私の愛は死ぬ事で承認される
櫻井紅音……女、さくらいあかね
小鳥遊蛍……男、たかなしけい
紅音
「さよなら……私」
紅音N
「私は飛び立つ……そして落ちる、地面に叩きつけられる……グシャりといった音が頭に響く……私は死んだ」
蛍「はぁ……またやった……」
紅音
「……あ、蛍ちゃん」
蛍
「とりあえず逃げるよ」
紅音
「うん!」
紅音N
「私は死んだ、確かにそうだ、だけど蘇る……そんな人間居ない、でもここに居る、これはきっと神様の悪戯……それか私の夢なのかもしれない」
蛍
「はぁっ……はぁっ……なんとか帰ってきた……もう大変だったんだから!毎回深夜に出て人目つかないところで自殺しないでよ」
紅音
「ごめんなさい」
蛍
「いいよ、慣れたから」
紅音
「うん、私の事好き?」
蛍
「当たり前、僕は君が好き、愛してる」
紅音
「なら殺してよ、蛍ちゃんなら殺せるでしょ!?」
蛍
「やだ」
紅音
「なんで!こんな身体なんだよ!?こんなの人間って言える!?」
蛍
「言える、だって紅音は紅音だもん、どうなっても好きだよ」
紅音
「ホント?」
蛍
「うん、ホントだよ、好きだよ、誰かに君が殺されるなら僕が殺してあげる、でも僕は嫌だ、君と生きてたい、一緒がいい」
紅音
「蛍ちゃん……好き」
蛍
「うん、僕も好き、生きててくれる?」
紅音
「うん!」
蛍
「よし、身体もだいぶ治ったね、汚れ落とし行こっか」
紅音
「うん!おふろっ♪おふろっ♪」
蛍N
「櫻井紅音、僕、小鳥遊蛍の彼女である……彼女は死ぬ事が出来ない、しょっちゅう死のうとリストカットや首締めをしては僕に止められ、怒られていた、僕の愛を確認する為の試し行動、酷いメンヘラ彼女、それが紅音……そんな彼女が突然死んだ、完全な事故……いつものようにリストカットをする、ふと切り過ぎて僕が帰った頃には出血多量で死んでいた……それは半年前の蝉が鳴く暑い日だった……」
蛍
「あっつ……アイス溶けてないかな?紅音喜んでくれるかな?あれ鍵開いてる?ああ、そろそろ帰るって連絡してたから開けといてくれたのか、気が利くなー僕の彼女は!たっだいまー……って……え?紅音?」
蛍
「いやいや冗談よしてよ〜、いつもの試し行動でしょ?ほら起きてよ、ねぇ!」
蛍
「え?ほんとに……?紅音?紅……音……?脈……止まってる……は?嘘だろ?なぁ起きろって!ホントに死ぬやつがあるかよ、起きてよ!あ、アイス買ってきたんだ!一緒に食べようって……思って……ねぇ……お願いだよ、僕……紅音居ないとダメなんだよ……好きだから、愛してるから、起きてよ!」
紅音
「……ん……うるさいなぁ……あれ?蛍ちゃん?」
蛍
「紅音……紅音!!」
紅音
「わっ!痛い……痛いよ蛍ちゃん、どしたの?そんな泣いて」
蛍
「僕!僕!紅音!紅音が!死んじゃったって思って!うっ……ううっ」
紅音
「あ……そうか、私、手首切って……え?死んだはずじゃ……間違って深くやり過ぎて寒くなって意識飛んで……そのまま……」
蛍
「よかった!よかったよぉ……紅音居ないと無理、好きだよ紅音、愛してるよ」
紅音
「うん、ごめんね……私も好き、愛してる」
紅音N
「それが最初、私は死んだ、死んだはずだった……疑問、いつも浮かぶ不安、私は愛されてるか?そんな不安が漠然と現れ死にたくなる、そこに疑問が生まれた、蘇った?なら私は……人間か?」
蛍
「じゃあ、行ってくるね」
紅音
