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寮のベッドに寝転がり、天井を見つめながらため息をつく。
(……どう戦えばいいんだ。俺には剣も策もない。ただ拳を振るうだけ……)
そんな時、コンコン、とドアをノックする音。
「相原、いるか?」
「真田? どうした?」
「お前、ランキング戦の仕組み知らないだろ? 去年の映像あるから見てみろよ」
そう言ってタブレットを掲げ、にやりと笑う。
画面に映し出されたのは、広大な競技場。歓声が轟き、実況が熱を帯びている。
『これが帝都探索学園・上位陣の戦いです!』
映像の中で、黒瀬と同じ系統の風刃使いが腕を振るう。
――シュッ! 数十メートル先の壁が一刀両断。観客席が大きくどよめいた。
「これが去年の三位だな。俺の目標の一人だ」
と真田が解説する。
悠真は唖然とするしかなかった。
(……本当に学生か、これ……?)
映像が切り替わり、次はチーム戦。
白鳥の先輩にあたる支援型が仲間を癒やし、強化魔法を次々とかけていく。
「ランキング戦はソロ戦とチーム戦の二種類があるんだ」
と真田が説明する。
「ソロ戦は単純に力比べ。でもチーム戦は支援や守りも評価される。どっちに出るかは自由だし、両方ってやつもいる」
悠真は無意識に拳を握った。
(……俺には、支援も策もない。ただ拳で殴るしかない)
次の映像は決勝戦。
結界で競技場そのものを覆う凛の先輩。
雷撃で相手を完全に止めるアシュベル家の兄。
実況の声が熱を帯びる。
『これが全国配信! 視聴者数は数百万を突破! 若き十支族の力が世界を席巻する!』
「ここで勝てば一躍有名だ。スポンサーやギルドから引き合いもある」
真田の声は興奮を含んでいた。
だが悠真の胸に重くのしかかる。
(俺は……この中でどう戦えばいいんだ?)
「なあ、相原」真田がタブレットを閉じる。
「体術でも学んでみたらどうだ? うちの学校にはその分野に強い先生もいる」
「体術……?」
「お前、拳で戦ってんだろ? それを武器にするんだ。型を学べば、無駄な力も減るし、強さも制御できるかもしれない」
悠真はハッとした。
(……俺に、そんな発想はなかった。壊すだけじゃなく、学んでいく……?)
「……いい案だな。今度案内してくれるか?」
「もちろん。任せろよ」
真田は笑顔で頷いた。
部屋が静かになる。
悠真は拳を見つめ、深く息を吐いた。
(体を鍛えて、技を学んで……ひとつひとつ積み重ねていこう。俺の力を“ただの暴力”で終わらせないために)
夜の寮に、静かに決意の炎が灯った。




