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クール美少女の秘密な趣味を褒めたらめちゃくちゃなつかれた件  作者: ネコクロ
第1章「クール美少女はただのかわいい女の子」
19/62

第19話「ずっとこんな日々が続きますように」

「楽しい……? 本当……?」


 春風さんは恐る恐るといった感じで僕の顔を見つめてくる。

 忙しなく髪を指で弄ったりしていて、何か緊張しているようにも見えた。


「うん、本当だよ」

「うざいって思ってないの……?」

「うざい?」


 どうしてそんなことを心配するのだろう?

 春風さんと一緒にいてうざいなんて思うはずがないのに。

 もしかして、僕がそんな誤解を生むような態度をとっていたのかな?

 決して彼女を邪険に扱ったことはないはずだけど、当の本人がどう受け止めるはその人次第。

 僕が気付かないうちに誤解を生むようなことをしてしまっていたのかもしれない。


「うぅん、うざくないよ。僕が春風さんにそんなことを思うなんて絶対にありえないから」


 僕は誤解を消し去るために力強く断言する。


「…………」


 そのかいあってか、春風さんは無言で近寄ってきた。

 その目は不思議と嬉しそうに輝いているように見える。


 だけど、まだ距離があるところで椅子に腰を下ろした。

 まだ疑われているらしい。


「えっと、本当にうざいだなんて思ってないよ?」

「言葉ではそう言ってても、心の中だとわからない」


 確かにそうなのだけど、それを言い出したら誰とも仲良くできないじゃないか。

 何を考えているかなんて本人にしかわからないのだからね。


 ……まぁ、友達がまともにいない僕に言えたことではないのかもしれないのだけど。


 それにしても春風さんはいったいどうしたんだろう?

 昨日まではこんな様子は一切見せず、むしろ肩がくっつきそうなほどにくっついてくる子だったのに本当に不可解だ。


「僕がそんなふうに思ってるように見えるのかな?」

「…………」


 春風さんの考えがよくわからない僕が理由を知りたくて尋ねてみると、春風さんは椅子を持ってまた少しだけ近付いてきた。

 でも、やっぱり定位置にはこない。

 今は大体僕たちの間には2メートルくらいの距離が開いている。


 まぁだけど、近付いてきてくれたということは僕がそんなことを思ってないとわかってくれているようだ。

 それでもまだ距離があるのはどうしてだろう?


「他にも何かあるの?」

「笹川君優しいから、迷惑でも言えないんじゃないかなって……」


 うざいの後は最初に戻るのか。

 思ったよりも根が深いのかな?

 というよりも、もしかして誰かに何か言われたのだろうか?


「さっきも言ったけど全然迷惑じゃないよ。誰かに変なことを言われたの?」

「……昔、言われたことがある」


 昔?

 ということは僕とのことじゃないのかな?

 いったい何を言われたことがあるんだろう?


「何を言われたの?」

「ちょっと、くっつきすぎてうざいって……」


 春風さんは当時のことを思い返しているのか、くしゃっと顔を歪めた。

 こんなことを直接言われたのなら思い返しただけで辛いはずだ。

 無神経に聞いてしまったのがよくなかったな。


 でも、それは過去の話のはず。

 少なくとも昨日まで春風さんは全く気にした様子がなかったのに、どうして今更こんなふうになるんだろう?


「その時のことを僕は知らないからそれについては何も言えないけど、僕は春風さんがくっついてきて嫌だとは思わないよ。むしろ話ができて楽しいと思ってるからね」


 春風さんがこんなことを気にしだした理由は気になるけど、傷口に塩を塗るような真似はできずとりあえず自分の思いだけを伝えてみた。

 彼女が安心してくれたらいい、そう思って言った言葉だ。


 しかし、自分が言った言葉を脳内で反復してみると、自分がとんでもないことを言ったことに気が付く。

 完全に好意丸出しの言葉だったからだ。


「あっ、えっと今のは――」

「――やっぱり、笹川君は優しいね」

「えっ?」


 慌てて言い訳をしようとすると、春風さんが凄く優しい声を出した。

 見れば、声と同じくらい優しく――そして、とてもかわいい笑みを浮かべている。


 その笑顔を見た途端ドクンッと僕の心臓が跳ねた気がした。

 思わず見惚れてしまうほどだ。


「笹川君は本当に優しいと思う」


 春風さんは僕の様子に気が付いていないようで、嬉しそうな声を出して僕の隣へと椅子を持ってきた。

 そしていつも通り、少し肩がくっつきそうな距離に座る。

 先程までの不安は何処にいったのかと思うほどにニコニコの笑顔でご機嫌な様子だ。

 特に僕が言った言葉には気が付いていないようにも見える。


 よかった、それなら余計なことは言わないでおこう。

 触れなければこのまま気が付かずに終わってくれそうだ。


「優しいってわけじゃないよ。普通に思ったことだから」

「そっかぁ」


 春風さんは余程ご機嫌なのか、今はいつものクールな雰囲気がない。

 普通の女の子みたいに表情豊かに笑みを浮かべている。

 多分この春風さんを見ればみんな親しみやすい女の子だって印象を受けると思う。

 少なくとも僕は今そういう印象を受けた。


 そんな僕の視線には気付いた様子がない春風さんは、いつも通り鞄からペンタブレットを取り出している。

 今日もエロイラストを描くつもりなのだろう。

 女の子ってやっぱり切り替えが早いんだね。

 先程の雰囲気を全く引きずった様子がない。


 まぁ引きずられると気まずいし、折角来てくれてるんだから楽しい時間を過ごしたいよね。

 だから僕は余計なことを言わずに小説サイトの自分のページへとアクセスする。


 えっ、学習能力がないのかって?


 いや、うん……色々考えたんだけど、昨日もう見られてしまってる時点で手遅れなんだよね。

 だからもう割り切りました。

 春風さんあまり気にしてなかったしいいんじゃないかな。


 小説を読まれたことに関して若干やけになってる僕は気にせずに小説を書き続ける。

 今日はちょっと変わった一日だったけど、これからはまたいつも通りだろう。

 

 それから少しして春風さんがラノベの話題を振ってきたので、彼女の話を聞きながら僕も自分の意見を言ったりして楽しい時間を過ごせた。

 正直高校生活はラノベや漫画のような青春に溢れた物はなく、期待していたような学校生活は送れていないけど、そんな中でする彼女とのラノベや漫画、アニメの話題はとても楽しかった。

 この時間は僕にとって唯一の楽しみなんだろう。


 ずっとこんな日々が続いてくれますように――僕は、密かに心の中でそう願うのだった。

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