「うん、いってらっしゃい……ふぅ……さて、昨日の疑問、私は死んだ、じゃあ今ここに居る私は?解答、櫻井紅音、24歳独身、小鳥遊蛍という2個下の彼氏持ち、うん、記憶はしっかりしてる、私は私なんだろう……多分……疑問の本題はこれ、私が彼の愛を確かめようと手首切って死のうとした、それでミスって出血多量、なんで間抜けなんだろう……てまもなんで蛍ちゃんが帰ってきてから蘇ったの?てか蘇るって人間じゃないでしょ、化け物じゃん……そんな私なんて無理でしょ、あ、無理だ……蛍ちゃんが愛してくれるわけない……はは……死のう……
紅音
「よし、準備できた……これでいいや、うまくいくかな?よいしょ……んっ……うぐっ……ぐぅ……かはっ……」
蛍
「はぁ、やっと帰ってきた……そういや紅音から連絡来てなかったな、よっ……開いた、ただいまー……ん?何この臭い……くさ……うっ……紅音!またバカなことして!!」
紅音N
「2度目、本当に死んだ、準備して首を吊った……確かに死んだはず、試し行動どころじゃない自殺、終わりを迎えるやり方……なのに私は違かった」
紅音
「ごほっ!ごほっ!」
蛍
「紅音?よかった……生きてた……」
紅音
「はは生きてる……」
蛍
「うん、そうだよ、生きてるよ」
紅音
「ちゃんと死んだのに……おかしいよ!なんで!私!蘇ってるよ……蛍ちゃん……私、化け物なっちゃった……死にたい……」
蛍
「紅音……大丈夫、大丈夫だから!君がどんな風になっても愛してるから!人間でも化け物でも紅音は紅音だよ……僕の大好きな人」
紅音
「うん、うん……うわぁああん!!」
蛍N
「蝉が騒がしい夏の日、彼女は素直に人と呼べなくなった、でも僕の気持ちは変わらない、例え誰かにおかしいと言われても、彼女がおかしくなったのなら僕もおかしくていい、狂ったのなら狂えばいい……それが僕の愛だから……君が居ないと僕は生きていけないのだから」
紅音
「ねぇ、蛍ちゃん……好き」
蛍
「んー、どしたの?甘々じゃん」
紅音
「んへへ、ぎゅ〜」
蛍
「ちょっとごめんね」
紅音
「ちゅー??」
蛍
「くんくん……あ、やっぱり……お酒飲んだでしょ」
紅音
「ちょっとらけらよー」
蛍
「はぁ……弱いのに……」
紅音
「今なら空も飛べそう……ふへへ」
蛍
「大人しくしてなって」
紅音
「や!行きます!アイキャンフラーイ!!」
蛍
「ちょっと待って!ここ五階!!あ」
蛍N
「首吊りの次は飛び降り……この時の僕は既におかしくはなってた……2度も見てるから……紅音の蘇りを」
蛍
「はぁ……はぁ……誰にも見られてない……よね?」
蛍N
「頭から落下、即死……その死体を回収して部屋に戻る……狂ってるとしか言えない光景だ、でもただ失う訳にはいかないと思ったんだ」
紅音
「あれ?蛍ちゃん?なんで、ギュッてしてるの?」
蛍
「また死んだんだよ、酔っ払って……飛び降りて……もう馬鹿」
紅音
「あはは、ごめんね」
蛍
「うん、平気」
紅音
「チューして?」
蛍
「ん……」
紅音
「ん……えへへ、ねぇ、私の事好き?可愛い?」
蛍
「うん、好き、可愛い……世界中の誰より」
紅音
「うれし」
蛍
「とりあえず綺麗にしにいこっか、お風呂行こ」
紅音
「やぁんエッチ」
蛍
「こぉら、揶揄わないの、いくよ」
紅音
「はぁい」
蛍N
「血で染まった彼女を抱いて、甘い会話をしてる、普通の見てくれならイチャイチャしてるバカップルだ、けど……僕らは異様で不気味だ……死なない彼女、それを愛する彼氏、どっちも化け物って言われると思う……でもいいじゃないか、二人が愛し合ってるなら」
紅音
「ふんふんふーん♪っ!?」
蛍
「どうしたの!?」
紅音
「指切っちゃった……」
蛍
「あーあー、やっちゃったね、とりあえずティッシュで止血しとこうか?」
紅音
「う、うん」
