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 入学して最初の週。

 担任の先生が黒板に大きくチョークで文字を書いた。

「今日は『ダンジョン探索ライセンス』について説明する。高校に入ったお前たちには避けて通れない話だからな」

 その言葉に、教室はざわっと沸いた。

 前の席では「きた!」と声を漏らすやつがいて、後ろの女子グループも小声で盛り上がっている。

 俺も思わず背筋を伸ばした。


「まず大前提だ。異能は――学校や企業、それにダンジョンの中など、“定められた場所”でのみ使用できる」

 先生の声に、生徒たちは真剣な眼差しを向ける。

「普段の生活では、異能には“制御ロック”がかかっている。発動しようとしても、能力そのものが抑制される仕組みだ。だから街中では炎を出そうとしても火花すら散らないし、《身体能力上昇》を持つ者でも走力は普通の人間と変わらん」

 俺は「なるほど」と頷いた。

 そういえば、俺も学校や訓練場以外で能力を発揮したことは一度もない。

「このロックは、事故や犯罪を防ぐためだ。人混みで火球を撃たれたらどうなる? 誰かがカッとなって《硬化》で車を弾き飛ばしたらどうなる? 想像するまでもないな」

 教室がしんと静まる。

 先生は続けた。

「もっとも例外はある。“スタンピード”だ。ダンジョンからモンスターが大量に溢れ出す現象だな。このときだけは街全域のロックが強制解除され、異能者は即座に戦闘態勢に入れるようになっている」

「うわ、やっぱヤベぇ……」

「ニュースでしか見たことないけど、あれ本当に起きるんだな」


「次に、異能そのものについてだ」

 先生は新しいスライドを映した。

「異能には大きく分けて三系統がある。

 一つ目は《身体強化》系。筋力・瞬発力・持久力などを底上げするもの。

 二つ目は《属性操作》系。炎・水・風・雷といった自然現象を操るもの。

 三つ目は《特殊能力》系。透視や回復、硬化、空間認識のように多種多様だ」

 生徒たちは食い入るようにスクリーンを見つめる。

「さらに、それぞれの異能にはランクがある。SからEまで。Sはごくわずか、Eは誰でも持つような初期能力だ。同じ《身体能力上昇》でも――Eなら『少しだけ速い』程度だが、Sともなればオリンピック選手を超える身体能力を叩き出す。握力や脚力も常人の十倍近くになり、銃弾を避けることさえ可能だ」

「おお……」「すげぇ……」

「だが、炎や雷などの属性操作系になると話は別だ。Sランクともなれば、一人で都市の防衛を担える規模の力を持つ。火山の噴火を抑えたり、雷で敵軍を焼き払ったりな。国家戦力級と呼ばれるのは、そうした一握りの存在だ」

「マジかよ、同じ能力でも全然違うのか」


「なお、ランクの正確な判定は“能力測定”で行う。体育館やギルドの施設に設置された専用装置を使って数値化し、倍率を算出する」

「例えば《身体能力上昇》Eなら通常の1.1倍、Dなら1.3倍……Sなら理論上は十倍以上だと言われている。

 炎系ならEは火花程度、Dで火球を作れるようになり、Sともなれば都市を一瞬で焼き払う規模になる」

「やっべぇ……」

「Sとか本当にいるのかよ」

「いる。だがほんの一握りだ。Sランクが生まれる確率は千万人に一人と言われている」

 先生の言葉に、クラスがざわめいた。


(……俺の能力はどうだろうか……)

 正直、少し楽しみになってきた。

 どうせダンジョンでお小遣い稼ぎをする程度でも、少しでも強いほうが安心だもんね。

 ――俺はそんな風に考えていた。



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