危機一髪
(ふぅようやく一息つける。)巴はモグラが死んだことを念入りに確認したあとそのまま地面に大の字に倒れ込んだ。はあ、はあ、と肩で呼吸しながら巴はこれからのことを考える。(やばい・・・もう一歩も動けない。)もともと空腹だったところに先ほどの戦闘。限界が来てもおかしくはなかった。視線を横に向ければ頭を潰されたモグラの死体がある。(そういえば、迷宮で倒したモンスターを調理して食べる漫画があったっけ。)などと考える巴。一瞬ナイスアイデアかと思ったがよく考えると自分は調理器具はおろか火起こしの道具すら持っていない。(美味い不味いはこの際置いておくとして・・・生で食べるには衛生面がなあ・・・寄生虫とか感染病とか持ってるかもしれないし。)と断腸の思いでモグラ(食料)を諦めようとしたところ、
モグラの死体の下から『ドガンッッッッッッッッッ!!!!!』という先程より大きい爆音と共に土柱が上がった。
「うっおおおおおおおおおお!!」アクション映画の爆発シーンよろしく地面をごろごろと転がる巴。「ガッ、ガハッ、ゲホッ、今度は何なんだよ・・・」あまりの衝撃に立ち上がることもできず、首だけを音源に向ける巴。「おいおい神様ってのはどこまで性悪なんだよ。」そこで見た光景に巴は思わずいるかどうかも分からない存在に文句を言った。そこにはさっき巴と戦ったものと同種と思われるモグラがいた。ただしさっきのモグラが大型犬ほどのサイズだとすると、今目の前にいるのは大型車並みのでかさだ。そいつは2本足で立ち上がると地面に倒れた巴を睥睨している。そいつのすぐ近くでは自動車がすっぽり入るんじゃないかというぐらいの大穴がある。(さっきのモグラと同じで地中から勢い良く飛び出したのか・・・スケールはケタ違いだけど。)さっきから脳が逃げろと命令してるのに体は地面に倒れたままだ。(これは今度こそ詰んだな。)巴の脳裏に死の1文字がよぎる。巨大モグラが1歩また1歩とこちらに近づいてくる。だが巴は動けない。(ネット小説とかならここで主人公が覚醒したりするんだろうな。)死を目前にして益体もないことを考える巴。だが自分が憧れたヒーローならこんなピンチを切り抜けられるのだろう。どんなに絶望的な状況でも決して諦めず逆転の1手を繰り出し最後には勝利を掴む。それができるからこそヒーローと言われるのだ。(俺は何者にもなれなかったな。)そして巨大モグラが巴の目前まで近づくと肉はもちろん内蔵や骨もずたずたにできるであろう爪のついた腕を振り上げ
『ビギジィィィィ!!』という音とともに体長4メートルを越える巨大モグラが氷漬けになった。
・・・・・・・・・・・・・・・は?
(え、なんでいきなり凍ってんの?)疑問に答えるものはなくさらに巨大モグラに変化があった。
氷漬けになった巨大モグラの全身に無数の黒い直線が走ったと思ったら、『パァァァァンンン!!!』とその巨大モグラが粉々に砕け散った。(もう何が何だかわかんねーよ・・・)半ば考えることを放棄して目を閉じる巴。すると、「大丈夫か!!」と言う声とこちらに向かってくる足音が聞こえてきたが命が助かった安堵と限界まで重なった疲労により巴の意識は眠りに就いていった。
次回は新キャラ登場します。