蛍
「何作ろうとしてたの?」
紅音
「カレー……」
蛍
「カレーね、わかったよ、後やるから休んでて」
紅音
「ごめん、ごめんね……嫌わないで」
蛍
「嫌わないって、ほら、あっちで座って待ってて」
紅音
「うん……」
紅音N
「役立たずだ私は……料理一つもまともにこなせない……彼に頼ってばかり……そんなの嫌になる、嫌われて当然、私が愛されていい訳ないんだ、私愛されてる?そう思うと辛くて、苦しくて、悲しくて……切なくて……死にたくなる」
紅音
「はぁっ……はぁっ……クスリ……どこ?……はぁ……はぁ……蛍ちゃんが隠すなら……ここかな……あった……はぁ……はぁ……んぐっ……はぁはぁ……これで……いいや……あはは……」
蛍
「あと煮込むだけー、紅音〜良い子にしてるかなー」
蛍N
「その時、ドサっと何かが落ちる音がした……」
蛍
「紅音!?あ……OD……もう嫌うはずないのに……紅音の馬鹿……ごめんね、叩くよ」
紅音
「はぁ……はぁはぁ……ごめんねごめんね」
蛍
「いいから!吐いて!飲んだの出して!!」
蛍N
「オーバードーズ、薬の過剰摂取……毎度の事、死にたくなって常習化して僕がそれを隠す……でも癖をわかってるのか探し出される……ここ最近平気だったのに、きっと身体がおかしくなったのが原因だ」
紅音
「ぐぇっ!ごぇっ!うぶっ!ごほっごほ!」
蛍
「何してんのもう!ほら水飲んで!」
紅音
「んぐっ……ぶはっ!ごほっ!」
蛍
「はぁ……すぐ気づいてよかった……」
紅音
「ぅっ……うぅ……ごめんなさい」
蛍
「大丈夫、大丈夫だから!」
紅音
「ごめんなさい、私いらない、私なんていらない……」
蛍
「いるから!必要だから!」
紅音
「要らないの!!」
蛍
「ちょっと待って!」
紅音
「バイバイ!」
蛍
「あ……紅音!」
蛍N
「窓から飛び出て地面に落ちる、叩きつけられぐしゃぐしゃになった……即死……すぐに駆けつける……玄関で鏡の自分と目が合う……なんでだろう……なんで笑っているのだろう」
蛍
「紅音!無事?」
紅音
「…………」
蛍
「紅……音?……嫌だよ?蘇るんでしょ?死んじゃ嫌だからね!」
紅音
「ん……おはよ、蛍ちゃん」
蛍
「よかった….…あ、見られてない内に逃げるよ」
紅音
「ん、抱っこ」
蛍
「ん、よし!」
蛍N
「彼女が蘇る……その度に僕は自分がこの人を愛してることを自覚する、変になって頭がバグってがバケモノになってるんだ僕は……彼女が死ぬ度に、蘇る度に……」
紅音
「へへ、ごめんね、ありがと好きだよ」
蛍
「うん、僕も好き、だから死なないで」
紅音
「うん、愛してるよ、蛍ちゃん」
蛍
「僕もだよ、紅音、愛してる……」
紅音N
「私が死ねなくなって一週間が経った、彼氏のおかげかあれから自殺はしてない、でも気づいた事がある……蘇ったら傷は治っていく……けど包丁で、ふと切ってしまった傷はまだ治らない、そこで思ってしまった、不意に傷ついた傷が治らない、故意にやるとダメ、なら他人からは??死ねないなら殺される?それなら……死ねる……?誰に?愛する人に……それなら……きっと笑えるはず……」
蛍
「ただいま〜」
紅音
「おかえり〜、忙しかった……?」
蛍
「それなりにねー」
紅音
「お風呂にする?ご飯にする、それとも〜」
蛍
「紅音にしようかな」
紅音
「きゃっ……うふふ……はい」
蛍
「え?何これ包丁?」
紅音
「見てこれ、指の傷治んないの、自殺しようとした傷は治るけど、そーじゃないの残るみたい、だからね」
蛍
「だから……?」
紅音
「殺して?」
蛍
「……ああ、そういう……やだ」
紅音
