雨の一日3
クッキーにしようかブリオッシュにしようか、はたまたスコーンにリンゴのジャムをたっぷり付けようか。
「悩みますね」
「ヴァイオレットは甘味を好むのか?」
「甘味を好まない女子はおりませんよ、リュシオネル様はサンドイッチで?甘い物はお嫌いでしたよね」
「ああ……」
ハムとチーズが挟んでるのと、お、ローストビーフ、お高そうだね、オムレツサンドもある。
「悩みが増えましたね」
「すべての種類を食べたらいいだろう?」
「そうしたら違う悩みに悩まされるのですよ」
太っちゃうからね、男の人にはわかんないよ。
「そういうものか」
「そういうものです」
「あ、あのヴァイオレットとリュシオネル様仲がよろしいのですね」
ん?そういや一回珈琲飲んだだけだったよね、あんまり砕けた雰囲気出さない方がいいかな?
「ええ、先日一度席を共にする機会がありまして」
「ああ、珈琲とやらを馳走になった」
「へぇー、あ、失礼しました」
……ん?なんかルネスのスイッチが入った気がする、これはあんまりよくないような。
「る、ルネス?」
「ヴァイオレットははしたないでしょうけど良き友人ですので失礼がありましても何とぞお目こぼしをお願いします」
「ああ、愉快な一面ならもう見せられたからな」
「何かあったのですか?ヴァイオレットはなかなか話してくれませんから教えていただけないでしょうか?」
ちょっとルネス、いきなり豹変し過ぎだよ、今までビクビクしてたのは何よ、あとりゅーくんは何をバラすつもりなの?
「実技での事を私が恨んでいると勘違いし家族は見逃せと言ってきた、正直意味がわからん」
「リュシオネル様」
「ヴァイオレット、さすがにそれはご迷惑だったのでは?」
「もう、リュシオネル様は意地が悪い、ルネスも忘れてください」
やめろー、私の恥ずかしい黒歴史を出すなー、りゅーくんいい加減にしないと下着見たの広めるよ。
「でもお二人はどうしてご一緒に珈琲を飲まれたのです?ヴァイオレットはまだしもリュシオネル様はお一人で出歩くなど……」
りゅーくん普通に私をストーキングしてたけどね、てか護衛とかいないの?あと偉いんだから腰巾着に付きまとわれたりしないの?
「私はそれほど束縛されてはいないからな」
「それでもお一人で街へ行かれるのは物騒ではありませんか?」
「ヴァイオレットにだけは言われたく無いな」
「お立場を考えください」
「お前もな」
くそう、言い負けそうだよ、てかルネスは何黙ってニヤニヤしてるのよ。
「私は姉が家を継ぎますから自由なのです」
「私も兄が王座を継ぐだろうから自由だ」
いや、それは無いからね、最悪他国との友好とかで婿に送られるんじゃない?
「お二人は仲が好くてしかも似ておられますね」
「る、ルネス、もう」
「む……」
なんだろう、ルネスから引っ付け的なオーラを感じる、ルネス、だだ漏れだからね。
確かにりゅーくんは私の心の弟だけどさあ、ちょっとは身分差ってヤツを考えませんかね、妾とかが精々だよ。
「それよりヴァイオレット、どうやってリュシオネル様と二人になったのです?」
「それは偶然」
「なるほど二人きりだったんですね」
「もう、ルネスは、知りません」
ぬうん、引っ掛かったよ、ルネスいつの間にそんな言葉のテクニックを、もう私喋んないからね。
「ヴァイオレットもう少し考えて話さないとダメですよ」
「…………」
喋んないよ、サンドイッチ食べてやる…………ローストビーフサンドうまー。
「もう、ヴァイオレットは臍を曲げて」
ふんだ、ルネスのそのたわわんなヤツを持ち上げてプルプルさせてくれるまで許さないんだから。
「お楽しみですか?」
私がむしゃーとサンドイッチを口に詰めてるとロベリー先生が様子を見に来た。
「は、はい」
「ヴァイオレット様、先ほどは厳しくお教えしましたのでそのようにお怒りになりませんように、ヴァイオレット様の柔らかい笑みは皆に明るさをもたらすのですから、そうは思いませんか?リュシオネル様」
「む…………あ、ああ……」
やめろー、ロベリー先生は別枠から攻めるなー、こうなったら食べるしか、うんうんブリオッシュの危険な糖分と脂肪分サイコー。
「結局ヴァイオレットは全種食べるんだな」
「そういう時もあるのです」
りゅーくんのせいなんだからね、なに平然とサンドイッチ食べてるのよ。
「ところでロベリー先生授業は?」
「あとは優秀な生徒の自主性が試されるのですよ」
ふうん、ロベリー先生のこういう変わってるとこ好きだな、でもサボり放題じゃないの?
「ロベリー先生は優しいのですね」
ルネスが言っちゃったよ、優しいんなら私にこんな仕打ちはしないと思うんだけど。
「ふふふ、ルネス様は真っ直ぐ素直でいらっしゃいます、そして好奇の心も素直で……」
「そ、そんな事……」
「ヴァイオレット様はこの授業をどう思いますか?」
とりあえず私に全部投げるのやめて欲しいです。
「そうですね……自主性を見ながらロベリー先生が生徒を見定めておられるかと、きっと以後の授業に反映させたりされるのでしょう」
「そこまでヴァイオレット様が理解されているのでしたら教職を代わっていただきたいくらいですね」
「ロベリー先生の一割もできませんよ」
ごめんこうむるよ、ロベリー先生何言うの?お茶目さんなの?
「ふむ、ヴァイオレットはどうしてそう聡明な考えができるんだ?」
「え?あの……」
「私も拝聴させていただきたくございます」
「わ、私もヴァイオレットは何処か大人びてると思ってました」
な、なんで私質問責めなの?ルネスは私の事はしたないって思ってたんでしょ、それでいいじゃん。
「い、いろいろな人と接する機会がありますからでしょうか?」
孤児院の子供とかシスターにそこらのお店の人にギルドの冒険者さん、いろんな人がいるからね。
「ヴァイオレット様は素晴らしい出会いに恵まれておられるのですね」
「ふむ……」
「いつも遊び歩いているからでは…………」
ルネス、一言多いよ……。
その流れで質問を続けられそうな気配だったけど終業の鐘がカンカン鳴って助かった、ふう、散々な時間だった気がする。




