ボクと山脈の【魔女】2
【獣脚】に促されるままサンダーは空いている椅子に座った。目の前には高価そうなティーカップに入った紅茶が香り高い湯気を立てている。円卓の上に三段のケーキスタンドまで置いてあり、その上にスコーンなどの美味しそうな焼き菓子が乗せられている。食器棚も何もないこの空間から、一体これらをどうやって揃えたのか全く見当がつかない。
拍子抜けするほどに平和な時間と空間がそこにある。
「時間がかかるからお茶して待ってろ、ってことだね」
独り言のように【獣脚】は言うと、今度はサンダーの顔を見て「どうぞ」と勧めた。さも当然のように目の前の食事を勧める【獣脚】にサンダーは警戒を強めた。
「毒でも入れているのか?」
「まさか」
【獣脚】は目を丸くした。
「テラが自ら招き入れた客人を排除する必要はないって何度も言ってるじゃん」
今度はむくれたように口を尖らせた。
しかし気を取り直したのか、曇っていた表情はすぐに晴れた。
「名前がわかんないのもアレだし、改めて自己紹介といきますか。俺はアイト。こっちの人はミノンさん。あんたは何ていうの、怪物野郎さん?」
「サンダーソニア」
どうやら【獣脚】は『アイト』、【有翼】は『ミノン』という名前ということがわかった。サンダーもそれに続いて名乗った。
それにしてもよく喋る男だ、とサンダーはアイトを見ながら思った。
「サンダーは何か聞きたいことはある?」
アイトの言葉を聞き、サンダーはすっと目を細めた。目が据わっている。
「あの【魔女】は手が早いのか?」
「……ぶはっ!」
アイトは盛大に噴き出し、ケタケタ笑い始めた。対してミノンは顔色ひとつ変えない。
「そんな深刻な顔して質問がそれ? あんた面白いな!」
「俺にとっては笑い事じゃないんだ」
「知らないよ、テラの手の早さなんて。でも繁殖する必要なんかないんだから性欲があるとは思わないけど」
安心はできないがそう思うしかない。サンダーは次の質問をした。
「あの【魔女】は何者なんだ? 正体は何だ?」
「テラの正体は【魔女】だよ。それ以上でもそれ以下でもなく【魔女】としか言いようがない。人間だった俺らとは違う、生粋の【魔女】さ」
「『人間だった』?」
アイトの何気ない一言をサンダーは聞き逃せなかった。
「お前達は人間だったのか? その姿は呪いをかけられたからなのか?」
獣の脚、鳥の翼、彼らを人外たらしめるものはやはり「【魔女】の呪い」なのか。
しかしアイトはやや遠い目をして、彼らしからぬ落ち着いた口調で話し始めた。
「呪いっちゃ呪いなのかもしれないけど、俺らは死にかけたところをテラに拾われて、欠損した部分を補ってもらった。だから呪いだなんて思ってない」
戦いの最中もアイトは何度も「恩人」という言葉を口にしていたことを思い出した。それはそこに由来していたのか、とサンダーは考えた。
「俺はさ、世界が今よりも平和じゃないときに国家同士の戦争に駆り出されて戦場に立ってた訳よ。そしたら念導式地雷を踏んじゃって下半身粉々になっちゃって、もう死ぬだろうってところでテラが現れてさ。気付いたらここにいるし脚はこんなんになってるし。ミノンさんは無実の罪で裁かれて両腕をもがれたところをテラに拾われたんだよね?」
「……あの【魔女】は何でそんなことを?」
「別にテラは優しいから助けてくれた訳じゃない。ただの気まぐれ。でもね、その気まぐれが俺らにとって命綱だっただけの話」
アイトは自分のカップに紅茶を注ぎ足している。
「テラが時々俺らを住処に招いて、こうやって俺らが生前好きだったお菓子とお茶を用意して卓を囲むのもまたテラの気まぐれに過ぎない」
ずいぶんサービス精神旺盛な気まぐれだとサンダーは思った。