「なんで?私の事嫌い?愛してないの!?」
蛍
「ううん……愛してるよ、だから紅音には生きててほしいの、ほら包丁戻しておいで」
紅音
「なんで!?私は愛してる蛍ちゃんに殺されたいのに!馬鹿!ぐふっ……」
蛍
「馬鹿だなぁ……紅音、愛してるよ、だから一緒生きたいんだ……」
紅音
「うん、ごめんね……ごめんね……私馬鹿で……」
蛍
「いいよ、早く戻っておいで……愛してるから……」
紅音
「うん……うん……」
蛍
「……死んだ……んっ……」
蛍N
「死人に口づけ……なんて狂ってるのだろう……それでも僕は実感する、死ぬ度に彼女への愛に、蘇る度に彼女からの愛に」
紅音
「ん……蛍ちゃん……」
蛍
「おはよ、おかえり」
紅音
「ん、ただいま」
蛍
「愛してるよ……生きててくれる?」
紅音
「うん、わかった……愛してるから……」
蛍
「汚れちゃったね、お風呂行こっか?」
紅音
「ん、行く」
紅音N
「私は思い知る、この人の優しさに……異常と言われてしまうほどの愛情に……きっとこの人は私を殺してくれないだろう……それでも私はどこかで愛する人の手で終わりたいと、そう願う」
蛍N
「それから月日が流れ半年が過ぎた……彼女は何度でも繰り返す、リストカット、首吊り、飛び降り、溺死、OD……死ねる訳がないのに自殺を繰り返す、死んで蘇り、不安が募り……愛を確かめる……そして僕に懇願する」
紅音
「また死んじゃった」
蛍
「そうだね、血だらけだ、洗いに行こうか?」
紅音
「うーん、まだ殺してくれない?」
蛍
「うん、しないよ、一生」
紅音
「こんなに愛し合ってるのに」
蛍
「うん、愛し合ってるから」
紅音
「私は愛してる蛍ちゃんに殺されたいのに?」
蛍
「うん、ダメ……じゃあ逆に僕の事愛してるから殺してって言ったらできる?」
紅音
「うぅ……無理……」
蛍
「なら一緒に生きようね」
紅音
「うぅ……」
蛍
「僕は君を殺してあげない、絶対……」
紅音
「なんで?」
蛍
「愛してるから……手首切って血の海作ろうが、首吊って糞尿垂れ流そうが、飛び降りてぐしゃぐしゃになろうが、どんなふうに死んだとしても僕は君を愛してる、君がちゃんと死ねる日まで一緒居るよ……」
紅音
「私はこんなに貴方に殺されたいのに……」
蛍
「ごめんね、僕は絶対に君を殺さない、でも、どうしようも無く苦しくなったら死んだっていい、その代わり絶対戻ってきて……居なくなられたら無理、絶対追いかける自信ある、死んだら死ぬよ」
紅音
「それは嫌……」
蛍
「なら生きて」
紅音
「うん、わかった……ねぇ、愛してる?」
蛍
「何度も言ってる……愛してる」
紅音
「そっか……頑張る……」
蛍
「ん……」
紅音N
「そうやって私を生かす彼の口づけに愛を感じ
た……甘く蕩けるような紅い鉄の味の口紅を塗り合って、夜に溶けていく……きっと私はこれからも不安に襲われる……そしてこう思う……私は愛されてる?彼は私を愛してるのか……だから私はいつかまた死ぬんだろう……その度に彼を想う……そして蘇る……その度に愛を感じるんだ……私は死ぬことで愛という承認欲求を満たせるのだ……これが私の壊れた愛のカタチ」
蛍N
「僕は彼女を殺さない、これからも生かし続けるだろう……でも死ぬことを受け入れている、だって蘇るから……失いたくない気持ちと裏腹に彼女の死の瞬間に愛おしさを感じ、蘇りの瞬間に悦びを感じる……僕の愛は彼女の死で承認され満たされる……これが僕の狂った愛のカタチ」
蛍
「愛してるよ……紅音……ずっと生きていこうね」
紅音
「愛してるよ……蛍……ねぇ、殺して……」




