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7話

「出ろ」


 扉の先に居たのは、記憶の上では先程見た男とはまた別の男だった。あちらは被り物をしていたために顔はよくわからなかったが、声が違う。


 言う事に従わない場合どうされるのか。これで僕が年相応の子供であれば逃げ回ったり泣き叫んだのかもしれないが、恐らくは無駄だろう。


 あの白い少女だけが特別である可能性と、あのような魔法がありふれている可能性。この世界の常識なら前者の筈だが、どうしてそうだと言い切れる。


「着いてこい」


 大人しく言われた通りに部屋を出ると、男はそう言って歩いていく。歩幅の差の所為で小走りで追いかける必要があった。


 どのような建物なのかは分からないが、かなりの大きさなのだろう。しばらく歩いた先で扉が開くと、広い、部屋というよりも大広間とかホールとか、100メートル単位の空間に出た。


 何をすればよいのか、何も言われないままに周囲を見渡していると、後ろで扉が閉まる。見れば、男は外に出たようだった。


 1人残されて、どうしろとも言われずに目的が分からないまま思考を続ける。少なくとも、僕の能力について理解はしていないのだろう。


 もし僕の魔法が理解されているのであれば、誰もいない状況であれば逃げ出すには好都合でしかない。そんな状況に放り出すのか?


 であれば可能性としては、理解していないか、理解するために観察しているか、だ。少なくとも僕が居た家を襲撃した連中が。


 つまり、出来るだけ手札は晒さない方が、まだ生き残る可能性が大きいのではないだろうか。あの白い少女が出てくれば全て無効とはいえ、わざわざ何もかも晒すのは馬鹿だろう。


 実際に、魔法を利用して探査してみれば見えている範囲の入ってきた扉の他に反対側にある扉を除いても、天井にいくつかの穴、壁の少し高い位置に穴。


 逃げ出そうと魔法を使えば、能力が割れて対策もされる。あるいはあの白い少女ないし類する存在に止められる。まあそういうことなんだろう。


 それだけであれば、最初に居た部屋で済むのではないか? その疑問の答えは、上からどさりと降ってきた存在の所為で嫌という程理解させられた。


「ギァァァ!」


 かなりの高さの筈で、もし寝ている間に僕がそうされれば死んでいる程度の衝撃を受けて、ソレは痛がって叫ぶ程度で済んでいる。


 広さこそあれど、状況的には締め切られた扉の所為で普通なら退路は無し。そんな密閉空間に、一緒に放り込まれた存在。


「ギィ? ギヒャ!」


 小鬼、あるいはゴブリンとでも呼べばよいのだろうか。人間とは違う存在。魔物と呼ばれ、種族そのものが異なる化け物。


 既に痛みも、放り込まれた事への怒りも忘れて目の前の小さな獲物の事に頭がいっぱいになっているソレは、控えめに言っても死の脅威であった。

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