表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/191

52

「お前たち一年生にも、いよいよ模擬戦の順番が回ってきた」

担任が教壇に立った瞬間、教室の空気が一気に張り詰めた。

黒板にチョークが走る音がやけに大きく響く。

「形式は二種類。ソロ戦とチーム戦だ。どちらを選ぶかは自由だが――今回の模擬戦は“校内ランキング戦”の前哨戦として扱われる。序列に直接は反映されないが、教師や上級生の目に止まれば評価に繋がる。観客席には二年、三年も見に来る予定だ」

教室にざわめきが広がる。

「つまり、注目を浴びる試合だ」

その言葉に、生徒たちの顔が一気に熱気を帯びた。



「待ってたぜ」

黒瀬が椅子を鳴らして立ち上がる。「これで一年の序列が決まる」

「俺の壁が輝く時だな!」と外村が拳を突き上げるが、即座に「すぐ壊れるだろ!」とツッコミが飛んできて教室に笑いが起きた。

白鳥は緊張した面持ちで「支援型はチームでしか輝けないけど……やるしかない」と小さく呟く。

真田は机に肘をつきながら「無茶せず、いつも通りのパフォーマンスでいこうぜ」と冷静。

教室全体に期待と不安が入り混じった熱気が充満していく。



俺は――机に置いた手を強く握りしめた。

(俺は仲間に合わせる戦い方は、まだできない。俺が証明すべきは……“俺自身が戦える”ってことだ)

「お前の試合、絶対盛り上がるぞ」

真田が笑いかけてきた。

「観客席は俺の壁で守っとくから安心しろ!」

外村がふざけて言って、クラスが再び笑いに包まれる。

俺も少し笑ったが、すぐに真剣な顔に戻る。

(盛り上げる……なんて俺にできるのか? いや、やるしかない)



「模擬戦は、ただ力を見せつける場所じゃない。自分の力量を最大限発揮して相手と試合をする場所。」

不意に凛の声がした。静かながら、確かな響きを持つ言葉だった。

「――どう戦うか。それが試されます」

その目は真っ直ぐで、俺の胸を射抜いた。

(そうだ……俺はまだ“戦い方”を模索しているんだ。だからこそ、ここで試される)



「模擬戦は明日だ。しっかり準備して臨め」

担任の言葉に、教室全体がざわめきと高揚感に包まれる。

机に置いた拳を見つめながら、俺は心の中で呟いた。

(ついに……試されるんだ。俺の拳が、俺自身が――)



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