迷宮屋敷への招待
「はぁ〜、どうしようかな……」
私リリアーナ・スロワーヌは溜息をつきながら食事をしていた。
貴族学院に入学してはや3年、あっという間に卒業目前となった。
大抵の生徒は卒業後の進路は決まっているんだけど私みたいに将来が全く明るくない人も少なからずいる。
私の場合は実家が没落寸前の貧乏男爵家で優秀な婿取り、もしくは玉の輿を狙っていたのだが見た目地味な私が立ち入る余地など何処にもない。
恋愛小説みたいにはやっぱり上手くいかないよなぁ〜、と世知辛い現実を味わっている。
ていうか本当にどうしよう、どっか就職先を探して実家にお金を入れないと本当に潰れてしまう。
「眉間に皺を寄せてどうしたんだ? リリアーナ」
「えっ、あっ、レビット様」
私に声をかけてきたのは同級生のレビット・クライワーヌ侯爵令息。
没落寸前の私でも気さくに声をかけてくれる数少ない人物だ。
「それで? 何か悩みでもあるの?」
「えぇ、卒業後の未来が全く見えないんです」
「それは大変な問題だね」
「えぇ、このままでは卒業と同時に平民墜ちになるかもしれません」
「そこまで切羽詰まっているのか……、そうだ、リリアーナ嬢に1つ相談があるんだけど」
「相談、ですか?」
「そう、実は最近祖父が亡くなってね、相続とか色々ゴタゴタしていたんだ」
「それは大変でしたね」
「うん、それで祖父は僕にも遺産を遺してくれたんだけど……」
そう言ってレビット様は古い本を取り出した。
「それが遺産なんですか?」
「いや、これは遺産として貰った屋敷に置いてあった祖父の日記なんだけど、祖父はどうやら莫大な宝を何処かに隠しているみたいなんだ」
「宝っ!?」
「祖父は一代で財を気付きあげて爵位を拝命したんだ。その祖父が亡くなる直前まで過ごしたのが譲り受けた屋敷なんだ」
「それは何かありますよね?」
「そう、日記によると屋敷内に散らばれた謎を解いていけば必ず宝が見つかる、と書いてあるんだ。 僕は卒業後は屋敷の修復をしつつこの宝を見つけるつもりなんだ、でも1人では流石に大変だし、……僕は謎解きが余り得意ではないんだ」
「ずっと騎士科に所属されてましたよね」
「それで、どうだろうか? 一緒に謎解きをやってみないか?」
「わ、私がですか?」
「リリアーナは成績が常に上位に入っているけど頭が硬い訳ではなく柔軟な発想の持ち主だと思っている」
そんな風に評価してくれている、とは思わなかった。
「協力してくれるのであればご実家への援助も約束する」
「是非よろしくお願いします!」
私はレビット様の手をガッツリと掴んだ。
援助は勿論だけど話自体に興味が沸いた。
こうして私は貴族学院卒業と同時にレビット様の屋敷、後に『迷宮屋敷』と呼ばれる屋敷に足を踏み入れる事になった。




