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クール美少女の秘密な趣味を褒めたらめちゃくちゃなつかれた件  作者: ネコクロ
第1章「クール美少女はただのかわいい女の子」

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27/62

第27話「気が付いた時にはもう遅い」

 それに、家では状況を知った姉さんが文章力アップの訓練を見てくれるし、プロだった人とプロの人に直接教えてもらえる僕は幸せ者だ。

 特に姉さんはとても優しい人なため、本当に丁寧に教えてくれた。

 SNSを使っての宣伝の仕方も教えてくれたし、そのおかげでファンも増えたのだろう。


 おかげで直し中の小説作品はみるみるうちにランキングを駆け上り、もうすぐ表紙と呼ばれる五位以内に入りそうだった。

 もらう感想も『面白い』とか、『かわいい』、『尊い』など、褒め言葉ばかりで、何より今までと違って感想がたくさんもらえている。

 これはかなり僕のモチベーションへと繋がっている。


 自分が書いた作品を褒めてもらえることはやっぱり嬉しいからね。

 春風さんがちやほやされるためにイラストを描いているという気持ちが分かった気がした。


 正直順調すぎるとも言えるくらいに、僕のほうは上手くいっている。

 神代先生も姉さんもとても面白いと言ってくれているくらいだ。

 

 ……まぁただ、二人が一番いいと言ってくれているのは、文章力が上がったところじゃなくてメインヒロインの魅力が数段よくなっているとのことらしい。

 僕と春風さんの関係を知る神代先生は僕に生暖かい目を向けてくるし、姉さんは姉さんで、彼女ができたのか、とか色々と聞いてきた。

 本当こういうことになると女の人は喰いついちゃうよね。


 まぁそれはそうと、これなら本当に100冊だって売れるかもしれない。

 それぐらい本当に僕は順調だった。


 ――しかし、そんなふうに考えたのがよくなかったのか、問題は僕が気付いていないだけでとっくに起きていた。


          ◆


「春風さん、調子はどう?」


 あれから三週間ほど経った頃、僕は隣でイラストを描いている春風さんになにげなしに話しかけてみた。

 今までは進捗具合を聞いても『後のお楽しみ』ということで見せてくれなかったけど、そろそろ印刷所にお願いしないといけない日も近付いてきたため教えてほしい。


 そう思ったぐらいだったのに、僕が声をかけた瞬間春風さんの体はビクッと大きく跳ねた。

 まるで都合が悪いことを聞かれて動揺したかのような反応だ。


 そして春風さんは俯いてしまい、両手を膝の上に下ろして握り拳を作った。


 これはもしかして……。


「まさか、全然できてない?」


 コクッ――。


 春風さんは僕の質問に対して小さく頷いた。


「えっと、何枚かけてるの?」


 僕が尋ねると、春風さんは小さく首を横に振る。

 つまり一枚も描けていないというわけだ。

 さすがのそれには僕も絶句する。


 三週間もあって一枚も描けていないなんて思いもしなかった。

 順調だという言葉を信じていた僕も僕だけど、春風さんはどうして正直に言ってくれなかったのか。

 もっと早く言ってくれていればまだ手は打てたかもしれないのに、残り少なくなった今ではもう遅い。

 いったいどうすればいいのか。


 状況のまずさを理解した僕は春風さんへと視線を向け直す。

 春風さんは俯いたまま顔を上げようとはしない。

 怒られるということがわかっているのだろう。


 仕方ない、できていない物は今更怒ったってできるわけじゃないんだ。

 それよりもこれからどうするかを考えないと。


「どうして描けないの? やっぱり、いつも描いているようなイラストじゃないと描けない?」


 乗った時の春風さんのイラストを描くスピードはかなり速い。

 だけど、彼女はエロイラストじゃないと描けないと昔言ったことがあった。

 今回は大丈夫って言っていたのだけど、やっぱりエロイラストじゃないと描けなかったんじゃないだろうか。


 しかし、春風さんはギュッと握り拳を作りながら、首を左右に振った。


「わかんない……」

「わかんないって……」

「描けると思ってたの。だって、私この作品が本当に好きで、シーンなんかも今まで何回も思い浮かべてきたんだから。でも……いざ描こうとすると、なんでか白いモヤが脳内にかかってイメージが消えちゃうの……。ごめんなさい……」


 春風さんは謝ると、深く頭を下げてきた。

 そして床にポツポツと雫が春風さんから落ち始める。


 その様子を見て彼女が泣いているんだってことがすぐにわかった。


「春風さん、大丈夫だよ。まだ日は残ってるんだし、挿絵の枚数も減らすことができるから、泣かないで大丈夫だよ」


 僕はなるべく優しい声を意識し、どうにか励まそうと声をかける。

 正直日程はかなりきついだろうけど、最悪表紙だけでもいい。

 そう考えるとまだ時間は残されていた。


 だけど春風さんはぐすぐすと鼻を鳴らすだけで、全然泣きやんでくれない。

 その姿を見て僕は胸が締め付けられる思いに襲われる。


 春風さんの泣いている姿なんて見たくない。

 確かに今回は彼女のせいでこんなことになってるけど、春風さんがわざと一枚も描かなかったというわけじゃない。

 描こうと頑張っていたけど、描けなかったのだから責めるわけにはいかないんだ。


 ……まぁちゃんと連絡はしてほしかったけどね。


 春風さんの泣き顔を見たくなかった僕は、どう彼女を慰めようかと悩み始める。

 そして、一つこういう時にするといいと昔姉さんから教わった慰め方を思い出した。

 早速僕はその慰め方をしようと、春風さんの頭に向けてゆっくりと手を伸ばす。


 そう、いわゆる頭なでなでだ。


 姉さん曰く、女の子でこれをされて嬉しくない人はいないんだとか。

 もし女の子を泣かせてしまった時がきたら、こうすればいいのって教えてくれたもんだ。


「大丈夫、大丈夫。これからどうしようか、神代先生を交えてちゃんと話そうよ」

「う、うん……」


 僕が笑顔を向けると、彼女は真っ白な肌を真っ赤へと変えてコクコクと頷いた。

 なんだか急にしおらしくなっているけど、いったいどうしたんだろう?


 僕は春風さんの様子が気になったが、今はとにかく神代先生に事態の報告をしないといけない。

 だから不自然にくっついてくる春風さんに少しドキドキしながら、僕は春風さんとともに文芸部の部室を出た。

いつも読んで頂きありがとうございます!


後書きやtwitterのほうでは既にご報告させて頂きましたが、

この度ブレイブ文庫様より書籍化して頂きます!ヾ(≧▽≦)ノ


イラストレーター様は千種みのり先生です(*´▽`*)

とても凄いイラストレーター様が担当して下さり、本当に嬉しい限りです(#^^#)


今まで応援して下さった皆様に楽しんで頂ける作品にいたしますので、

これからもどうぞよろしくお願いいたします!!

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― 新着の感想 ―
[一言]  うーん……。一応、仕事のようなものだから、報連相はしっかりしないと駄目だと思うんですがね。描けないのは仕方がなくても、それを黙って詰んだら終わりなんだし……。  後、文也に緊張感が無さすぎ…
[一言] 何かの心理的障害を取り除かないと書けないのか。 ゾーンに入ったらすごく速く仕上がるのかもしれないけれど。文章みたいに積み重ねで時間をかけないと量は稼げないのとは違うのかな。
[良い点] 可愛い! [一言] 尊い!
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