だがあの人懐こい顔が印象深いアイトが淡々とした口調と表情で語っているため、嘘でも照れ隠しでもないのだろうと否応なしに思わされた。
与えられるのは温情ではなく、本当に【魔女】の気まぐれでしかないのだろう。
「それでも……【魔女】はずいぶん人が好きみたいだな」
サンダーの胸の内に芽生えた温かな疑念を敢えて使い魔にぶつけてみた。その瞬間、アイトに笑顔が戻った。
「やっぱりそう思う? テラはさ、結構人間が好きだと思うよ」
「アイトはどうしてそう思うんだ?」
「テラは俺らを拾ったときに俺らのことを『哀れだ』とは言ったけど、人間のことを『愚かだ』って言ったことは一度もない。俺らがこんな姿になったのは確かに人の愚かしさのせいだけど、ただそれだけの出来事でテラは人間の本質を決めつけなかった」
アイトはまるで自分の身内が褒められたような喜びようだった。
「テラはむしろ同族の【魔女】を嫌っているよ。何の畏怖もせず、己のやりたいことのために自分を利用するような小者だって」
「人間だって同じような者がいるだろう? 己のために他人を利用する奴なんか」
サンダーの言葉を聞くと、アイトは笑った。
「違う違う。『他人を』じゃなくて『テラを』利用するってこと。テラは他の【魔女】が『山脈の魔女』を利用するのが許せないだけ。これ以上ないくらいテラが一番自分勝手だよ」
恩人を扱き下ろしているかのように見えるが、その姿こそが【魔女】への絶対的な信頼を表しているように見えた。
***
ガチャッと何かが外れるような音が窪みの奥から聞こえた。サンダーはすかさず立ち上がり、その音のした方向に体を向けた。その方向、奥の壁の右端の開け放した扉の前に【魔女】が立っている。
テラはゆっくりと歩き扉から離れていく。サンダーは席を離れ、扉へと駆け出す。テラと擦れ違う際に、彼がサンダーに囁きかけた。
「あの娘は非常に面白いな」
その一言に背筋が、全身が凍った。立ち止まり、見開いた目で【魔女】を凝視した。
【魔女】はひとつ鼻で笑うと、立ち尽くすサンダーを横目で見ながら言葉を続けた。
「あの娘には底知れぬ『闇』の力を感じる」
──こいつは一体、ルムに何をした!
殴りかかりたい衝動を抑え、今はルムに会う方が先だと自分に言い聞かせる。開きっ放しの扉の向こうへ頭から飛び込むように駆け込んだ。
薄暗い部屋の中にはベッドと見紛うようなクッションがあった。ルムはそこに仰向けで埋もれ、ぐったりとしていた。着衣に乱れこそないが、果てたような彼女の姿を見てサンダーは血の気が一気に引いた。
「ルム!」
思わず大声で呼びかけた。するとルムの閉じている瞼がわずかに動き、やがて目を開けた。次第に彼女の目に涙が浮かんでくる。彼女の背と腰に腕を回して抱き起こすと、ルム自らサンダーの首に腕を回した。
「……サンダー」
消え入りそうな声で彼の名前を呼び、きつく抱きついた。自分の首もとで、我慢しきれずすすり泣く声が聞こえる。
思わず強く抱き締める。あの強がりのルムがここまで弱って泣きつくなんて余程のことがあったとしか思えない。
何があったのか、知りたいし知りたくない。
どうして彼女を手放してしまったのか。
こんなことになるくらいなら、相手が【魔女】とは言え退くべきではなかった──
サンダーはまたルムの盾になれなかったことを酷く悔いた。
すすり泣く声も途切れ途切れとなり、やがて止んだ。自分の腕の中で小さな生き物がもぞもぞと動く。ルムは少しだけ顔を上げた。ようやく見えた顔には疲れが浮かんでいる。
「もう……大丈夫です」
「もう少しこのままだ」
サンダーはルムを抱き締め、自分の体にもたれ掛からせた。
***
部屋から出てくると、テラが椅子に座り紅茶を啜っていた。自分のやったことを何とも思わずしれっとしている姿にサンダーの頭に血が上る。先ほど使い魔から聞いた話でわずかに持った好感も何もかも憎さに塗り替えられた。
