第2話「メモ帳に描かれていたのは文章ではなくエロイラスト!?」
放課後――僕は自分が所属している文芸部の部室を訪れていた。
部とは言っても、去年姉さんを初めとした先輩たちみんなが卒業していった事で、今年は二年生の僕一人になってしまっているんだけど……。
人と関わるのが苦手で積極的に部員を勧誘しなかったのだけど、完全にそのせいで部員不足になっている。
二、三人くらいは自分から入ってくれる人がいるかと思ったのに、その期待は儚く散ったのだ。
今年は新入生が入部してくれればいいのだけど、去年の事を考えるに期待は薄いかもしれない。
まぁ僕も姉さんがいなければ入ってなかっただろうから、人の事は言えないのだけど。
さて、無い物ねだりをしても仕方がないのでそろそろ小説の続きを書く事にしよう。
それに正直言うと、一人のほうが気を遣わなくて楽だしね。
僕は昼休みに小説を書いていたメモを鞄から取り出し、部室に備え付けられているパソコンの前に置く。
いつも昼休みで書いて、続きは部活で書くというのが今の僕のスタイルになる。
そして書き終えたらWeb小説サイトに載せてるんだ。
今日はクラスメイトに声をかけられたからあまり進んでないし、この時間でしっかりと書かないといけない。
――そう思ってメモ帳に視線を落とした時、僕は少し違和感を抱く。
「あれ、僕のメモ帳こんなに綺麗だったかな……?」
結構使い込まれているような雰囲気はあるけど、どことなくメモ帳の表面が綺麗な気がする。
僕が持っていたメモ帳はもう少し汚れていたような気がするんだけど……まぁでも、よくよく見てみるとこんな感じだったかもしれない。
自分の手元にある以上このメモ帳は僕のだろうし、鞄の中に他にメモ帳があるようにもなかった。
だから気にせずメモ帳を開いたのだけど――開いた瞬間、視界へと飛び込んで来たイラストを見て僕は固まってしまった。
僕の視界に入るもの、それはファンタジー特有の獣耳らしき物を生やす美少女だった。
しかし、それだけじゃない。
服はほとんど千切られたようになっているし、全身には触手が絡みまくっていた。
そして表情は、男の性欲を刺激するようなとろけた表情になってしまっている。
僕の視界に入ってきた物――それを簡潔に言うと、エロイラストだった。
「……ふぁっ!?」
ジッとイラストに見入っていた僕は我に返ると慌ててメモ帳を閉じる。
なんで!?
なんで小説を書いていたはずのメモ帳にエロイラストが描かれているの!?
まさか僕が書いていた小説が勝手にイラストに――って、いやいや!
僕そんなエロ小説書いてないし!
普通に健全なラブコメを書いてるんだ!
だから関係ないし、そもそも小説が独りでにイラストに変わるなんて事ありえない!
いったいどうしてこんな事に――!
突然の事態によって僕の頭の思考は完全に混乱していた。
そして自分でもなぜだかわからないけどもう一度メモ帳に手を伸ばし、ゆっくりとページをめくってみる。
すると、他のページにもやはりエロイラストが描かれており、獣耳の美少女だけでなく、清楚そうなお嬢様や、厳しそうな女教師――もしくは、秘書らしき女性。
他にもギャルっぽい子などのエロイラストが描かれていた。
ただ一つ共通しているのは、全員拘束されて触手や道具で責められている事。
一ページたりとも相思相愛のエッチシーンはなく、全員無理矢理犯されて悔しそうにしてたり、後は泣きながら我慢している表情やもう完全に快楽へと堕ちてしまっているような表情が描かれていた。
どうやらこのイラストの作者はよほど偏った性癖があるらしい。
「ごくっ……」
僕はいつの間にかまたイラストに見入ってしまっており、思わず唾を飲み込んでしまう。
まだ頭の中は混乱してしまっているけど――いや、むしろ混乱してしまっているからこそ脳の処理が追い付かずにこのイラストに見入ってしまっているのかもしれない。
それに何かこのメモ帳の持ち主の手掛かりがあるかもしれないじゃないか。
僕はそう自分に言い訳をしつつ、エロイラストをジッと見つめてしまった。
このイラスト、かなり上手だ。
たまにSNSでプロのイラストレーターさんが描いたエロイラストが流れてくるけど、キャラの形だけを見るとそれらのイラストに勝るとも劣ってはいない。
さすがにこのメモ帳に描かれているイラストには色がついていないけど、色がついたらいったいどんなふうになるのか見てみたいと思ってしまった。
――その時だった、部室のドアがいきなりノックされたのは。
「入ってもいいかしら?」
四回ノックされた後に聞こえてきた声は音色のように耳障りのいい女の子の声。
少し冷たさが含まれたような声ではあったけど、僕にはこの声に聞き覚えがあった。
ほんの数時間前に聞いた声だったからだ。
どうしてノックを三回じゃなく四回?
――という疑問はさておき、僕は思わぬ来訪者に体が硬直してしまった。
どうして彼女がここに?
もしかしてなくなった僕のメモ帳は彼女の手元にいっていた?
そのような疑問が頭を駆け巡り、僕は本来取らないといけない行動を取れなかった。
そしてその数秒のロスが命取りになる。
「入るわね」
そう、僕が返事をしなかった事で、声の主が部室へと入ってきてしまったのだ。
入ってきたのは、銀色に輝く髪を長くまっすぐと下におろした女の子。
顔はすれ違えば誰もが振り向きそうなほど整った顔つきをしており、上品に歩く姿からは優雅さが窺えた。
そんな女の子――僕が昼休みにぶつかってしまった春風さんは、部室にポツンと一人いた僕へと視線を向けてきた。
僕は混乱したまま硬直してしまっていたのだけど、こちらを黙って見つめていた春風さんの顔色がなぜか段々と悪くなる。
いったいどうしたのか、彼女の顔色に疑問を抱いた僕は半ば無意識に彼女の視線を追う。
――そして、おそらく彼女の顔色以上に僕の顔色は悪くなった。
なんせ、僕が開いているメモ帳では触手に侵されている長髪の女の子が描かれいていたのだから。
しかもどことなく春風さんに似ている気がする。
うん、イラストの子は巨乳でそこだけは春風さんと違うけど、顔や髪型とかは本当に似ているような気がするね。
ちなみに春風さんは巨乳とは真反対の位置にいるのだけど、そんな失礼な事を僕は言ったりしない。
だからこのやばい状況をどうにかしてくれませんか、神様……!
明らかに春風さんが僕の持つメモ帳の開かれたページを凝視していたため、この後に起きるであろう悲劇を想像した僕は心の中で神様に助けを求めるのだった。
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