竹林院と大助
真田大助は、真田幸村及び真田十勇士と供に出陣していた。
母は、幸村の正室・竹林院。
竹林院は大谷吉継の娘である。
つまり、大助は吉継の孫にあたる。
竹林院は、大助をとてもかわいがっていた。
大助も、優しい竹林院が大好きだった。
大阪城に向かうことを、幸村が竹林院へ告げた時のこと。
「なぜです?」
竹林院はしぼりだすように答えた。
「わしの兄は徳川にいる。おそらくまわりの武将はわしの忠義を疑うだろう。だから、嫡男である大助を連れて行き、忠義を示す必要がある。」
「そのようなこと、知ったことではありませぬ。行くというなら、1人でお行きください。」
「ならぬ。」
「なりませぬ。」
「ならぬ。」
「なりませぬ!」
竹林院は手で顔をおさえて泣き出した。
竹林院の父、吉継は14年前に自害した。
父を亡くした竹林院にとって、大助は何が何でも死なせたくなかったのだ。
「母上、泣かないでください。私は父上のために、大阪へ向かいます。」
竹林院はようやく顔をあげた。
「分かりました。それほど言うのであれば、行きなさい。もし、自害するようなことがあれば、この数珠を首にかけなさい。この数珠をかけていれば、いずれ極楽で会えるでしょう。」
「はい。」
大助は数珠をしっかり受け取った。