サンダーはルムの肩に手を回したまま一歩踏み出し、念じる。自分の体を小さな風が包む。
「サンダー! 止めて下さい!」
ルムがサンダーの腰にしがみつき叫んだ。怪物化しテラに一撃加えようとしていることをルムには見抜かれていた。彼女はサンダーの腰に腕を回したまま首を横に小さく振っている。
「ルム……」
「その子は賢いね。いくら怪物といえどテラに刃向かったら消されるよ? 止めてくれて良かったよ」
サンダーは無言のまま【魔女】を睨みつける。テラはカップから口を離しサンダーの方に目だけ向けた。
「その娘が呪いを受けた理由が何となくわかった」
「え?」
テラの思いがけない言葉に、ルムが感嘆の声を上げる。テラはもう一口紅茶を啜った。
「娘の中には強大な『闇』の力が秘められている。呪いをかけた【魔女】はおそらく姿形、いや細胞レベルを組み換えることでその力が顕現することを抑えようとしたのだろう」
サンダーは自分に寄り添うルムの顔を見下ろした。彼女の視線はテラに釘付けで、目を見開いて言葉を失っている。何か言いたげに開きかけた唇が小刻みに震えている。
「意味が……わからないんだが」
サンダーはそこまで言ったが、二の句が継げない。突拍子もない話に頭がついていかない。自分の愛しい人が「強大な『闇』の力」を持っている。それが何を示しているのかも全く考えられない。
「闇の力」があるから姿を変えられた?
それをしなくてはならないほどルムの「闇の力」は恐ろしいものなのか?
だとすれば彼女にかかった呪いは「正義」ゆえとなる。
そんなもの認められない。
ルムに辛い思いをさせ、泣かせ、厄介事を引き起こす呪いが「正義」だなんてあってはならない。
テラはやや首を傾げているように見えた。
「その片鱗は見えていなかったのか? お前達の言うところの『念』にその影響が色濃く出ているはずだが」
「いや、知らない……」
ルムが『念導銃』を新調するときに『念』の強さを測定した。確かにそのとき暴発のごとき高威力の弾が発射され、ルムは『念』の潜在能力の高さを見せつけた。
しかしそれが取り立てて特別なことではないと思っていたし、それが「闇の力」を証明するものとは今でも思えない。
「何ですか……それ。ボクが悪いって言うんですか? ボクには呪いをかけられる理由があるって言うんですか? ボクは呪いをかけられて当然って言うんですか? ボクは元の姿に戻らない方が良いんですか!」
「ルム……」
ルムは喉が潰れんばかりに声を振り絞って叫んだ。ルムの身に降りかかる『真実らしきもの』という災難は、華奢な彼女の心身に容赦なく降り注ぎ、叩きのめす。
この姿になってから碌なことが起きていない、というのは昨晩の彼女の弁だ。
男に襲われること、女に妬まれること。
だがその集大成はこれか、とサンダーは思う。
彼女が壊れないようにとサンダーが抱き締める。
「お前をその姿に変えた理由はそれをした【魔女】のみが知っている。戻るのが良いのか悪いのか、そいつに聞いて考えろ。そして悪いと言われようとお前が元に戻るのを望むのなら、そいつの目論見など気にかける必要があるのか?」
「確かに奴の言う通りだ、ルム。まずは呪いをかけた【魔女】を捜し、『闇の力』とやらをどうにかする方法から考えよう。元の姿に戻るのを諦めないでくれ」
ルムの震える体を強く抱き締め、サンダーは彼女の耳元で囁く。その囁きは祈りにも近かった。たった一人の愛する人が救われるようにと。
たとえ彼女の「闇の力」が世界を呑み込むだけの脅威を秘めていようと、自分は彼女の盾でいる。そう固く決意した。
ルムは声を押し殺しながら泣いている。
