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心と科学  作者: 酒井順
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第8話 創発を考える

 昨晩ベッドに入り、眠ろうとしたときに考えていた。そのときは思考が分散していくようであり、なかなか纏まった考えとはならなかった。気がつくと朝になっていて、それでも考えは纏まらなかった。この文章群に追加しようか悩んでいるうちに別な「話」を書き始めて投稿してしまった。現在は投稿した直後であり、昼食の少し前である。


 考えていたことは「創発」についてである。書きたいことは山ほどあるが、そのテーマを忘れてしまうことが悪い癖である。そのときに書きたいと思ったことを雑記帳に書き留めたこともあったが、いざ書こうと雑記帳を捲るとさほど書きたいとは思わなかった。この文章群は、ただの思い付きで構成されているのだろうかと思ったりもする。脳の中には書きたいテーマリストがあるようだが、その中のいくつが現実に文章となって現れるのかはわからない。


 そのテーマリストに割り込みをかけたものがいる。それが「創発について」である。幼い頃に「順番は待ちなさい」と教えられたが、どうやらそれを実践できない性質のようである。


「お代官様、お慈悲を」

代官はその訴えを聞くはずもなく、

「おぬしも悪よのう」

となり、時間がくると印籠が出現して、

「控えい。控えい」

となる。


 多くの方がご存知の時代劇の大筋のストーリーである。このとき上記の3つの会話文をみると、それぞれが論理に適っており1文だけでも意味が通じる。しかし、会話文3つが揃うとストーリーという全く違う性質のものが現れてくる。1文が部分で、3文が全体であるとすると、これが創発の正体ではないかと昨晩に考えたのである。


 順序も関係するようである。例えば「控えい。控えい」が最初にくるとどのようなストーリーになるのか僕にはわからない。もしかしたら新しいストーリーになるかもしれないが、僕にはわからない。


・E=mc^2という特殊相対性理論から導かれた式がある。

・原子力という大きなエネルギーが得られる。

・放射性物質の残骸や放射線の被害が起きる。


 以前は原発に大きく反対する僕であったが、最近ではそうでもない。何故ならば、原発の問題は特定の会社のみが原因ではないと考えるからだ。もちろん「責任はない」などとは言わせない。しかし、原因と責任は違うと思う。原因は社会全体が「豊かさ」を求め過ぎることにあるのではないかと考える。


 もはや現代の日本人は電気無しの生活を考えられないと思う。日本の総電力量が10%下がったら、ガソリンの供給も10%下がる。ガソリンの供給を維持しようとすると何処かに皺寄せがくる。つまり、通勤も買い物も10%できなくなるということだ。


 この生活に耐えることができるだろうか。僕の答えは「Yes」なのだが、多くの人は「No」なのかもしれない。個という部分の思惑が複雑に絡み合い、国家という全体に原発再稼働という性質を与える。国民個々に原発が好きか嫌いか尋ねたら「好き」と答える人は少ないのではないだろうか。それでも原発は再稼働するであろう。これも創発という現象なのかもしれない。


 少し脱線ぎみになってしまった。僕がそうであるように、結論のでない文章を読むことは苦痛であるかもしれない。「嘘でもいいから結論を出してくれ」と言いたくなる。それでも結論を出せない。人は能力の限界を持っている。但し、その時点での限界だ。未来を思うとき、限界は大きく膨らむものだと思う。これを成長と呼んでいるのかもしれない。


 さて、原子力に関する上述の3文は全体なのであろうか。自然は3文で完結するストーリーを描いているのだろうか。そうであれば、人類は原子力を使うべきではないと判断するであろう。しかし、違うと思う。3文が何かの部分であったとき、原子力を包む全体は創発的な性質を持ち、新しい道が開かれるのではなかろうか。3文の後に続く文を見つけ、全体のストーリーを知ったときに人類は進歩するのだと思う。但し、前提として、ストーリーを知る前に人類が滅亡しないことがある。


 何かを思い付き、文章にしたとき、それが役に立ったことは皆無といっていいほどない。意味があるのかと尋ねられたら「わからないけど、さほど迷惑している人はいないだろう」と答える。僕でさえ思い付くのだから、既に世では誰かが叫んでいるのかもしれないとも思う。


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