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異世界恋愛+α(短編)

どうも、キャリアウーマンです

作者: いのりん

 どうも、キャリアウーマンです!


 そんな私ことチェミィ・ウィスピーの職業は経営コンサルタント。王立学園の経済学部で優秀な成績を収めていたので3年前、卒業と同時に思い切って旗揚げ独立してみました。


 ところがどっこい!

 残念ながら、なかなか軌道に乗りません。


 原因として、私の未熟さは勿論あるんでしょう。


 ただ、残念ながら女と言うだけで侮られることも多いようです。せっかくよい提案ができたと思った時にも拒否される事がしばしば。


 うーむ、せめて私が男だったらもう少し働きやすかったんですかねぇ。ちなみに、この前クライアントに言われたセリフはコレ。


『いやー、女性にはわかんないだろうけどウチにはウチのやり方ってもんがあるからさぁ……』


 その『ウチのやり方』で業績は傾いているの!

 貴方、何のためにコンサル雇ったんですか。

 


 そんなこんなで、まだ実績も少なく単価も安く、効率的な仕事ぶりや充実した私生活からは縁遠いところにいる残念な現状です。

 貧乏暇なし。


 でもまあ仕事に情熱を持って働きいつかビッグになるつもりなので、私はキャリアウーマンで間違いないでしょう(圧)。


 さて、そんな私ですが

 今日、人生が大きく変わるかもしれません。


 王都から南にあるスパダリヤ領から『領地運営のコンサルをしてくれ』という超大口の依頼がきたからです。


「これが領地の資料になる。よろしく頼む。」

「はい、早速分析してみます。」


 新領主となったブルーゾ様から早速資料を受け取りました。お若く見目麗しく、ハキハキしていて感じの良い方です。


 そうして笑顔で分析を開始したその2日後。

 私の顔は引き攣っていました。


「これは酷い」


 いえね、依頼を受けた当初から何で私に白羽の矢が立ったのか疑問ではあったんですよ。

 その理由は明確でした、つまるところ資金難で『前金は最小限、成果報酬式』を売りにしていた私しか選択肢がなかったのです。


 大規模な水害によって主産業である農業と畜産業に大打撃を受け、しかも被災者への福利厚生で出費がかさんだため、実績のあるコンサルタントを雇うお金を捻出できなかった事がわかりました。


 資金不足どころか、とんでもない赤字です。

 うーん、どうしたもんですかねこの借金山脈。というか、貴族の信用があるにしてもよくこれだけ借りられたなスパダリヤ家の人達……


 とりあえず、広い土地や温暖な気候など領地に潜在能力はあり色々とできることは多そう。

 ただ、頭ごなしの新事業提案は難色を示すクライアントが多いことを経験から学んでいますので、まずはブルーゾ様が今考えている事業計画をお聞きし、適宜補足や修正をする感じでいってみましょうか。


「うーん、考えたことがないな。父上から『まずは現地で民の仕事や生活を把握して心を通わせなさい』って言われてたから、ずっと色んな農地に行って視察、というか下働きばかりしていたんだ」

「そ、そうですか……」


 成程、私と同年代で後継者にもかかわらず王立アカデミーにいなかったのはそう言う理由だったんですね。


 なお、そのお父上が前領主だったんですが、経営不振の引責で王命にて強制的に辞任・隠居させられたとのこと。しかも、その余波で引き継ぎも不十分なままなのだとか。

 天災については仕方ない気がしますが……そういうとき責任を取るのも仕事なんだから貴族って大変ですね。


「というわけで策はないが、上に立つものとしてなりふり構わず身を切る勢いで働かねばとは思っている。必要なら俺を遠洋漁業の漁船に乗せてくれても男娼として売り飛ばしてくれても構わん」

「なんですかそのナナメ上の覚悟は!?」


 やる気は認めますが、その方向性は無しでお願いします。


「何故だ、どちらも実入りがいい仕事だぞ」

「そうですね、年収百万ゼニーは稼げるでしょう。」


 いや、ブルーゾ様はお顔が良いし貴族と言うネームバリューを使えば男娼で三百万だってきっと夢でない……って違う違う!


