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クール美少女の秘密な趣味を褒めたらめちゃくちゃなつかれた件  作者: ネコクロ
第2章「譲れないもの」

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第45話「クール美少女は部屋にお邪魔したい」

「このシーンがいいの?」

「うん……!」


 鈴花ちゃんが指定したシーンに対して聞き返すと、彼女は力強く頷いた。

 クールな彼女にしては少し珍しい態度だ。


 まぁ、ヒロインが主人公の部屋に遊びに行くシーンは鉄板だし、彼女も好きなのだろう。

 それにファンになってくれている人たちも望んでいるかもしれない。

 だから僕は彼女の希望を呑むことにした。


「うん、いいと思うよ」

「本当……!? 今更だめって言うのはなしだからね……!?」

「う、うん、いいよ。後から駄目とも言わないし」


 僕がそう言うと、鈴花ちゃんの表情がパァッと輝く。

 なんだか勢いに押されて頷いてしまったんだけど、そんなにこのシーンを使いたかったのかな?


「――やった、これで文君のお部屋に遊びに行ける……!」


 鈴花ちゃんに視線を向けてみると彼女は僕から顔を背けて何やらブツブツと言っていた。

 結構一緒にいるのだけど、時々本当に彼女のことがよくわからない時がある。

 でも見える横顔は満足そうなので、そこまで気にしなくてもいいと思った。


 しかし、次の鈴花ちゃんの一言で僕は絶句する。


「それじゃあ、資料が必要だから文君のお部屋に遊びに行かせてね?」

「………………えっ?」


 いったい何を言われたのか。

 僕はそれが理解できなくて鈴花ちゃんの顔を見つめる。

 だけど、鈴花ちゃんは僕が戸惑ってることに気が付いてる様子はない。


「どうする? 今から行く?」


 むしろ、こんなふうに行こうと言ってきている。


「いや、えっ? 僕の部屋に行くの?」

「うん、行かないとだめでしょ?」

「な、なんで?」

「だって、資料が必要だもん」


 いや、うん。

 彼女が言いたいことはわかる。

 鈴花ちゃんは凄くイラストを描くことが上手なのにもかかわらず、エロイラストしか描けないという欠点を持っている。

 どうやら普通のイラストを描こうとするとイメージが頭から無くなってしまうらしい。

 だから、前に同人即売会で出した小説の表紙や挿絵は写真を参考にして描いてもらった。


 今回もその作品の続刊だから当然エロ小説ではないので、鈴花ちゃんは資料という名の写真がほしいのだろう。


「でも、僕の部屋じゃなくてもいいんじゃ……」

「このシーンで行くのは主人公のお部屋だよ? つまり男の子のお部屋じゃないと意味がないの」


「背景だけネットで調べて参考にすればいいんじゃ――」

「だめだよ……! 資料なんだから妥協はしたらだめ……!」


 僕の言葉を聞くと鈴花ちゃんは不服そうに頬を膨らませる。

 妥協というわけではなかったのだけど、この子はそういうふうに捉えてしまったらしい。


 だけど本当に、背景くらいはネットで検索してでてきたものを参考にしながら描けばいいと思う。

 それくらい鈴花ちゃんを僕の部屋に招くのには抵抗があった。


 ――しかし、鈴花ちゃんは全然退いてくれなかった。

 この後もお互いの主張がぶつかり、最後には鈴花ちゃんが頬をパンパンに膨らませて拗ねてしまったので結局僕が折れるしかなかったのだ。



          ◆



「こっちの道に来るのは初めてだね?」


 いつもの分かれ道を通り過ぎた後、鈴花ちゃんは嬉しそうに笑みを浮かべて僕に話しかけてきた。

 部活の時よりもテンションが高く見えるのは気のせいだろうか?


「本当に行くの? 引き返すなら今だよ?」

「もう、文君にしては珍しくもしつこい。いいから行くの。これは資料にするために仕方がないことなんだよ」


 仕方がないことだから鈴花ちゃんは割り切っているということだろうか?

 そんな大人な判断ができる子だとはもう思っていなかったけど、鈴花ちゃんは本当に時々驚かせてくれる。


 だけど、今回に限ってはそんな大人の判断はいらなかった。

 むしろ異性の部屋に上がり込むなど危ないと思ってほしい。


 もちろん僕が何かをするってことは絶対にありえないのだけど、鈴花ちゃんは凄くかわいいので危機感を覚えてほしいのだ。

 そして、僕の部屋に上がろうとは思わないでほしい。


 一応見られても困るような物はないはず。

 部屋の中を探られて困る物は姉さんがいるからそもそも買っていない。

 だから大丈夫なはずなんだけど……そもそも、意識をしている相手を自分の部屋に招くこと自体が緊張するのだ。


 むしろ僕が駄目だと言っていたのはその部分が大きい。

 やはりどうしても恥ずかしさは拭えなかった。


 今日は姉さんは予定があると言っていたし、父さんたちは仕事でいつも夜遅いので家族と鉢合わせするということはない。

 もし鉢合わせするようなことになれば鈴花ちゃんのことを根ほり葉ほり聞かれてしまうため、今日はいなくてよかった。


 でも、そうなると今度は鈴花ちゃんと二人きりということになるんだよね。

 自分の部屋どころか家で学校一の美少女と二人きり。


 そう考えると更に恥ずかしさが込み上げてきた。

 僕の鼓動は凄く速くなり、顔も凄く熱い。


 それに相手が鈴花ちゃんということは僕が予想しないことをしてくる可能性が十分あるので、この後何も起こらないとは思えないのだ。

 とりあえず、間違いが起きないことだけは気を付けておこう。


 僕は家に着いて鈴花ちゃんを中に入れながら彼女の行動に気を付けることにしたのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] ラブコメなので、何も起きないわけがない!
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