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円筒形の君に捧ぐ


 奥手な君の蓋を開ければ 黒い瞳が反射する


 君の形はどれだろう

 よくいえばすべすべの肌の するとなぞった指先に伝わる 冷たい皮膚がそうなのか

 奥手な君はいつだって 長方形の賑わった箱の中の奥底で

 小さな居場所を見つけては 似たような君と一緒にいるんだろ


 君の形は細長い 円い君を見たことはない

 それはもう きっと君ではないのだから

 悪く言えば愛想のない すっと触れた唇に染み込む 冷たい味が君なのか

 内気な君はいつも通り 円筒形の暗い室内いっぱいを

 大きな優しさで満たしていて 誰か来るのを待つんだろ


 そう慌てない いつだって君が笑うのは最後なんだ

 ふわりと沈むまろやかな君の香りが 喉を突き抜けて体の中に流れ込み

 それが幸福なんだって気付くより先に もうひとしずくの香りを残す

 鼻が君を覚えているよ 間違えなんてきっとしない


 君の形はどれだっけ

 三日忘れた頃の君は なんだか不貞腐れているようで

 待ち侘びていたんだから とは言わないけれど

 いつも通りの冷たい顔で 素っ気無いけど待っていてくれるんだろ


 時には何度も求め続け 満たされれば何日も離れ

 毎日のように君がいることもあれば 七日はいないこともあって

 いつも冷たい君かと思えば なんだか温かい君もいる


 多分知っているんだろ

 君は僕を駄目にする

 じわりと体を蝕んで ふわりと心を侵すんだ


 悪い君と 駄目な僕は

 解放的な広い空間の 閉鎖的な狭い入り口で逢瀬を交わし

 恒久的な長い時間の 断続的な短い間に唇を重ね

 温かい味わいと 冷たい香りを

 少し残して別れを告げる


 そんな循環を呪われたように繰り返し輪のように番うなら

 円筒形の君の形が変わってしまうようなことはないんだろ


 だから探すよ 君の顔

 何度も掴むよ 君の肌

 囚われの君の大きな箱から 円筒形の小さな君を

 何度も僕が救いだすよ


 方円形の鍵持って いくつも君を救い出すよ

 長方形のドア開けて いつでも君に救われたいよ


 

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