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地上の光が目にしみる。
転移ゲートを抜けた瞬間、俺は思わず深呼吸した。
冷たい地下の空気とは違う、夕暮れの街の匂い。
それだけで、胸が少しだけ軽くなる。
腕輪の画面に「配信終了」と表示され、コメントの流れが止まった。最後に見えた文字列は――
《逃げたw》
《冷静な判断、命あってこそ》
《事故トラウマだろ、仕方ない》
賛否両論。
胸の奥がざわつき、あの下層転移の瞬間がまた脳裏をよぎる。
(……俺は、やっぱりあの記憶を引きずってるんだ)
拳を握りしめて、寮へと足を向けた。
談話室に入った瞬間、どっと声が上がった。
「おおっ、帰ってきた!」
「よくやったな、相原!」
真田が真っ先に駆け寄り、俺の肩を掴んで笑う。
「よく帰ってきたな」
白鳥は胸に手を当てて、少し潤んだ目で言った。
「……心配したんだから」
外村は大げさに腕を広げる。
「お前が無事ならそれでいい! 俺、マジで胃が痛かったんだぞ!」
控室中が温かい空気で包まれる。
だが、黒瀬だけは壁にもたれて腕を組んだまま。
「……逃げたのか?」
低い声が突き刺さる。
思わず息を詰めるが、黒瀬はそれ以上何も言わなかった。
ただ、ほんの一瞬――視線が揺れたのを俺は見逃さなかった。
(……心配してたんだな。あいつなりに)
仲間の声に囲まれながら、俺は胸の奥で静かに誓う。
(……次は、必ず)
翌日。
学園にやって来たのは、ギルドの職員たちだった。
講堂に生徒たちを集め、重々しい声で告げる。
「新宿ダンジョンにて、異常個体の出現が確認されました。
これに伴い、帝都探索学園に正式な調査依頼を発します」
「主に天城凛、アシュベル・フォン・アイゼンリヒト。両名に依頼を受けていただきたいと思っております。」
ざわめきが一気に広がる。
「異常個体……?」
「十支族クラスの任務になるのか...」
「また、直近の模擬戦での活躍や昨日のダンジョンの記録を鑑みて、相原悠真さんにも同行していただければと」
教師陣の表情も険しい。
「危険すぎる」「だが実力は確かにある」――声が飛び交う。
篠原先生が一歩前に出て、鋭い目で言った。
「これは力を学ぶ絶好の機会だ。悠真なら大丈夫だろう。10支族もいるしな。」
その視線が俺に突き刺さる。
全員の目が集まった瞬間、心臓が跳ねた。
(怖い……でも)
息を吸い、震える声を押し殺して言った。
「そうだな……事故を経験し、生還した俺だからこそ――行くべきかもしれない」
言葉にした途端、胸のざわめきが少しだけ収まる。
ギルド職員が最後に告げる。
「特別調査パーティを編成します。明日、その顔ぶれを発表します」
再びざわめき。
仲間の顔を思い浮かべながら、俺は小さく拳を握った。
(仲間たちと一緒なら……俺は、逃げない)
胸の奥の震えを押し込め、次の一歩を踏み出す決意を固めた。