 はい、ここで質問です。


「ところでブルーゾ様、今スパダリヤ家にいくら借金があるかご存知ですか」

「35億」


 そう、35億ゼニーです。


「つまり、貴方個人の努力レベルでは、いくら頑張っても完済まで1000年かかるわけですよ。」

「成程。ではどうすればいい?案はあるのか」

「いくつかあります。ただ周囲の理解と協力がないと実現出来ないことばかりなので、ブルーゾ様には領民の説得をお願いしたいです」

「承知した。全力を尽くそう」


 ドンと胸を叩いて返事をして下さいましたが、不安です。だって人間、どうしたって今までのやり方を変えるのは抵抗がありますもの。

 しかも、頭ごなしに命令しちゃうとやる気をなくして生産性が下がるから、こういう時の合意形成ってめちゃくちゃ難しいんです。


 とはいえ、ここで領民と面識のない私が出しゃばっても残念ながらより話が拗れる可能性が高い。なのでブルーゾ様が上手くやってくれるのを祈るしかありません。

 少しずつでも領民が受け入れてくれて成果が出ればいい流れができるとはおもうのですが……




「チェミイの案は凄いな。主要人物は全員賛成して早速動き始めてくれたぞ!」

「そ、そうですか……」


 あれぇー?

 なんかすんなり決まり過ぎな気が……


「ブルーゾ様、命令じゃなくてきちんと領民に説明してご納得頂けてるんですよね?」

「勿論だとも!」


 半信半疑でしたが、後日上がってきた資料をみると農産物の現地加工事業で早速収益が出始めていることや、領民も高いモチベーションで働いているのがわかりました。

 これは一体、どう言うことでしょう。


「次はどうする?何かできることはあるか。」

「ええっと、なら領地の一次産業をまとめて体験できるツアーを開催したいです。」


 首を傾げるブルーゾさま。旅行にきてまで農作業をしたいやつなんているのかってお顔ですね。


「そういうのと縁遠い地域の貴族や豪商には需要があると思いまして。もれなく従者もついてくるし、沢山領地にお金を落としてくれそうなんですよ」

「成程、凄いじゃないか」


 はい、我ながら良い案だと思います。


「でも残念なことに宣伝費が全くないんです。」

「成程、なら私の個人的な知り合い達に興味がないか声をかけてみよう」

「ありがとうございます。」


 察しが良くて助かります。本事業もまた、初動についてはブルーゾ様が上手くやってくれるのを祈るしかありません。

 手前味噌ながら非日常体験をご満足頂ける自信はあります。なので初めに二、三人遊びにきて下さればそこからは口コミで何とかなるとは思うのですが……


「チェミイの案は凄いな。声をかけた相手は軒並み興味を持ってくれたぞ。十人以上からすでに申し込みがあった」

「そ、そうですか……」


 あれぇー?

 なんかすんなり決まり過ぎな気が……


 半信半疑でしたが、後日上がってきた資料をみると彼が声をかけた貴族や豪商は本当に旅行を満喫して、体験作業先の事業主達も喜んで受け入れていたのがわかりました。


 その後もいい意味での想定外が続きました。初めは何故こんなトントン拍子にと訝しみましたが、答えはシンプルなものでしたね。


「ブルーゾ様って、領民からも他の貴族や豪商からもめちゃくちゃ信頼、というか応援されてますよね」

「そうか?まあ、スパダリヤ家は古い貴族だからな。父や祖父の作ってきた基盤のおかげだろう」

「勿論それもあるんでしょうけど……」


 そう思いながら過日読み込んだ資料を思い返します。当初、私はよく35億ゼニーも借りれられたなって思っていました。

 あれ実は、被災者への福利厚生にめちゃくちゃ手厚く出費をしていたからなんですよね。そして、そんな彼の人となりを知る周囲の貴族や豪商が気前よくお金を貸してくれたからそんな額の借金になった。


