最新ARギャルゲーから抜け出せない俺の隣で拗ねた幼馴染がゲームの一部になろうとしているんだがギャルゲーキャラより可愛すぎて気づかないふりをしている
現実世界で貴方も彼女たちとの青春を過ごそう。
そんなキャッチコピーのギャルゲーがある。このゲームは神ゲーと呼ばれ発売と同時に瞬く間に世間へと浸透していった。
最初は現実との区別がつかず反感の声も上がっていたがあれから5年今ではその声も収まっている。
そのゲームのタイトルは――『ハートフルメモリーズ』だが、
このゲームの凄いところはここだけじゃない。このゲーム、外付けのmod導入を使えばもはやできないことはないと言ってもいい程度には何でもできるようになるのだ。
この俺、鳶高雄が発売からずっと寝る間も手放さずやっているゲームである。
俺は今日もこのゲームをプレイすしていた――
◇
ピロロロロロ
「起きて起きて朝だよーー起きないと遅刻しちゃうよ〜」
俺はゆっくり目を開ける。俺を擦りベットの横で座っていたそこにいたのは銀髪のハーフエルフ
「高雄のおたんこなす」
そう某人気アニメキャラのエミシアである。初めてテレビで放送されたのはもう俺がバブーと生まれてくる前のことになるが残念ながら原作は完結してしまったがアニメの方は続いてくれていてとても助かっている。心から嬉しいばかりだ。
これは俺がmod導入で新たに入れたものになる。既存で入っていたキャラではない。がこの完成度、まさに本物と言って差し支えない。だからといってあんな所やこんな所を触る無礼なオタクでは俺はない。俺は真の紳士、名ばかりに紳士と言って手を出す輩とは違って本当の愛を持って接しているのだ。
「高雄起きた?」
「起きたよエミシア」
この会話の時点で最高である。本来であれば原作を読むことやアニメを観ることでしか聞けない声を、仕草を俺に対してやってくれてしかも反応がある! くぅ〜……この時代に生まれてきて良かったーー!!
「もう布団から早くでなさいこのままじゃ学校に遅れちゃうよ」
そうだったこの見た目この声に歓喜している場合じゃない。俺は布団から出て身支度を整える。朝ご飯は自分で作る。両親とも海外出張で家を留守にしているからだ。俺はトースターでパンを焼きその上にバターを塗り食らいつく。隣でエミシアがニコニコとこちらを見てくる。この空気がいい。
流石にARなので飲食はできない。感触や温度もAR専用の衣服、手袋を通して伝わってくるため装着していない所は感触がなく分からない。声はどうやってかキャラの口元から聞こえるようになっている。俺はご飯を食べ終え食器を洗い学校へ行く。玄関のドアを開けた。そこには――
玄関の前に座り込んでいた1人の学生服を来た銀髪ツインテールに瞳は水色の黒いパンストを履いた少女がいた。
隣に住んでいる俺の幼馴染の仕草芽歩だ。歩がこちらを振り向いてきた。
「ずっと待ってたのか?」
俺が質問すると歩が首を横に振る。
「このぐらいで出てくると思ったよおに〜ちゃん」
「お前の兄じゃ……ああそうかバレてたか」
俺は気づかないふりをしている。今まさに歩は俺の後ろにいるエミシアに目線がいっていた。エミシアを敵対視しているのだ。それで妹キャラになりきって対抗している所かな。歩が話す。
「いつもと同じキャラだね」
「そうだな」
歩はツインテールをくるくる触りながら話す。
「同じ銀髪で良かった……」
「え」
「聞こえてた?」
「いや、別に」
俺は誤魔化した。歩は少し口角を上げながら頬を赤らめてぷいっとそっぽを向く。これ、これが可愛いんだ。だからやめられない。俺は幼馴染がこの日常に溶け込むギャルゲーに対抗してゲームに割って入ってくるのがとても可愛らしくてずっと見てたくて辞められないんだ。
「学校行こうよおに〜ちゃん」
「わ、分かったそうだな学校へ行こうこのままじゃ遅れちゃうからな少し急ぐか」
「うん」
俺と歩、その隣にエミシアを連れて俺たちは学校へ行った。
◇
安心して欲しいのは俺がゲームを持ち込んでも許される学校を選んだことだ。授業の妨げにならなければ電源をオンにしててもいい学校でもある。俺は自分の高校の1年生の教室に入った。運命かクラスは歩も同じクラスなのだ。表には出さないようにしているがめちゃ嬉しい。
しかも席も隣り合わせの後である。完璧すぎる配置神様に感謝しなければいけないほどに。俺が席に着く。隣で歩も席に着いた。エミシアは俺の斜め後で立っている。すると歩が声をかけてきた。
「ねえ、許可が出てるとは言え学校に来たらエミシアちゃん消さない?」
「消さない」
「ARって自分にだけじゃなくて周りにも見えてるんだよ」
「うん。消さない」
「私がいるのに……」
「けさ……」
最後ボソリと歩の口から発せられた言葉に俺は返しが途中で止まる。ふふっと笑って歩はこっちを見る。何もなかったかのように。
「どうしたの?」
「なんでもないよ!」
俺はちょっと声を強めて言わされてしまった。