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 翌朝。

 悠真は重い体を引きずりながら、帝都探索学園の道場にやってきた。

(……うそだろ。俺の体でも筋肉痛になるのか……!)

 全身がバキバキに痛む。ベッドから起き上がるだけで呻き声が漏れるほどだった。モンスターにどれだけ殴られても無傷だった肉体でも、基礎を徹底的に叩き込まれれば容赦なく悲鳴を上げる。

「おはよう。体は悲鳴を上げているか?」

 篠原先生が腕を組んで立っていた。

「は、はい……」

「なら合格だ。生きている証拠だ」

 悠真は思わず膝から崩れ落ちそうになった。

(……これ、何の合格なんだよ……)



「昨日渡した棒、覚えているな」

 篠原が指差したのは、中央で回転する長い棒――スピニングバー。

「千回避けろ」

「えっ!? せ、千回!?」

 棒が回転を始める。ヒュンッ、ヒュンッと音を立て、あっという間に目の前へ。

 悠真は反射的に体をひねる――が、次の瞬間。

 バシィッ!

「いったぁっ!」

 棒が足に直撃し、そのまま尻もちをつく。

 見学席にいた真田が爆笑した。

「クラッシャー、壁壊すより自分が壊されてるぞ!」

「笑いごとじゃないっての!」

 それでも悠真は立ち上がり、何度も挑む。反応はできるのに、体が思うように動かない。額から汗が滝のように流れ、視界が霞む。

(速さにはついていけるのに……動き方が分からないんだ……!)



「次はこれだ」

 篠原が竹刀を手に取り、構えた。

「全部避けろ」

「えっ、ちょっ――」

 シュバッ! 竹刀の連打が飛んでくる。

 悠真は思わず正面から受け止めてしまい――バキィッ!

「また折ったぁ!?」

 見学の生徒たちがどよめく。

「ち、違うんです先生! 勝手に……!」

「違う! 受け止めるな、流せ!」

 篠原の怒声が飛ぶ。必死に繰り返すうちに、ようやく肩で力を逸らして竹刀を弾き返すことに成功した。

「……そうだ。その一瞬の余裕が命を繋ぐ」

「はぁ、はぁ……」



 次は板を前に置かれた。

「砕くな。寸前で止めろ」

「えっ……無理だって!」

 悠真は恐る恐る拳を振り下ろす――

 バキィィッ!

 板は木っ端みじんに砕け散った。

「やっぱり……!」

 悠真が頭を抱えると、篠原はため息をついて言った。

「お前の力は振り切れている。だからこそ“柔”を学べ」

「柔……?」

「力は止まらない。だが、受け流す心と体でなら止められる」

 悠真は言葉を反芻した。

(俺に“柔”……? 今まで考えたこともなかった……)



 訓練を終える頃には、道場の床に汗が滴っていた。

「……基礎って……しんどいですね」

「基礎を笑う者は、土台のない塔を立てるのと同じだ」

 篠原の言葉は重かった。

 悠真は拳を握り、夕陽を浴びる道場の外で深く息を吸う。

(……ここでなら、俺は“ただ殴るだけの化け物”から変われるかもしれない)

「明日も来い。基礎はまだ始まったばかりだ」

「……はい!」

 声を張り上げた悠真の瞳には、確かな決意が宿っていた。



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― 新着の感想 ―
オウガやトロールに棍棒で殴られても痛いとか言わなかったのに、人に棒で殴られたら痛いのか?
主人公の学習能力がいつまでたっても成長しない。同じ文章の繰り返しもいつまでたっても変わらない。一話当たりの内容がぺらぺらでテンポも悪く話が進まない。ここまで我慢して読んできたけどそろそろ限界。
何で同じ事を訓練するのに驚くんだろう、、、何も考えられない主人公だし、謎だわぁ。寝て起きたら記憶がなくなるとかの病気なのかな、、
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