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地獄での出会い

地獄のような光景だった。

村は炎に包まれ、逃げ惑う人々の悲鳴が聞こえる。

剣や鎧で武装した男たちが村を蹂躙していた。

あるものは立ち向かい、またあるものは森に逃げ込もうとしたが無駄だった。

襲い尽くした後、目的のものが手に入らなかったのだろう。

苛立ちを隠せない男たちは、村から金品や食料を奪うと、馬に乗って去っていった。


全てを奪われ炎に包まれた村の中で、俺は生き残っていた。

斬られた背中から血が流れていくのがわかる、火傷も負ったのか全身が痛い。

家族で楽しく夕飯を食べていた時に、急に奴らが現れた。

明日のことをみんなで楽しく話していたのに、奴らにみんな殺されてしまった。

なんとか生きのびた自分も、このまま死ぬんだろうな。

そんなことを思っている死にかけの彼の前に、少女は突然現れた。


まるで夢のような光景だった。

燃えさかる炎をものともせず、女の子が歩いている。

今から舞踏会にでも行くような、真っ赤なドレスに身を包んだ少女。

炎のように赤い、腰まである長い髪をリボンで二つに結んでいた。

傷ついた俺を見下ろす少女。

年のころは10代前半だろうか幼く見えるが人形のように整った顔立ち、俺を見下ろすその瞳もまた炎のように真っ赤だった。

俺がまだ生きていることを確認した少女は、その顔に似合わない不敵な笑みを浮かべた。


「少年よ、僕の守護者になる気はないか?」


突然現れたこの少女は何を言ってるんだろう?

死にかけの俺に何を求めているんだ?

俺の頭は疑問でいっぱいだが、少女は構わず続ける。


「急にこんなことを言われても理解が追いつかないだろうから質問の仕方を変えようか。君は生きたいかい?なぜ村が、家族が、そして自分自身がこんな目にあって死にかけているのか知りたくはないかい?」


俺は力を振り絞り小さく頷いた。

当然だ。訳も分からず死ぬのは嫌だ。

彼の答えに満足したのか、少女は先程とは違う可愛らしい笑顔を見せた。


「よろしい。ではその証として僕から死にかけの君に、素敵なプレゼントを上げよう。」


少女はナイフを取り出し手のひらを切ると、器用に血溜まりを作っていく。

少女は屈むと彼の口元に手を近づけ、耳元で優しく囁いた。


「僕の血を飲め。それで君は僕の守護者だ」


俺の頭には相変わらず疑問しか無かった。

でも何もしなければ、確実に死んでしまうだろう。

今は理解できなくても良い、この不思議な少女の言葉を信じるしかない。

俺は覚悟を決め、その血溜まりを飲み干す。

俺が飲み終えたのを確認すると、少女は立ち上がり指を鳴らした。

すると少女の傷口から一瞬炎が上り、それが消えるのと同時に傷も綺麗に消えてしまった。

俺を見下ろし、もう1度不敵な笑みを浮かべる少女。


「そうそう、君に言い忘れたことがある。守護者になるとき、肉体が急激に変化するんだが・・・」


突如、俺の体を激痛が襲った。

体の中を、炎が走って焼いているような痛みだった。

飛びそうになる意識を留め、必死に耐えた。

そんな俺を眺めながら、少女は続ける。


「始まったか。かなり痛いようなので、頑張って耐えてくれ。まぁ死ぬことはないし、恐らく朝には収まるだろう、安心したまえ」


けらけらと楽しそうに笑う少女。

激痛に思考を奪われていく中、俺には少女が悪魔に見えた。

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