 そう、つまりブルーゾ様って無茶苦茶なところもあるけどなんか応援したくなっちゃうような、不思議な方魅力のある方なんです。


 一緒に働いて感じた事でもありますが天性の人たらしというか、底抜けのお人好しすぎてなんか助けてあげたくなっちゃうタイプ。


 最初はこのクライアント大丈夫かなって不安でしたけど、結果的に大当たりでしたね。私が働く上で一番のネックだった『周囲の理解・協力』が解決されるわけですから。


 もちろんその分、ここから先に失敗する様な事があれば全て私の提案内容が悪かったということになります。


 責任は重大……でも、腕がなりますね。

 私、今の仕事がすっごい楽しいです。



 ***


 気がつけば、コンサルをはじめて10年が経過していました。大変だったけど、楽しくてあっと言う間でしたね。


「これで公共投資の治水事業も終了です」

「そうか……今まで本当にありがとう」


 とんでもないお金も時間も信用もかかった大事業も上手くいき、領地の失業率を下げつつ経済とインフラも向上。これで私から提案できる計画はすべて終了した事になります。


「こちらこそ、ありがとうございました。ブルーゾ様の提案を全て受け入れて下さる度量と周囲への影響力がなかったら、きっと上手くいかなかったと思います。」


 お世辞ではなく本心です。貴方のお陰でこの10年、確かなキャリアと報酬を頂きました。でも今後、貴方以外と組んでも今回より充実した仕事ができるイメージは湧きません。


「……」

「……」


 お互い、暫し無言。


「これで契約は満了だな」

「はい、そうなります」


 わたしは今、達成感と……あと幾許かの寂しさを感じています。ブルーゾ様も同じ気持ちでいて下さるのでしょうか。


「なぁチェミイ。今、俺達はフラットな関係に戻ったな」

「そういうことになりますね」


 少なくとも利害関係は無くなりました。

 貴族と平民の身分差は勿論ありますが。


「そこでだ、俺と新しい契約を結ばないか?」

「ええっと……お気持ちは有り難く、是非お受けしたいです。ただ、今の領地運営はいい意味で安定しているのでこれ以上私から提案できることはなく……」

「ああ、違う違う。そっちではない。」


 んん?

 どう言うことでしょうか。


「俺を一生コンサルしてほしい。代わりに、俺のもっている物はすべて差し出そう。」

「うええ?!」


 それって、所謂プロポーズというやつでは……


「生涯の伴侶を考えた時、チェミイ以上に信頼できる相手が思いつかない。結婚してくれ。」

「えっと、あの、はい。とても嬉しいです」


 あれ?

 突然の申し出だったのに、自然と言葉が口に出ていました。あー、そうか……今自覚しましたけど、私もいつの間にか、彼に惹かれていたんですね。


「でも、領民やご友人など周囲の理解は得られるのでしょうか?身分差だってありますし」

「チェミイは心配症だな。この十年、沢山の実績を積んできたというのに」

「そりゃ心配もしますって」


 各事業の成功はブルーゾ様の人徳によるところが大きいんですもの。でも今回は、私の魅力が試されるんですよ。うう、気が重い……

 でも彼と結婚はしたいのでとにかく誠意をお伝えして、皆様に認めてもらえる様に頑張るしかありません。




「ほら、何も問題なかっただろ」

「あれぇー?」


 予想に反し皆様笑顔で祝福して下さりました。

 なんか、うまく行き過ぎな気が……


「みんな、チェミイがこの十年素晴らしい仕事をしてきたのを見てくれていたんだよ」

「ええっと、どう言うことでしょうか」


 その後聞いた話によると、領地再生プランの発案者が私と言うことをブルーゾ様は早い段階で全員に伝えていたそうです。


「そうだったんですか……ブルーゾ様の人徳で一発OKだったのかと思っていました。」

「おいおい、そんな訳ないだろう。残念なことに俺に領地運営のノウハウがないのは周知の事実だからな。俺は変な先入観をもたずに内容を精査してくれってお願いしただけだよ」


 その上で皆様、納得し協力してくれていたということでした。


「それに、どの事業も動き出してからは俺が視察に行く時いつもついて来ていたし、そこで会う人皆んなに丁寧に接していただろう。ああいうの、意外と皆見ているんだよ。」


 そうだったんですね……

 皆様、認めて下さりありがとうございます。




***



 どうも

 結婚しても仕事を続けているキャリアウーマンです。


「ところで、新しい問題について相談したいんだ」

「どうしたんですか」

「隣国で紛争があり、難民がこっちに流れてくるらしい。だから、受け入れて手厚く支援してやりたいと思っているんだ」


 貴方のそう言うお人好しなところ、好きですよ。


「わかりました。早速、受け入れの計画を立てましょう。一時的に出費はかさみますが、上手く定住に繋げれば未来の税収、消費の増加にもつながりますしね。差し当たり、十億ゼニーくらい見積もっておきましょうか。」


 え?そんなに出していいのかって?

 大金だぞって思っちゃう?


 ふっ…じゃあ質問です!


 今、ウチに自由に使える資産がいくらあるかご存知?


 答えは……35億!


 現在の私は、やり甲斐のある仕事に素敵な伴侶もいる豊かな人生。あぁ~、女に生まれて…よかった!

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― 新着の感想 ―
ブルゾンチェイミィ……w
チェミイ with (B)ブルーゾ(あれ? ブルーゾの綴りってもしかして頭文字V…?)による、ある日の一幕コント。 「何の実績もないコンサル小娘の私が、何故ここまで成長できたと思う~? 強力な後ろ楯…
娘が2人生まれたら、「ウィスタリア」とか「ペネロペ」とつけましょか? 本名の「藤」からウィスタリア、しおりからペネロペ。で
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