しかしサンダーの言葉を受け入れるように何度も何度も彼の腕の中で頷いた。
***
「結局のところ、呪いを解くには【魔女】と接触する以外ないんだな。会ってどうするかは別にしても」
サンダーは溜息混じりに呟いた。
その傍らで目を真っ赤に腫らしたルムが深く息を吸っては吐く。呼吸の乱れを整えるように、混乱した心も整えている。サンダーはルムの肩に、ルムはサンダーの脇腹に手を添え、お互いに寄り添うように立ちテラの方を見ていた。
「呪いを解きたければ、呪いをかけた【魔女】を滅するしかなかろう」
テラは物騒なことをさらりと口にする。ルムもサンダーも「【魔女】とはこういうもの」と、テラを見てよくよく学んだ。【魔女】とはこんなにも自分勝手なものだと。そしておそらく自分達は、【魔女】の自分勝手に振り回されたのだと。
「【魔女】など所詮限りのある命を持つ生物だ。この世界のどこかに紛れて生きている。そいつらを見つけ出すことは難しいことではない」
「そんな藁山の中から針を探すような話……」
ルムは掠れた声ながらも呆れたように呟いた。
「世の中お前達のように【魔女】の『呪い』を受けた人間が他にもいるだろう。そいつらから聞き出せる情報もあるだろう」
「確かにいたな……あのおさげとか。会いに行くか?」
「嫌ですよ!」
すかさずルムは叫んだ。
だが彼女は甘えるようにサンダーの体にもたれ掛かりながら、彼の顔を見上げた。
ルムと目が合ったサンダーは彼女に微笑みかける。
「お前とは長い付き合いになりそうだな」
それを聞いたルムは困ったような表情をしていたが、その中にやや悦びも含まれていたように感じた。それは彼女と一緒にいたいサンダーの希望的観測かもしれないが。
***
洞窟を抜け、四日ぶりに「最果ての町」に戻ってきた。
「キー」
「キー」
「待って下さい。もう少ししたらフリッツさんに会わせてあげますから」
ルムは興奮している小さなゴブリン達を宥めた。やはり彼らのことは放っておけなかった。一度は彼に会わせてあげたい、そう思い洞窟の外に連れ出してみた。
ピョンピョン飛び跳ねるゴブリンに囲まれて翻弄されるルムを横目に、サンダーは通信用念導器で連絡を入れる。
『ボス!』
サンダーが言葉を切り出すよりも先に、念導器からはゲンの迫力のある大声が響いた。
『マジでボス?』
『無事だったんスか!』
『よっしゃーっ!』
その向こうから仲間達の歓喜の声が次々と聞こえ、なかなか話し出せずサンダーは苦笑いした。
『うるせぇ! 今からボスと話をするんだよ、黙れ!』
ゲンに一喝され、ようやく静かになった。
「ゲン、戻ってきたぞ。迎えを頼む」
『了解!』
「そっちは相変わらずみたいだな」
少しだけ会話を交わし、念導器の通信を切った。サンダーはルムに向き直り声をかける。
「迎えが来るまで一時間くらいかかる。その間に彼らをフリッツのもとに届けよう」
二人が歩き始めるとその足下をゴブリン達がチョコチョコとまとわりつくようについてくる。
「……ボクの『闇の力』って、何なんでしょう」
ルムが呟いた。サンダーは少しだけ表情を引き締める。
「それを気にしているのか?」
「ボクが元の姿に戻ることで何か良くないことが起きるとすれば、戻るべきではないのかもしれません……」
「ルム、それを解決しよう。呪いではなく別の方法で『闇の力』を抑えることができるならそれがいい。お前が身を退いて【魔女】に譲る理由なんかない」
「……貴方はボクが怖くないんですか? 得体の知れない『力』を持っている奴を傍に置いておけますか?」
ルムの話し声はどんどん尻すぼみに小さくなっていく。
だがサンダーは心が揺らいでいなかった。隣を歩くルムを今でも愛しいと思う。それが答えだった。
