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三人の魔法使い

 一度魔法にかかってしまえば、その足はもう制御がきかない。


 灰色の世界、灰色の舞台。

 茶色い大地なんてものはもう御伽噺のような遠いところで

 今見えるのは薄汚れた灰色と、もしくは真新しい黒のどちらかだろう。

 そんな世界を縦横無尽と疾駆する、白、黒、銀の四角い生き物。

 ゆっくりと歩いている私には逆らえない強さと

 柔軟な私には抗えない傲慢さを持ったそんな生き物。


 だけどそんな強い生き物も、弱い私も、彼等の放つ魔法の前では

 ただの操り人形、視線の奴隷、盤上の駒。


 高い位置から見下ろしてるのは、それが彼等の最も相応しい場所だから。

 時間を、意思を、権力を

 この灰色の世界の中で全てを司る彼等こそ魔法使いといえるのだ。


 彼等の一人が青い魔法をパッと放てば、まるで力を得たようだ。

 私は進む、誇り高くも偉そうに。

 青い魔法が私に力と、強い意志を与えてくれる。

 強い配下を左右に控え、十戒のように開けた道を王の如く歩くのだ。


 さぁ進みなさい王達よ。青の魔法使いがそう示すのだ。


 けれどそれもほんの束の間、彼等の一人は忙しない。

 そんな一人が放つ魔法。

 黄色い光の短い魔法。

 それが放たれてしまうともはや、王の威厳は白線上の塵と去る。

 奴隷の如く不自由で、収穫期を迎えた農夫の如く慌しくも忙しい。


 せっせと走れ馬の如く。

 黄色の魔法使いがそう急かすのだ。


 その一瞬が過ぎ去ると、最後に現れるのは赤い魔法。 

 その魔法が輝く頃に私はジッと立ち止まる。

 強い生き物達の下克上。

 今度は私が配下となって、横で黙って立ち尽くす。


 強い我等のお通りだ。

 我等の行く手を遮る者は、誰であろうがどうとなってもしらないぞ。

 しんと佇む赤の魔法使いの姿をよそに、強い生き物達がそう驕るのだ。



 白線上に進む私がふと見上げると、いつも彼等が待っている。

 一人は微笑み、一人は苛立ち、一人は静かに、私のことを眺めている。


 いつも私を見ていてくれる君等は多分、守っていてくれたのかい。

 赤い君は私を止めて、黄色い君は危険を教え、青い君が私を導く。

 そうかなるほど、だから君等はとても眩しいんだな。

 見逃してしまぬように、無視などしてしまわぬように。

 時には咎め、そして守り、そのためにそこにいるんだろう。


 なぁ3人の魔法使いよ。

 私を守ってくれるというなら、一つ教えてもらえるだろうか。

 君等は一体、何を返せば喜ぶんだい。

 お礼に何を返せばいい?

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