第34話「やる時はやる男と敵に回したくない男」
新作ラブコメ『握手会で推しアイドルに告白した次の日から隣の席に座る目隠れ女子の様子がおかしいんだけど?』を投稿いたしました!
ネコクロが今書ける最高の物語になっていますので、楽しんで頂けますと幸いです!
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「――ねぇねぇ、いいじゃん。俺らと遊びに行こうよ」
春風さんたちに近付くと、漫画のモブキャラみたいに軽い口調で二人組のチャラ男のほうが春風さんを口説いていた。
春風さんはそんなチャラ男たちを汚らわしい物でも見るような目で見ており、話し掛けるなオーラを全開に出している。
しかしチャラ男は冷たく接する女の子にも慣れているのか怖気づいた様子はない。
むしろ逆に乗ってしまっていた。
まるで自分を毛嫌いする女を堕とすのが楽しいとでもいうかのように。
「あの、すみません。彼女に手を出さないでもらえますか?」
僕はすぐに春風さんとチャラ男の間に体を滑り込ませた。
正直言えばこういう男たちは僕が大の苦手とする人たちだ。
気楽に喋る口調にはついていけないし、責任感がなさそうな態度も僕とは折り合いが合いそうにない。
そしてこういった人間は結構喧嘩慣れしてたり、自分より下だと思う人間には強気で当たってくるところがある。
そういうところが苦手だった。
でも、春風さんが絡まれているならほっとくわけにはいかない。
正直関わりたくない人たちではあるけど、春風さんを守らないといけないから。
――しかし、チャラ男は僕の予想に反する態度を見せた。
「おっ、君もめっちゃかわいいじゃん!」
「えっ?」
「ボーイッシュもいいね! その子の連れなの? どぉ? 俺たちも二人だし、このまま遊びに行かない?」
春風さんに手を出されないよう邪魔に入った僕は、まさかの遊びに誘われてしまった。
いくら誘っても動きそうにない春風さんを、連れである僕を使って内部から崩そう――そういう魂胆ではないだろう。
だって、思いっ切りかわいいって言われてるし。
これ僕が女の子って思われてるんじゃないだろうか。
「いや、あの、僕男ですから……」
予想外の反応に戸惑いながら僕は自分が男だと主張する。
すると、目の前にいたチャラ男たちはパチパチと瞬きをした後、お互いの顔を見合わせる。
そして、チャラ男のほうがいきなり吹き出した。
「ぷっ……あはは! 君いいね! はいはい、男の子かぁ。そっかぁ」
うん、この反応絶対に信じてないな。
男たちを退けるために咄嗟についたと嘘だと思われたようだ。
「いや、本当に僕は男ですから」
「そうだね~。で、どこに行く?」
――イラッ。
人の話を聞かず、こちらの行動を勝手に決めつけるチャラ男に少しイラッとした。
だけどここで問題を起こすわけにはいかないし、この男たちを敵に回すのは避けたい。
だからグッと我慢した。
春風さんは本当は心細かったのか、何も言わずに僕の服の袖をギュッと握ってきている。
それだけでなんだか勇気が沸いた。
「すみません、僕たちはこれから行くところがあるので」
「どこ? 俺たちも付き添うよ」
「いえ、大丈夫です。それに、僕は本当に男なのでこられてもご期待には沿えませんよ」
チャラ男が早く諦めてくれるように僕は男だと主張し続ける。
すると、チャラ男は初めて顔をしかめた。
「ちっ、あのさ。君が男なら正直きもいよ? だって、見たまんま女の子じゃん。それで男ってなら女々しくて虫唾が走る」
――カチンッ。
チャラ男に馬鹿にされた途端、僕の中で何かが切れた。
人が気にしているところをずけずけと踏み込んでき、挙句の果てに自分の期待通りでなかったらきもいとは実に身勝手な男だ。
自分の思い通りにならなければすぐに牙を向ける、そういう人間が僕は一番大嫌いだ。
「ちょっとあなた――!」
「ごめん、春風さん。いいから」
僕は文句を言ってくれようとした春風さんの手を押さえる。
そして、チャラ男のことを笑顔で見つめた。
「な、何笑ってるんだ?」
僕が笑顔を見せると、何か気後れしたようにチャラ男は一歩下がった。
まるで得体の知れない気味が悪い物でも見るかのような目だ。
「別に、ただおかしくてね。あなたのような軽薄で物事を何も考えていない人間を見てるとおかしくて仕方がないんです」
「あっ? どういう意味だよ?」
「いえいえ、僕はただ思っていることを口にしただけですので。ただ、あなたのような軽薄そうな男には決して彼女を渡したりはしませんよ。だから諦めてさっさとどっかに行ってください」
「この――!」
僕の言葉を聞くと、血相を変えた男が僕の胸倉を掴もうと手を伸ばしてきた。
こういう人は楽でいい。
ちょっと挑発しただけで怒りに身を任せてくれるのだから。
怒りの表情に含まれた若干怯えが入った表情を見るに、怒りで自分を鼓舞しているところもあるのかもしれない。
まぁ、そんなことはどうでもいいか。
怒りに身を任せた人間は実に単純な動きをしてくれるか本当に有難い。
僕は男が手を伸ばしたと同時に持ち歩いていた鞄へと手をツッコんでいた。
そして、ある物を引き抜こうとするが――
「その辺にしとけ」
――もう一人いた、カジュアルな服装の男の手によってチャラ男の手は止められてしまった。
「りゅ、龍弥……?」
「もういいだろ、これ以上恥を晒すな」
「ど、どういう意味だよ!」
「あっ?」
「――っ! わ、わりぃ、なんでもない……」
連れに見えて実は上下関係があるのか、龍弥と呼ばれた男に睨まれた途端チャラ男のほうは退いてしまった。
おそらく龍弥という男のほうが喧嘩が強いのだろう。
確かに、静かに佇む姿や、女受けの良さそうな自信に溢れる男前の顔付きには雰囲気がある。
チャラ男を掴んだ時に見えた手にも血管が浮き上がっており、無駄なく筋肉が付いていそうだった。
「悪かったな、邪魔をして」
龍弥という男はそれだけ言うとチャラ男を連れて駅のほうへと歩いて行った。
謝ってきた時に視線は鞄に突っ込んでいる僕の右手へと向いていたことから、僕が何かをしようとしていたことには気付いていたようだ。
あぁいう男は敵に回してはいけない。
素直に退いてくれてよかったと思う。
「「「「「おぉ~!」」」」」
男たちが退いてくれて安堵していると、なぜか周りから歓声が上がった。
パチパチとみんな拍手をし、僕のことを称賛してくれている。
「えっと……?」
僕は困惑しながら周りを見回す。
すると、何やら顔を赤く染めて潤った瞳で僕の顔を見つめる春風さんが視界に入った。
だけど、目が合うと彼女は途端に俯いてしまった。
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