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転校初日。俺はクラスメイトに連れられて広大な訓練場へ足を踏み入れた。
地元の体育館なんか比べ物にならない。観客席のような場所まで備え付けられていて、思わず息を呑む。
(ここが……帝都探索学園の実技場……)
担任が壇上に立ち、声を響かせる。
「今日は転校生もいるからな。基礎能力の披露を兼ねた実技だ。自分の異能を明確に示せ。ここは隠す場所じゃないぞ」
クラスがざわめき、順番に披露が始まる。
黒瀬蓮が一歩前に出ると、空気が張り詰めた。
「《風刃》」
腕を振るうと、空気が裂けるような音を立てて壁に切れ目が走った。鋭さにクラスが「おお……!」とどよめく。
次に真田陽翔が金属片を浮かせて自在に操る。
白鳥朱音は光をまとい、わざと小さく切った腕を瞬時に癒す。
外村一馬は胸を張って叫んだ。
「俺の防御壁を見ろ! 絶対守るぞ!」
次の瞬間、展開した壁にヒビが走り「えっ!?」と本人が慌て、クラス中が爆笑した。
――そして。
「相原、次だ」
心臓が跳ねる。俺は前へ出て、喉を鳴らした。
「……俺の能力は、《身体能力上昇(S)》です」
一瞬、場が静まり返る。
「身体能力……?」
「珍しいな」
「強化系って、この学年にはほとんどいないよな」
黒瀬が腕を組み、じっと俺を見据える。
「ふん……強化系か。噂どおりなら楽しませてもらう」
教師が壁を用意した。
「軽くでいい。試しに拳を叩き込んでみろ」
俺は喉を鳴らし、拳を握る。
(軽く、軽く……)
ドゴォォォォッ!!
轟音と共に壁が粉砕された。破片が四散し、訓練場に響き渡る。
「なっ……!」
「え、今……軽くって言われてなかった!?」
「嘘だろ……」
俺は慌てて両手を振った。
「や、やりましたよ!? 本当に軽く!」
外村が頭を抱えて叫ぶ。
「俺の壁より丈夫なのに……! なんでだよ!」
爆笑の渦に混じって、黒瀬が小さく呟く。
「……やっぱり化け物か」
白鳥は目を見開いたまま、ぽつりと。
「本当に、力だけで……」
凛は黙って俺を見つめ、その瞳に静かな光を宿していた。
教師が深いため息をつき、腕を組む。
「……身体能力上昇(S)、か。だが文字だけじゃ語れん強さだな」
クラスメイトたちの目には畏怖と期待が入り混じっていた。
俺は拳を見下ろし、心臓の鼓動を聞きながら自問する。
(俺は……この場所でやっていけるのか?)