「ルム、お前は俺に恋をさせるほどの男だ。今さら俺が『得体の知れない力』を理由にお前を諦めると思うか? 今晩は抱くぞ。飽きるまで一晩中だ」
「ひっ!」
ルムは完全に引いていた。その様子を見てサンダーが笑う。彼女は焦ったように次の話を持ち出す。
「結局、サンダーが呪いを受けた理由はひとつもわかりませんでしたね」
「ああ。だけど理由なんかどうでもいい。俺はただ取り戻したいだけなんだ。それが世界を壊すとしてもだ」
「潔いですね。……ボクもぐちぐち言ってても仕方ないですね。お互い頑張りましょう」
「改めてよろしくな」
「こちらこそ」
二人は固い握手を交わした。
次の瞬間、サンダーはそのままルムの手を引っ張り抱き寄せた。空いている左手でルムの腰を支え抱き上げると不意打ちで口付けた。
「ん~~!」
「キー!」
「キー!」
足下のゴブリン達は黄色い悲鳴を上げてみたり、手で目隠しをしてみたりと二人をからかっていた。
***
ゴブリンをフリッツのもとに送り届けた二人は町の外の荒野を眺めながら迎えを待っている。
「まあ驚いていましたよね」
「友人があんな姿になってしまって驚かない奴はいないだろうな。ただあっさりと受け入れ引き取ったことの方が俺は驚いたが」
フリッツは彼らを見て友人だと理解したようだ。おそらく通じ合うものがあったのだろう。彼らはゴブリンからフリッツの手伝いをするホブゴブリンとなることだろう。
「いつ出発しますか?」
「方針は決まっているから怪我が癒えて準備が整ったら出発しよう。計画を立ててなんて不可能だ」
サンダーは苦笑いした。どれだけ下調べをしようと『魔女の棲む山脈』で得た以上の情報なんてきっと出てこない。行き当たりばったりの旅になるだろうことはルムも覚悟している。
荒野の土埃の向こうからトラックが走ってくるのが見えた。ガタガタと車体を揺らしながらゆっくり走っている。
「何か……重そうですね」
「まさかと思うが」
そのまさかだった。
二人の目の前に停まったトラックの荷台から、大の男がわらわらと飛び降りてくる。
「全員で来たのか!」
いつも余裕な態度を崩さないサンダーも、まさか迎えだけに仲間全員が来るとは思っていなかったらしく素っ頓狂な声を上げた。
「当たり前です!」
「無事でよかったぁ!」
出会った日の晩餐の時のように、サンダーは仲間に囲まれて祝福を受けている。ということは……
「ルム! 大丈夫だった?」
一人置き去りにされているルムのところにやってくるのはいつもユーだった。そして今もルムのもとに真っ先にやってきたのはユーだった。
ユーはルムの姿が戻っていないことに気付いていないのか、気にしていないのか、彼女に飛びつき、珍しく彼の方からルムの首に腕を回し抱き締めた。ルムもユーの背に手を回し、あやすようにポンポン叩いた。
「ユー。大丈夫ですよ。見ての通り、【魔女】にも会って無事に戻りました」
ユーは顔を離しルムの顔を見た。目の前でユーが首を傾げている。
「……戻ってないね?」
「ええ。事情がありまして」
「あ? そう言えばルム、戻ってねーじゃねぇか」
次にルムの姿に気付いたのはトロで、やはり首を捻っている。ルムは何と説明していいか迷う。テラから聞いた話を彼らが受け入れられるのか考えた。
しかし黙っていても仕方ない。ルムはしどろもどろにも答え始めた。
「実は【魔女】には会ったんですが、ボク達に呪いをかけたのはそいつじゃない別の【魔女】だったんです。ですから呪いを解くには呪いをかけた【魔女】に接触するしかないんです」
サンダーの仲間達は顔を見合わせ、やはり首を傾げている。
「え? つまりどういうことだそれは?」
「だから俺達は本当の『呪いを解く旅』に出ようと思う」
サンダーの宣言は荒野の大地に響き渡った。




