下げてソファへと腰かけた。
正直この子がどうして僕の元に来たのか全く見当がつかない。
それどころか、学校や名前まで知られていることに驚きを隠せなかった。
「えっと、どうして僕の名前や通っている学校のことを知っているのですか?」
とりあえず、そのことを僕は確認してみる。
すると女の子はニコッとかわいらしく微笑んだ後、ゆっくり口を開いた。
「まずは自己紹介をさせてください。私は不知火純恋と申します」
「えっ、不知火って……まさか、あの不知火さんですか……?」
「あら、ご存知でしたか」
僕の言葉に対し、かわいらしく小首を傾げてとぼける不知火さん。
上品な仕草や丁寧な口調から薄々気が付いていたけれど、やはり彼女はお嬢様だったようだ。
それも、超がつくほどの。
「ご存知も何も、小学生ですら知ってるくらい有名な財閥じゃないですか。海外にも幅広く展開してる大手企業を経営しているのですよね?」
「ふふ、そうですね。ですが、それはお父様たちの偉業であり、私が何かをしたわけではございません。ですから、一人の女性として接して頂けますと嬉しいです」
先程まで下口先生に見せていた強気で自信に溢れた態度ではなく、おしとやかで優しい笑顔を不知火さんは向けてきた。
綺麗な桃色をしたロングウェーブヘアーに、鈴花ちゃんと同じ純白に近い白い肌。
目から生える睫毛は普通の女性よりも長く、そして瞳は澄んだとても綺麗な桃色をしている。
鼻は同じ日本人とは思えないほど高くてスラッとしており、髪や瞳と同じ桃色をした唇は上品とさえ思ってしまう。
何より、女性らしいある一部分の主張が激しかった。
こんな大きいの、姉さん以外では初めて見たかもしれない。
鈴花ちゃんに見劣りしないほどの美少女だし、この大きさを見るに不知火さんは今まで多くの男を虜にしていそうだ。
「…………」
思わず不知火さんの女性らしい部分に視線を奪われていると、なぜか途端に寒気が襲ってきた。
そして寒気を感じるほうに視線を向けてみると、不知火さんの後ろに立つ幼くてかわいい顔をしたメイドさんがまるでゴミでも見るかのような目で僕の顔を見ている。
無言で見つめてくるメイドさんに僕は恐怖を感じずにはおられず、バッと顔を背けてしまった。
それを見てクスクスと笑った不知火さんが、メイドさんに控えるように言ってくれたおかげでメイドさんの表情が元に戻る。
危うく殺されるのではないかと思ったのは僕だけだろうか?
少なくとも不知火さんのお付きとなっているメイドさんはとても怖そうだ。
歳、僕と大して変わらなさそうなのに。
というか、年下のように見える。
「え、えっと、それでどうして今日はお越しになられたのでしょうか?」
僕は不知火さん以上にメイドさんの機嫌を損ねては駄目だと思い、出来るだけ丁寧な口調を心掛ける。
すると、また不知火さんはクスクスと笑って笑顔で口を開いた。
「そうかしこまらなくても大丈夫ですよ? 取って食べたりは致しませんので、普通のお友達とお話するような感じでお話ください」
そうは言われても、失礼を働いたら僕はどんな目に遭わされるかわかったものじゃない。
だけどこう言われて今のような口調を続ければそれはそれで失礼になりそうだし、敬語で固くならない程度に話したほうがいいのかな……?
といっても、僕そもそも身内以外と話すのは苦手なんだけど……。
「えっと、それではこれくらいな感じで――」
「対して変わっていないのでは?」
「あの、やっぱりちょっと難しいです」
無口かと思われたメイドさんに冷たい声でツッコミを入れられ、僕は白旗をあげる。
というかあの子やっぱり怖い。
年下に見えるのに声が冷たすぎるよ。
僕以外と話す時の鈴花ちゃん並に声が冷たい気がする。
「ふふ、それでは少しずつ慣れて頂ければ大丈夫ですよ」
しかし、最初に抱いた印象とは裏腹に不知火さんはとても優しい。
まるで上品な大人のお姉さんといった感じの人だ。
人付き合いが苦手な僕もこういう人とは話しやすいと思う。
ただ気になるのは、少しずつ慣れていけばいいというところだ。
もしかして、これからも僕と関わっていくつもりなのだろうか?
日本を代表する財閥のお嬢様が、どうして僕なんかに興味を持っているのか不思議でならない。
「さて、長話もなんですし、そろそろ本題にお入り致しましょうか。本日お訪ねさせて頂いたのは他でもございません、こちらの本に関してです」
そう言って不知火さんが僕に見せてきたのは、この前の同人即売会で発売した『クラスメイトの素っ気ない銀髪美少女は、ただ甘え方が下手なかわいい女の子でした』だった。
確かにこの人も同人即売会で買ってくれていたので、これを持っていることに関しては不思議じゃない。
だけど、どうしてこの本に関しての話があるのだろう?
もしかして、わざわざ感想を言いに来てくれたのかな?
「同人即売会では僕たちの本を買って頂きありがとうございました。凄く嬉しかったです」
「いえいえ、こちらこそとても素敵な作品をありがとうございます。行列に惹かれてご購入させて頂いただけなのに、お話の面白さに胸が躍りました。偶然であれご購入することができて私は幸せだったと思っております」
優しく温かい笑顔で不知火さんは自分の気持ちを僕に伝えてくれた。
僕たちの本を読んで楽しい感情を抱いてくれたことに心から嬉しく思う。
しかし、なぜか不知火さんの後ろではメイドさんが鼻で笑うような表情をした。
「かぐやが大量の本を捌いている間に、お嬢様一人で買いに行っていた時のことですね」
そうボソッと呟いた声は僕に届いており、そうなると当然僕とメイドさんに挟まれている不知火さんには聞こえている。
メイドさんの言葉を聞いた不知火さんは笑顔でメイドさんを見た。
「かぐや、何かおっしゃいましたか?」
「いえ、何も言っておりませんよ、お嬢様」
かぐやと呼ばれたメイドさんは不知火さんの言葉に対し、小首を傾げて無表情で答えた。
聞こえなかったふりをする不知火さんも不知火さんだが、聞こえているとわかっていながらもとぼけるメイドさんも凄い。
主に対して毒に近い言葉を平気で吐くこのメイドさんはいったい何者なんだ。
僕はメイドさんの立場、そして二人の関係性が気になってしまった。







