黒々と青、時に白
地に向けて発射された階段の一番高い所に着地した腰には何重ものシートベルトを巻かれていた。
その小さな、もしくは大きな目を一杯に広げても、黒々と広がった空の形もわからないだろう。
その薄い、もしくは厚い唇を丸く広げても、青く黒澄んだ空の透明性を伝えることは出来ないだろう。
小さな薄い、平べったい耳では、立体とも平面ともわからない空間の白い光を放っている変幻自在のまーるい奴の囁き声は拾えない。
精々同じ平面の、見下ろした先で楕円形がはしゃぐ声しか届かない。
さても空とはどんな味がするのだろうか。
黒蜜ほどの濃厚な幸福感が口の中に広がるのなら、ほんの少しだけ味わいたい。
(黒蜜か、そうではないよ、残念ながらわたしは少し、辛いんだ)
そう言った星は確かに少し尖った味がするのだろう。
一つ味わってみたいのだけれど。
食べに行こうにも足は行き先を知らないし、手で掴むには遠すぎる。
それに品がない。
想像に想像を上塗りしても黒々とした深さには及ばないし、段々と胸にもやもやとした濁りも立ちこめてしまっている。
全身のあちらこちらを総動員して、何一つとして理解するには至らない。
(ほんと釣れない奴だなぁ)
ああ、でもふと一つだけ。
一つだけ使っていなかった。
もしかすると君が一番正しく、唯一空を感じていたのかもしれないな。
微動だにすることもなく、打ち付けたように動かない。
それが正しい方法なのか。
返事がないとは、つまりそういうことなのだろう。
黒々と青澄んだこの空を、最も深くわかってたのは、一番最初に一度だけ、地についたきりの君だったということか。