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塔
寒い。
冬はまだ少し先とは言え、吐く息は白く濁って大気に溶けていった。
足元に絡み付く草を踏みしだいて、ジーンは東の塔へと向かっていた。
王宮の外れに、忘れられたように建つ東の塔。
何百年も前に閉鎖されたはずの塔だった。
(そこに、人が?)
信じられない。しかも子供なんて……。
(婆さんもとうとうボケたかな)
さく、とブーツが土を踏む。
東の塔に着いた。
扉は南京錠で幾重にも拘束され、固く閉ざされている。
ジーンは鍵の束を取り出し、鍵穴に差し込んだ。
−−ガチャ。
鍵は拍子抜けするほどあっさり開いた。鎖を解き、扉を押す。
重苦しい音と共に開いた先には、長い廊下があった。所々にある窓から淡い光が差し込む。
(−−埃が積もってない)
つまり、人の出入りがあるということ。
(本当に、人がいるのか)
少しの緊張を奥歯で噛み締め、ジーンは階段を登り始めた。
10分も登ると、踊り場に出る。どうやら頂上に着いたらしい。踊り場にはこれまた南京錠で閉ざされた扉がある。
それに鍵を差し込み、開ける。
ジーンは深呼吸して、扉を開いた。