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クール美少女の秘密な趣味を褒めたらめちゃくちゃなつかれた件  作者: ネコクロ
第1章「クール美少女はただのかわいい女の子」

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第37話「かわいい彼女とやらかし」

「ごめん、春風さんが何に怒っているのかわからないや……」


 春風さんは教えてくれなさそうだし、僕としては思い当たる節がない。

 だからもうお手上げ状態だった。


「…………」


 僕が困ったように彼女の顔を見つめると、春風さんの頬がぷくっと小さく膨れ上がる。

 先程まではとても冷たい目をしていたのに、今はどこか子供が拗ねたようなかわいらしい表情になっていた。

 今しがた僕に話せないと言った時に照れたような、拗ねたような表情をしていたから気持ちが変わったのだろうか?


「どうしたら許してくれる?」

「……………………謝ってくれたら」


「えっ、でも、さっきは理由がわかっていないのに謝っても意味が無いって」

「いいから、もうそれで許すって言ってる……!」

「ご、ごめん」


 なんだか顔を赤くしながら怒られてしまい、僕は慌てて春風さんに対して謝った。

 すると、春風さんは『もういい、許す』と言って、再び踵を翻した。

 今謝ったのは春風さんの言葉に反発したことに関して咄嗟に謝っただけなのだけど、春風さんは許してくれたようだ。


 本当にいいのかな、これで。


 そう思ったのだけど、春風さんは許すと言ってくれた。

 だからもう気にするのはやめようと思い、僕は再び春風さんの隣に並んだ。


「えっと、それでどれに乗ろうか?」

「そうね、とりあえず笹川君はあれに一人で乗ってきたらいいんじゃない?」


 そう言って春風さんが指さしたのは、人が高いところから紐一本で落ちるアトラクションだった。

 いや、うん、アトラクションというか、バンジージャンプだ。


「あの、許してくれたんじゃなかったの……?」


 こんなものを勧めてくるだなんて、絶対に怒っているとしか思えない。

 だって怒りの捌け口にしようとしているもんでしょ。


「許してるわよ? ただ、あんなふうに飛ぶかっこいい笹川君を見てみたいって思っただけで」

「うん、そんな煽てようとしたって無駄だからね? 僕はそんな単純な男じゃないから」


「そう、残念。仕方ないからあっちでいい」

「いや、あれも絶叫系だよね? 全く何も納得してないよね?」


 次に春風さんが指さしたのは高さ二百メートルまで登った後、一直線に急降下するアトラクションだ。

 あれは外野として見ていても背筋が凍りそうなほど怖く感じる。

 そんなものを勧めてくる時点で全然変わってない。


「笹川君って意外とわがままよね」

「僕のことをわがままと言う春風さんが凄いよ」

「ふふ……」


 自由奔放な春風さんの言葉にツッコんでいると、ふと春風さんが笑みをこぼした。

 僕にはわからなかったけど、このやりとりは彼女的に楽しかったらしい。


「もうこれで本当に許したよ。だからもう気にしなくていいから」


 そう言う春風さんの表情は確かにスッキリしているようで、もう怒っていないことがわかった。

 どうやら僕を弄って満足したらしい。


 意外と――ではないのか。

 春風さんの持つ印象なら十分ありえることだけど、彼女はSなのかもしれない。


 まぁでも、僕と二人きりの時の普段の様子を見てるとむしろ逆なような気がするけどね。

 さすがに明言はしないけどさ。


「ありがとう」


 僕は今思っていることは口にせず、春風さんに感謝の気持ちを伝えた。

 すると春風さんも満足したようで、何も言わずに隣を歩く僕との距離を詰めてきた。


 それからは、メリーゴーランドやコーヒーカップという比較的おとなしい乗り物で遊んだり、ジェットコースターのように空に作られたコースを二人乗りの自転車をこいで移動するというアトラクションに乗ったりした。


 後は、スケート場というのもあったので二人でローラースケートをして遊んだ。

 春風さんは運動が苦手なのかスケート場に出た瞬間にこけるというハプニングもあって春風さんが涙目になったりもしたのだけど、手を引いてあげると滑れたのでとても喜んでいた。

 手を繋ぐのは子供っぽくて恥ずかしいと思ったのか顔は赤かったけど、表情は嬉しそうに笑みを浮かべていたのでとてもかわいらしかった。

 そんな彼女を見ていると幸せな気持ちになり、もう春風さんのことしか考えられなくなったくらいだ。


 ――そう、写真を撮ることを忘れるほどに。


「やっちゃった……」


 僕が写真のことを思い出したのは、空が夕日に染まり始めた頃だった。

 今日遊園地に来てから撮った写真はフォルダ内に一枚もない。

 つまり、ここに来た目的を一向に果たしていなかったというわけだ。


「写真、まだ撮るつもりでいたんだ?」


 スマホを見て固まる僕に春風さんが声をかけてきた。

 少し顔を寄せてきて、僕の手元にあるスマホの画面を覗き込んでいる。


「だって、今日の目的はこれだったんだし……」

「どんな写真を撮ろうとしてたの?」

「アトラクションで楽しく遊ぶ春風さん」

「……あの、後で写真全部チェックするからね? いくら笹川君でも持っていていい写真と持っていたら駄目な写真があるんだから」


 春風さんは何を言ってるんだろう?

 イラストの資料にする写真を選ばないといけないのだから春風さんにもチェックをしてもらうし、資料に使わない彼女の写真は全て僕が持っていていいはずがないのにね。

 だからちゃんと後で消すつもりだよ。


「心配しなくても大丈夫だよ」

「うん……。それで、遊園地の写真を一枚も撮れてないけど、もう帰るのよね? どうするつもりなの?」

「まぁ一応、最後に観覧車だけは乗ろうとは思ってるけど……」

「観覧車……!」


 なんだろ、観覧車というと春風さんがとても嬉しそうな声を出した。

 というか、顔近いな。

 息が当たりそうな距離じゃないか。

 おかげで胸の鼓動が凄く速くなってしまっているんだけど。


「そっか、そっか、観覧車乗るんだ」

「あぁ、よかった。春風さん乗りたかったんだね」

「別に、乗りたかったとは言ってないと思うの」


 今しがた観覧車に乗ると聞いて上機嫌になったのにいったいこの子は何を言ってるんだろう。

 でも指摘して機嫌が悪くなっても困るし、ここは黙っていよう。


「観覧車での撮影、夕日が映る海を眺める春風さんを写真にするのは綺麗かもね。夕日の光がいい具合に春風さんを照らしてくれそうだし」

「……笹川君って前から思ってたんだけど、わざと言ってるの? それとも素で言ってるの?」

「?」

「うん、いい。今のでわかったから口にしなくていい」


 春風さんの質問の意味がわからなくて首を傾げると、なんだか呆れられた声を出されてしまった。

 そして春風さんはソッポを向いてしまったのだけど、もしかして僕はまた怒らせてしまったのだろうか?

 髪がかけられることで見える耳が赤く染まっているのは、彼女の怒りなのかそれとも夕日なのか、いったいどっちなんだろう。


 ソッポを向いてしまった春風さんを見て、僕は最後の最後にまたやらかしてしまったのかと心配になるのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 「……笹川君って前から思ってたんだけど、わざと言ってるの? それとも素で言ってるの?」 「?」 「うん、いい。今のでわかったから口にしなくていい」 このやり取り好きです! 観覧車乗ったこと…
[一言] コーヒーカップは大人しくない。 悪魔の乗り物だ、あれ。
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