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電車にのって

作者: 桜ノ宮潤雅

僕は毎日 この電車で家に帰ります


同じ時間 同じ車両 同じ乗車客


同じ新聞社のスポーツ新聞を買って


そして いつもの駅に降り立ちます


全くなんの変わりもない退屈な毎日を ずっと過ごしています


いつまでこの退屈な時間を続けるのでしょうか?




今夜も同じ時間帯のこの電車に乗って僕は家路につくのです


ローンばかりが残っているあの家に


毎日同じような夕飯と毎週決まったように見ているテレビ番組


そんななんの代わり映えもしない暮らしに今夜も一日の幕をひくのです




ただ・・・今夜はいささか眠気がひどい・・・・


いつもの新聞すら目をおとすことなく 僕は眠ってしまったのです・・・・・




どれくらいたったのでしょう


多分数分だったと思います


でも走り続ける電車の窓に映る景色はあまり見覚えがないように思えます


夢かな?とか 寝ぼけてるのかな?とか 思いながら次の駅の駅名を見ようとおもい僕はずっと窓の外を眺めていました




でも いっこうに駅に着く様子もありません


アナウンスすらありません


僕の 車両には 僕ひとり隣の車両にかろうじて 何人か人の姿は見えています


それでほっと一安心 だけど・・・ おかしい


駅の間隔が長すぎる


そんな僕の心配をよそに 電車は走り続けていくのです


なんとなく恐ろしくなった僕は 隣の車両に移ろうと 車両間のドアを開けようとするのですが、


開かない・・・・


やっぱり何かがおかしい 変だ 怖い・・・・・半ばパニック状態でドアのノブをガチャガチャしている僕の肩を誰かがたたきます




お客さん・・・ドアが壊れてしまいますよ




あ、よかった、車掌さん!! 僕は急いで振り向き 今の状況を尋ねました




お客さん・・・この電車の執着駅はまだまだ 先ですよ 途中下車は できません




えーっ!!! 冗談じゃないよ 僕は家に帰るんだ 明日も仕事があるんだよ 早く帰ってドラマも観たいんだ ニュースも見たい


お風呂も入りたい 夕飯だって妻が作ってくれている 早く帰りたいんだよ




僕は 車掌さんにくってかかっていました




お客さん・・・まあ 落ち着いて


あなた心の中で毎日思っていたでしょう?


毎日同じ代わり映えの無い毎日は退屈だって 思っていたでしょう?


お連れしますよ  あなたの知らない世界に


その代わり あなたは二度と戻れない


退屈なこの世界とはさよならですよ よかったですね?




僕は ドアを叩き ここから出せと この電車から降ろせと 


自分でも驚くような声で 騒ぎまくりましたが


気がつくと車掌さんの姿はどこにもなく


ただ 電車は走り続けている


よくみると さっきから ずっと同じ景色の中を走り続けている




僕は窓をたたいてあけようと試みました




あ、窓が開いた!!!


僕は 決心して 窓を開くだけ開けて そこから飛び降りることにしました


風が激しく吹いています


電車の走る音が耳に響きます


草の臭いがします


遠くに街の灯りが 飛んで行きます




意を決して 僕は窓から 飛び降りました


あ!!! 地面が無い!! 僕はいったいどこに 浮いているんだ どこに行くんだ?電車は僕をおいて 遠ざかっていきます・・・


やっぱり 乗せてくれ・・・・・ そんなぼくの 叫びは 電車の走る音にかき消されてしまいました・・・・




お客さん、お客さん




とんとんと 肩をたたく 手の 重み


はっと すると 車掌さんが・・・




お客さん もう終点ですよ?


どこの駅に降りるんですか?


 戻るのならばあちらのホーム 最終ですよ?




僕は挨拶もそこそこに急いで反対側ホームの電車に乗りました


あ・・・夢だったんだ・・・・


よかった・・・・


電車はドアを閉めて 発進します


ほっとして 駅のホームに目をやると




あの車掌さんが手をふっているではないですか!!


もう二度と退屈な人生などと 嘆いてはいけない


同じようにみえていても


同じ毎日など 二度とこないのだから・・・・・




僕は 僕は




毎日同じ電車に乗って


同じ時間に 会社に行きます


いやいや


ちがう 昨日と同じ今日なんて ないはずなのですから


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