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 ランキング戦二日目の朝。

 帝都探索学園のグラウンドは、すでに熱気で満ちていた。

 観客席には一般客、ギルド職員、報道陣――誰もが視線をリングへと注いでいる。

 巨大スクリーンの隅には《全国生中継中》の文字。視聴者数はあっという間に120万を超えていた。

「さあ――ついに登場です! 一年生の模擬戦優勝、“クラッシャー”相原悠真!!」

 実況の声が響くたび、会場全体が揺れた。

《クラッシャー頑張れー!》《無傷伝説更新してくれ!》《Sランクの実力見せろ!》

 観客の声が波のように押し寄せる。

「事前アンケートでは、なんと六割以上が相原選手を応援! 学園のスター登場です!」

 悠真は控室からリングに出て、深く息を吸った。

(……熱い。気温が上がってる気がする。)

 対面ゲートから、炎を纏った影が現れる。

 赤髪を束ね、制服の袖を焦がしながら歩くその男――神代 蓮。

 掌から小さな火花が散るたび、空気が震える。

「身体強化系って、地味だよな

 せいぜい焦げる前に倒れないようにな」

神代は鼻で笑う。

「……全力でお願いします」

 悠真は短く答えた。その声に余計な力はない。ただ、静かな覚悟だけがあった。


「開始!」

 合図と同時に、神代が炎の矢のように踏み込んだ。

「――《熱圧縮:ブレイズ・バースト》!」

 空気が爆ぜ、リング中央で爆炎が広がる。

 地面がえぐれ、観客席が揺れるほどの熱波。

 観客の悲鳴とともに、画面が閃光に染まった。

《終わった!?》

《いや、あれは殺傷レベルだろ!》

《実況止めろw》

 煙が晴れたその中心――悠真が、立っていた。

 制服は若干焦げているものの、表情は変わらない。

 まるで炎そのものを拒むように、静かに立っていた。

(熱いのは熱かったけど……痛くない。皮膚も焦げてない。どういう……)

 神代の顔が引きつった。

「……は?」

 その瞬間、悠真の姿がふっとかき消えた。

 無音。

 次の瞬間、悠真が目の前にいた。爆風を裂き、踏み込んでいた。

 拳が閃き、空気が弾ける。

 地面が割れ、神代の体が壁まで吹き飛ぶ。

 衝撃音が遅れて響く。

「なっ、何が――!」

《見えねぇ!》

《瞬間移動!?》

《いや殴っただけ!?》

 実況が絶句する中、審判が駆け寄る。

「神代蓮、戦闘不能! 勝者――相原悠真!」

 一瞬の沈黙。

 次いで、爆発のような歓声が巻き起こった。

「クラッシャー!」

「無傷更新!」

「やっぱ本物だ!」

 観客席が総立ちになり、旗を振り、叫び、熱狂する。

 その様子を見ながら、凛は小さく呟いた。

「……まるで熱の波をすり抜けたみたい」

 隣のリーメイが頷く。「力だけじゃないアル。肉体そのものが化物ネ」


 ――試合後。

 神代は医療班に運ばれながら、かすかに目を開いた。

「……なんで、燃えなかった……」

 その問いに、悠真は静かに答えた。

「……俺も知りたいんです。どうしてなのか」

 その声音は穏やかだったが、底の見えない深みがあった。

 神代は何も返せず、ただその瞳を見上げていた。


 試合が終わる頃には、SNSのトレンドが埋まっていた。

 #クラッシャー無傷 #炎を無視する男 #Sランク超えの一年生

 有名ストリーマーが「これもう人類やめてるだろ」と笑い、ニュースでも報道される。

 一方で、悠真は一人、控室の窓辺で空を見上げていた。

(……炎を受けても焦げない体。これが《身体能力上昇》の効果だけとは思えない。でも、もし身体能力上昇の効果しかないなら、俺の肉体がどうにかなっているのか...?

 いや、そんなもの身に覚えもない。何かがあるはずなんだ。俺の中に、まだ知らない“何か”が...)



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