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学園での一日3

「ごきげんようルネス」

「ごきげんようヴァイオレット」

 本日の学園での一日も終わる、残念なのは麗しのルネスが私の視界からいなくなる事だね。


 ん?ルネスが迎えの馬車に乗り込むね、誰もいないならローアングルでお見送りしたいんだけどねー。


 と、行っちゃったか、私の帰りは徒歩、いろいろ寄り道したいし孤児院も覗かなきゃだし、制服は着替えて簡素なワンピースだから汚しても大丈夫と……お姉様にバレたらまたもーもー言われちゃいそうだよ。


 今日はこの前オープンしたらしい南の国の珈琲を出すお店を覗いて見ようかな、市場のおばちゃんらによると苦いらしいけどね、でも新しい物って気になっちゃう。

 さて、トテトテと歩いていると何か尾行されてる様な足音が気になる、おかしいな一般市民的な格好だから狙われる事は無いと思うんだけどなあ……そういうのはだいたい終わったはずだし。


 仕方無いから人気の無いとこで襲っちゃおうかな、婦女子を尾行するなんて悪いヤツに決まってるよ。


 行き止まりの路地へ入り振り返って待ち構える、さあこい不審者め、ふんすふんす…………ん?


 待ち構える私を見て身を隠したのは一人、何故いるかわからないリュシオネル殿下だった、……いきなり攻撃しなくてよかったよ、それにしても隠れるの下手だね。


 それより何しに来たのかな?やっぱり復讐?私を拐って純潔を奪うつもりかな?しかし、私は婚約者はいないからそんなの怖く無いんだからね、くそう、優しくしなかったら仕返ししてやる。


 …………まあ、まだ隠れてるつもりらしいから挨拶してみよう、襲われるよりは誘われたいもんね。


「ごきげんようリュシオネル様、お散歩ですか?」

「む……ああ」

「これから珈琲という飲み物を飲みに行くのですがよろしければご一緒しませんか?」

「いいのか?」

「もちろん、さあこちらです」

 ふふん、勢いに任せて暗がりは避けるよ、……私が誘導したんだけど、まあ、さすがに王子殿下に何かする勇気は私には無いよ、そんな事したらお姉様やパパまで連座で処刑されちゃうもんね。


 あとは私が黙って天井の染みを数えるお仕事を終えたらいいだけだ、これも運命かな、最悪冒険者になりますって家を出る事も視野に入れよう、おっと、ここだったかな。


「こちらかしら?」

「知らんのか?」

「はい、初めて参りますので」

「そうか…………」

 普通に付いてくるね、そんな怪しい場所行けるかって怒られるかと思ったよ。


「いらっしゃいませ」

「どうも、こちらが珈琲を出すお店でしょうか?」

「はい、何名様でしょうか?」

「二人で」

「ご案内します」

 黒髪をポニーテールに纏めた可愛らしい店員の案内で私と王子殿下は対面の二人席に座る、メニューと水が置かれ沈黙が流れた。


 まるでどんよりした今日の空の様な沈黙、非常に気まずいね、これから私が傷物にされると思うと尚更だよ。


「珈琲とはなんだ?」

 ポツリと、王子殿下から質問が飛んでくる、いや、初めて行くって言ったじゃん。


「香ばしくて苦い南の国の飲み物だそうです、冷たいものと温かいものがある様ですね」

 魔法で冷やしてるのかな?飲み物一杯にわざわざ大変だね、おや、お菓子もあるよ何食べよっかな、気分的に最後の晩餐だから贅沢なヤツをいきたいね。


「お決まりですか?リュシオネル様」

「ああ、温かい物を頼みたい」

「畏まりました、もし、よろしいですか?」

 私は通り掛かった先ほどの店員さんに声を掛ける。


「はーい」

 打てば響く様な可愛らしい返事をしてパタパタと騒がしくオーダーを取りに来た。


「珈琲を二つ、温かい物と冷たい物を一つづつと、このバナナクレープを二つ」

 ついでに王子殿下にも頼んじゃえ、いらないって言われたら私が食べちゃおう。


「はい、承りました」

 店員さんはまたパタパタと注文を伝えに去って行った。


 さて、私はお先真っ暗な訳だから王子殿下に無礼な事聞いちゃおう、気になるし。


「リュシオネル様」

「なんだ」

「何故私などを付け回しておりましたか?先のご無礼なら呼びつけて謝罪させればよろしいと思うのですが?」

 そのまま乱暴するにしてもベッドがあるとこがいいんだけど、野外はさすがに恥ずかしい……いや、もしかしたら野外は野外のよさが、いやいやいや、まだ早いまだ早い、最初はノーマルでお願いします。


「そんなわけあるか」

「では私の身体が目的で?」

 あ、やべ、本音が漏れたよ、何やってんの私、王子殿下怒って赤くなったじゃん、うひい打ち首はお許しを。


「ち、違っ、違う、お前は私を何だと思っているのだ」

「男は狼と思っておりましたので、リュシオネル様の狼は物語に語られる魔王のごときかと」

 おい、なんで王子殿下が否定してるのに私は更に墓穴を掘るんですかね、無礼者って斬られたらどうすんのよ。


「お待たせしましたー」

 混乱を極める私の前に珈琲とクレープが届いた、うわーホント最後晩餐になりそうだよ。


「い、いただきませんか?」

「あ、ああ……」

 さあ、現実逃避しよう、珈琲初体験だね。


「に、苦いです」

「ふはは、滑稽な顔をする」

「見ないでください」

 もう、人の変顔見て何が楽しいんだか、いや、変顔ならするから私の無礼許してくんないかな?


「毒では無さそうか、どれ……ふむ、香ばしい」

 王子殿下は湯気立つ珈琲をズズッとすすり眉尻を下げる、お気に召した様だね。


 てか今更なんだけど王子殿下に毒味無しで飲み食いさせていいの?…………ああ、私が毒味か、なるほどなるほど、まあいいか。


 付いてたミルクを珈琲にダバーして匙でクルクル、これで一口、うんうん、まあいけるかな、氷も入っててホントに冷たいのがこれからの時期に嬉しいよね。


 さて、クレープとやらをいただきますか、記事に包まれた白い生クリームにバナナという果実、チョコレートも刻んで入ってるね、どれどれ一口。


「んー、リュシオネル様美味しいですよ」

「そうか、……甘いな」

「可愛らしい顔になっていますよ、お嫌いでした?」

「む…………やる」

「ふふふ、後で包んで貰いましょう」

 そして私が牢屋で食べるのかな?王子殿下の事笑っちゃったし。



 クレープも包んでもらいお会計、もちろん私が払うよ、払うから無罪放免にしてもらえないかな?


「馳走になったな、また礼をする」

「はて?」

 珈琲店から離れ王子殿下にお礼を言われて拍子抜けする。


「どうした?」

「これからリュシオネル様に拐われて乱暴されるのでは無いのですか?」

「……どうしてそうなる」

 おや?なんか私の考えと違う感じになってるんですけど……。


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