77
まばゆい光が視界を覆った。
転移ゲートを抜けた瞬間、地上の喧騒が押し寄せてくる。
「クラッシャーだ!」
「相原悠真! 見えたぞ!」
報道陣が一斉にフラッシュを焚き、マイクを突き出してくる。
教師陣やギルド職員が慌てて規制線を張り、記者たちを押し返していた。
「視聴者数は最後まで百万を超えていました!」
「歴代最高クラスの配信記録です!今回の調査はかなり活躍されていたと見受けられました!」
耳に飛び込む声に、悠真は戸惑って立ち尽くす。
(……こんなに大勢の前で注目されるなんて、俺は一体……)
胸の奥がざわつき、居心地の悪さと熱気が入り混じる。
――戦いは、まだ終わっていないというのに。
学園の臨時会議室。
教師陣とギルドの担当者が顔を揃えていた。
机の上には、例の「異常魔石」が置かれている。黒く濁り、表面には不気味な紋様が脈打っていた。
「……解析を試みましたが、従来の魔石とはまるで構造が違います」
研究員が顔を曇らせる。
「技術的にも理解不能です。我々の世界で生まれたものではない可能性がある」
重苦しい空気が流れる。
「現状、討伐ではなく調査優先で継続すべきでしょう。ただし異常は拡大中の恐れがあります」
ギルド職員が声を張る。
「高ランク冒険者には引き続き調査を依頼します。学生諸君は――学業を優先してください」
教師たちも頷いた。
「……これ以上無理に子どもたちを危険にさらすわけにはいかない」
だが、その場にいた者たちの誰もが心の奥で思っていた。
――あの少年の力は、いずれ必ず必要になる、と。
夕刻、学園の廊下。
「……本当にお前は化け物だな」
黒瀬が吐き捨てるように言う。だがその拳は固く握られていた。
「面白い。次は校内ランキング戦だな。鍛錬を怠るなよ」
アシュベルが笑う。挑戦状のように。
「やっぱり期待通りアル!」
リーメイが軽やかに親指を立てる。
「もっと一緒に戦うアルね!」
「……さすがね、助かったわ」
凛が静かに微笑み、悠真の肩に手を置いた。
言葉を失い、悠真はただ小さく頷いた。
寮に戻ると、談話室から歓声が上がった。
「おお、帰ってきたぞ!」
「百万視聴って、お前もう芸能人じゃん!」外村が飛び跳ねる。
「でも無事でよかった。本当に」真田がしみじみと肩を叩く。
「……次も、必ず帰ってきてね」白鳥が小さく囁いた。
悠真は耳まで赤くなりながらも、「……ああ」と答えた。
夜。
ギルドの研究室に置かれた魔石のケースが、ぼうっと光を放っていた。
紋様が脈動し、まるで呼吸するかのように赤黒い輝きを放つ。
「……これは、我々の世界で再現できる技術なのか……?」
研究者の一人がその魔石の技術に頭を悩ませていた。
静まり返った室内で、魔石だけが不気味に蠢いていた。




