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訓練場に再び熱気が渦巻く。
悠真がフィールドに立つと、対角の扉から黒瀬蓮が姿を現した。肩を大きく回しながら、いつも通りの不敵な笑みを浮かべている。
「……やっと俺の番だな」
その一言で、観客席が一斉にざわめいた。
「来た!」「ついに怪物同士の激突だ!」
「鉄壁を砕いたクラッシャーと、黒瀬……どっちが上だ!?」
悠真は無言のまま相手を見据える。
(黒瀬……詳しい実力は知らない。でも、この空気……並じゃない。こいつも本物だ)
黒瀬が口角を吊り上げた。
「お前が化け物だってのは聞いてる。けどな……俺だって、十支族を除いたら並ぶ者はいないくらい、強さに自信はあるんだ」
観客が再び沸き立つ。
「どっちが強いか、これで決まるぞ!」
「一年最高峰の戦いだ!」
審判役の教師も、思わず声を落とした。
「……模擬戦だが、このカードはあまりに特別だ」
――開始の合図が響いた。
刹那、黒瀬が爆発的な加速で踏み込み、拳を振り抜く。
轟音と共に砂塵が舞い上がり、地面が抉れた。
「うわああっ!」「地面がえぐれたぞ!」
悠真は咄嗟に肩をひねり、衝撃を受け流す。だがその衝撃だけで足元の床石が砕け散った。
(……重い! これが黒瀬の拳か!)
息を呑む観客の中、悠真も一歩踏み込む。拳が黒瀬の顔面に迫る――。
だが次の瞬間、黒瀬の身体から風が爆ぜた。
バシュウッ!
突風が壁のように拳の軌道を逸らす。轟音が訓練場を揺らし、観客席にまで突風が押し寄せた。
「風でいなした!?」「直撃してたら終わってたのに!」
悠真の拳は空を切り、その衝撃だけで背後の結界が軋んだ。
黒瀬が笑う。
「いいな……お前の拳! 本気でやれる!」
悠真も呼吸を整え、構え直す。
「同じだ。俺も――全力でいく!」
観客席では二年生が叫ぶ。
「今までの試合と次元が違うな!」
三年生も目を見開いた。
「ついこの間冒険者登録が解禁された1年とは思えないな。並の戦いじゃない。能力の使い方が育っている。」
教師が低くつぶやく。
「相原の拳は直撃すれば必殺。黒瀬は風で逸らす……まさに究極の攻防だ」
黒瀬が再び踏み込む。拳に風が纏わりつき、速度と重みが倍増している。体術とは他に能力の風刃も飛んでくるため攻撃にも隙がない。
「はあああっ!」
連打が襲いかかり、空気そのものが爆ぜる。
悠真は必死に受け流しと回避で対応するが、髪が切り裂かれ、制服が風圧で裂けた。
「うわぁっ! 観客席まで風が来るぞ!」
「結界が持つのか!?」
白鳥が顔を覆いながら震える。
「風で……観客席まで……!」
外村が壁を抱えて叫ぶ。
「俺の壁でも防げん!」
訓練場はもはや嵐の中心のようだった。
やがて、両者は同時に一歩引き、深く腰を落とす。
砂煙の中で互いを見据えたまま、呼吸だけが響く。
黒瀬「次で決める!」
悠真(……来い。受け止めて、砕く!)
会場全体が息を呑み、静まり返る。
次の瞬間――。
拳と拳が、同時に突き出された。




