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クール美少女の秘密な趣味を褒めたらめちゃくちゃなつかれた件  作者: ネコクロ
第1章「クール美少女はただのかわいい女の子」
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第3話「クール美少女の秘密」

「あっ、えっと、その……」


 このままではまずいと察した僕はどうにか言い訳できないか頭を回転させたけど、生憎これといっていい手段が浮かばずに言葉になっていない言葉しか出てこなかった。

 そんな僕に対して春風さんは無言で近寄ってきて、ブンッと勢いよく僕の手からメモ帳を取ってしまった。


 やばい、怒られる――と思ったのも(つか)の間、春風さんはそのまま無言で僕を見てきたかと思えば、なぜかみるみるうちに目の端に涙を溜め始める。

 そしてガクッと全身の力が抜けたように床へとくずおれてしまった。


「だ、大丈夫……?」


 さすがに目の前で座られてしまえば放っておくわけにはいかず、僕は春風さんに声をかけてみる。

 しかし僕の声が届いているのか届いていないのか、春風さんは絶望に染まった表情をしていた。


「終わった……」

「えっ、何が……?」

「私の人生終わった……! もう学校これない……!」


 いったいどうしてしまったのか、春風さんは両手で顔を覆ってしまう。

 僕の声は届いているはずなのに、それに対して反応が返ってこない。


 どうしよう?

 僕はどうしたらいいんだ?


 急な展開に僕は頭が混乱してしまい、自分がどうしたらいいのかわからない。

 こんな急展開、ラノベでもそうそうないんじゃないだろうか。


 とりあえず彼女から話を聞かないとどうしようない。


「春風さん、いったいどうしたの……?」

「な、名前まで知られてる……! もう本当にお終いよ……!」


 しかし、名前を呼ぶと絶望感からか打ちひしがれてしまった。

 この学校の生徒ならほとんどの人が知ってるくらい有名人なのに、本人にはそれほど自覚がないのかもしれない。

 そのせいで何か悪い事をされるんじゃないかと心配しているようだ。


 それどころか、次第に涙を流し始める。

 いきなり泣き出すものだから僕は慌てて声を出した。


「な、何もしないよ? ね、だから泣きやんでよ」

「ひっく……ぐすっ……本当に……何もしない……?」


 声を掛けると、春風さんはクール美少女というのが嘘かのように子供みたいな泣き顔を僕に向けてきた。


 うん、これは僕の信用のなさのせいかな?

 別に何かを要求した事はないはずなのに、とても不安げな顔で見上げられてしまった。


 その際に『美少女が涙目で上目遣いに見上げてくるのはかわいいなぁ』と思ったのはここだけの話。


「うん、何もしないよ。それで、なんで急に泣きだしたの?」

「……わかるでしょ?」


 いや、わからないから聞いてるんだけど。

 突然部室に現れてメモ帳をとられたと思ったら、そのまま絶望して泣き出されたんだから急展開に頭がついていってないよ。


 ……あれ?

 メモ帳をとってから泣き出した?


 ふと、自分が思い浮かべた言葉に僕は疑問を抱く。


 そういえばなんか、『終わった』とか、『もう学校にこれない』とか言っていたよね?

 いや、もちろん僕が春風さんのエロイラストを描いていたと勘違いされて、性的な目で見てくる男がいる学校にはもう通えないと言っているようにも取れるのだけど、多分先程の様子を見るにそれは違うと思う。

 むしろ、隠しておきたかった自分の秘密を誰かに知られてしまった時の反応に近かった気がする。


 まさか――。


「えっと……そのメモ帳の持ち主、春風さん……?」

「………………はい」


 恐る恐る尋ねてみると、春風さんは小さくコクリと頷いた。

 そして自分の予想が的中してしまった事に僕は顔を手で覆いたくなる。

 もちろんそんな事をすれば春風さんを傷つけてしまうからグッと我慢したけど、それでも内心動揺は隠せない。


 あの素っ気ない事で有名なクール美少女の春風さんが、まさかエロイラストを描いていたなんて……。

 こんな事をみんなが知ったら軽く学校中がパニックになりそうだ。

 それに、何を思って春風さんはこんなのを描いているのか。

 普通高校生ならかわいいキャラのイラスト絵は描いても、エロイラストなんて描かないと思うんだけど……。


「ぐすっ……軽蔑したような目で私を見てる……」


 一人思考を巡らせていると、目の前にへたりこんでいる春風さんがなんだかまた泣きだしそうになっていた。


「そ、そんな目で見てないよ! ほら、あれだよ! イラストを描くのが凄く上手だなぁって思ってたんだ!」


 また絶望されたり泣き出されると困るため、僕は慌ててフォローをする。

 しかし、言葉にしてから後悔をした。

 本来この状況ではメモ帳に触れない事が正解だった。

 少なくともそこから気を逸らすべきだったのに、よりにもよってメモ帳に関する話題を持ち出すだなんて僕は馬鹿か。


 自ら地雷を踏み抜いた僕は恐る恐る春風さんの顔を見てみる。


 そして、息を呑んだ。


 先程まで涙目で僕の顔を見上げていた春風さんが、何かを期待するかのように目を輝かせながら僕の顔を見上げていたからだ。


「ほんと……?」


 春風さんは涙によって潤んだ瞳で僕の顔を見つめながらかわいらしく小首を傾げた。

 正直かわいさに拍車がかかったと思う。


「う、うん、本当だよ」


 あまりのかわいさと、予想していたのとは違う反応だったため僕は少し言い淀んでしまったけど、イラスト自体に関しては本当に上手だと思っていたので素直に頷く。

 まぁ、内容には思うところが物凄くあるのだけど。


「どこが?」

「え?」

「どこがよかったの?」


 どこがって、もしかしてエロイラストの感想を聞かれているの?

 いやいや、まさか。

 だって僕が言ったのは上手という事だけで、よかったと言ったわけじゃないし。


 だけど――チラッと春風さんの顔色を窺ってみると、物凄く期待したような目で見つめられていた。

 どうやら本当に感想を求められているみたいだ。


 えっ、女の子相手にエロイラストの感想を言うだなんてなんの罰ゲーム?

 しかも相手はあの春風さんだよ?

 今はなんだか様子が変だけど、エロイラストの感想をまじめに言ったりしたらどん引かれて冷たい目を向けられるんじゃないのかな?

 さすがに僕にはそんな度胸なんてないんだけど?


 ましてや美少女からジト目や白い目を向けられて喜ぶような性癖もないしね。

読んで頂き、ありがとうございます!(^^♪


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― 新着の感想 ―
[一言] エロイラスト……しかも凌辱よりのイラストの感想を異性の女性に言う……。流石にきつくない……? まだ、某甘えん坊みたいにエロゲやる方がましな気が……どっちもどっちか。 いや、でもあっちは至って…
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