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 今日の学園は、いつもより騒がしかった。

 グラウンドに設けられた特設アリーナには観客席が並び、報道陣やスポンサーの姿も見える。

 空にはドローンカメラが飛び交い、巨大スクリーンには《全国配信中》の文字が踊っていた。

 すでに視聴者数は数十万人を突破している。

「ついに始まるな……」

 悠真は控室の窓から会場を見下ろしながら息を吐いた。

 耳の奥で、地鳴りのような歓声が響いている。

 その中で、凛やリーメイ、黒瀬、神谷ら仲間たちが合流した。

「観客、すごい人数ね」

「緊張してきたアル……でもワクワクもする!」

 リーメイが拳を突き上げると、黒瀬が苦笑した。

「お前、緊張って言葉知らねぇだろ」

「ふふ、全員無事で、無理せず戦いましょう」

 凛の落ち着いた声に皆が頷いた。

 やがて開会式が始まり、アナウンサーの明るい声がスピーカーから流れた。

「ようこそ! 帝都探索学園《ランキング戦》へ! 本大会は全国に配信されております!」

 観客席からどよめきが起き、旗が一斉に揺れる。

 教師代表とギルド職員の挨拶が続き、言葉の一つ一つが空気を熱くしていく。

「本大会は、日本最高峰の学園が誇る“次代の探索者”たちの力を示す場である!

 もちろん、すでに探索者として活躍してるものもいるが、まだ知られていない選手も中にはいるだろう。認知度がある生徒が必ずしも強いわけではないことを証明してみせろ!」

 その宣言に、グラウンド全体が拍手に包まれた。




 控室の大型スクリーンにトーナメント表が映し出される。

 200名の名前が整然と並び、ブロックごとに光が走る。

「うわ……やっぱり多いな」

「それだけみんな本気ってことアル」

 リーメイが目を輝かせた。

 実況の声が響く。

「第一ブロック注目選手は――“クラッシャー”相原悠真選手!」

 観客席がどっと沸く。

《コメント:クラッシャー来た!》

《やっと見られる!》

《本命きたあああ》

 スクリーン越しに映るチャット欄が爆発していた。

「お前、相変わらず人気者だな」黒瀬がニヤリとする。

「いやぁ…頑張るけど、緊張するな…」

「お前は強さの割に小心者すぎるな」

神谷が腕を組んだ。

 悠真の初戦は二日目。

 この日は他ブロックの上級生たちの戦いが先に行われる。

 控室で観戦モードに入りながら、彼らは試合を見守った。



 最初に登場したのは、二年生《雷撃操作》Aランカー――葛城颯真。

 ステージに立った瞬間、空気がピリピリと帯電した。

「雷よ、轟け――《ヴォルト・ストライク》!」

 閃光が走り、対戦相手は一瞬で沈んだ。

 観客「うおおおっ!」

《コメント:CGか?》

《これ学生レベルかよ!》

《プロ探索者並み!》

 実況「見事な雷撃! 一撃での勝利です!」

「……あれ、ほんとに人間?」

「雷速で動いてたアル……!」

 リーメイが素で引いている。

 凛も小さく息を呑んだ。

「流石にAランクね……能力も使いこなしてるように見えるわ」

 さらに、別ブロックでは《重力操作》の使い手・水無瀬天音(三年)が登場。

 彼女は手を掲げただけで、相手を地面に叩きつけた。

「……重力場、ね。完全に制御してる」

 神谷が唸る。

「十支族じゃなくても、あのレベルか……さすが上級生だな」黒瀬が呟いた。

 実況が熱気をさらに煽る。

「今年のランキング戦、例年以上にハイレベルです! 若き才能たちがぶつかり合う、これぞ帝都探索学園!」

《コメント:クラッシャー、これ勝てんの?》

《上位勢えぐすぎ》

《でもあいつ能力の器がSランクだろ?てかそもそも無傷で終わるだろw》

 控室のモニター越しに、悠真の名前が幾度も流れていく。



 教師陣とギルド職員も観客席で試合を見守っていた。

「このペース……例年より格段にレベルが高いな」

「今年は例年以上にレベルが高い。能力の成長率が段違いだな」


 夕方、初日の全試合が終了した。

 観客たちは拍手と歓声を惜しまず、SNSでは「#帝都探索学園ランキング戦」がトレンド一位を独占している。

 校内はお祭りのような熱気に包まれ、露店やキッチンカーも並ぶ。

 悠真たちは人の波を抜けて寮へ向かっていた。

「……明日はお前の出番か」黒瀬が言う。

「ああ」

「気張りすぎんなよ。お前がやらかすとアリーナ壊れるからな」

「わ、分かってるよ……」

 笑い合いながら歩く四人の姿を、夜の照明が照らした。

 ふと立ち止まり、悠真は夜空を見上げる。

 遠くの空に、ドローンの光が星のように瞬いていた。

(……明日は俺の番だ。誰が相手でも、全力でぶつかるだけだ)

 拳を握り、胸の奥で静かに燃えるものを感じる。

 ランキング戦、本格開幕の夜だった。



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