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 転校の手続きなんかは、俺が思っていたよりもずっと早く終わった。きっと帝都探索学園が、裏でいろいろ済ませておいてくれたんだろう。

 気づけばもう、俺は寮に荷物を運び込み、学園指定の制服に袖を通していた。

 鏡に映る自分の姿を見て、思わず息を呑む。

 地元の公立校とはまるで違う、黒を基調にしたシャープなデザイン。襟にはエンブレムは「探索者養成」の象徴。

 (これが……新しい生活の始まりか)

 帝都探索学園は、やっぱり桁違いだった。

 学園の敷地のすぐ隣には、巨大なダンジョンゲートがそびえ立っている。ここから直接ダンジョンに挑めるようになっているらしい。

 校舎は近代的なガラス張りで、まるで企業ビルみたいだし、体育館に相当する訓練場は地元ギルドより広い。

 (日本最高峰の探索者養成学校……。やっぱり本物だな)

 教室の扉を開けると、全員の視線が一斉に集まった。

 「今日は転校生を紹介するぞ」担任が声を張る。「この時期で珍しいが、すぐに分かるだろう。――相原、前に」

 心臓がうるさいほど鳴る。

 俺は深呼吸してから、黒板の前に立った。

「相原悠真です。よろしくお願いします」

 一瞬の沈黙。次の瞬間、ざわめきが広がった。

 「……え、クラッシャー相原!?」

 「本物だ……」

 「東京遠征で下層にいたって噂の……」

 凛が窓際で、静かにこちらを見つめている。その瞳にどんな意味が込められているのかは分からない。だが、特別な視線であることだけは伝わった。

 「黒瀬、相原の隣の席にしてやれ」

 担任に呼ばれた男子が、腕を組んで俺を見た。

 「黒瀬蓮だ。……噂ほどか、楽しみだな」

 挑発めいた視線。すぐ後ろの生徒が「また黒瀬はすぐ挑発する」と苦笑する。

 「真田、案内役を頼む」

 「了解っす。俺は真田陽翔。まあまあ、緊張すんなよ。すぐ慣れるから」

 人懐っこい笑顔に少し救われる。


 休み時間になり、前の席の女子が振り返った。

 「相原くん……肌、綺麗ね」

 「お、おい朱音、それいきなり言うなって!」と周囲が笑う。

 白鳥朱音。柔らかな雰囲気に、地元にはいなかったタイプだ。

 「俺は外村一馬! 守るときは任せろ!」

 元気いっぱいに名乗りを上げる男子。

 「お前、この前すぐ壁壊されたじゃん!」とクラス中が総ツッコミ。

 どうやらコメディ担当らしい。


 (……地元とは全然違う。強い奴ばかりで、空気も引き締まってるように感じる)

 不安と同時に、ほんの少し胸が高鳴る。

(ここなら……俺の力を、学べるのかもしれない)


 担任が手を叩く。

 「次の授業は訓練場で異能実技だ」

 クラスが一斉にざわつき、立ち上がる。

 俺も流れに飲まれて歩き出した。

(――帝都探索学園。俺の新しい生活が、始まった)



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― 新着の感想 ―
黒を基調にしたシャープなデザイン。襟にはエンブレムは「探索者養成」の象徴。 ↑の文ですが、「襟にはエンブレムは」となってますが、「襟にあるエンブレムは」の方が通じると思いました。 読むようになり、気に…
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