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 佐伯からメッセージをもらった翌日。

 教室に入った瞬間、ざわめきが広がった。

「……来たぞ、クラッシャー相原」

「昨日のまとめ見たか? あれマジで相原なんだろ」

 すでにあだ名は定着していた。

 「ありがとう」と声をかけてくれる生徒もいれば、目を逸らして距離を取る生徒もいる。

 相反する視線を同時に浴びながら、俺は席に着いた。

(……やっぱり、もう普通には戻れないんだ)

 そう痛感しながら、一日をやり過ごした。

 放課後、担任の先生に声をかけた。

 教室に誰もいなくなったタイミングで、思い切って口を開く。

「先生……俺、帝都探索学園に行こうと思います」

「……そう、か」

 担任は少し目を細めて、机に肘を置いた。

「正直な話、この学校で教えられることは限られている。能力に関して言えば、ほとんどが自己流だ。みんな放課後や週末に地元の浅層へ潜るくらいで、東京や大阪と比べると環境は段違いだ」

 静かに頷く。

 確かに、ここで潜るダンジョンは規模も浅さも知れている。

「もちろん、この町にも優秀な探索者はいる。だが……東京の連中と比べると、力の差は埋めがたい。それに――」

 先生は言い淀み、言葉を選ぶように続けた。

「君の力は、すでに一部で危険視されている。先生としては守りたいが……限界がある」

 俺は深呼吸して、正直に口にした。

「……俺、自分の力と向き合っていこうと思うんです。俺の力は、ただ強いだけじゃなくて……扱い方を間違えたら危ないってこと、俺自身も噂で知っています。だからこそ、この力はちゃんと使わなきゃいけないんだと思います」

 担任はしばらく黙って俺を見つめ、最後に小さく頷いた。

「……そうだな。なら、胸を張って行ってこい」

 夜。夕飯を囲む食卓で、父と母に向き合った。

「帝都探索学園から正式にスカウトが来てるんだろ?」と父。

「選ぶのはお前だ。だが、お前が笑って生きられる道を進め」

 母も優しく微笑む。

「悠真は誰かを守れる強さを持ってるんだから。恐れずに行ってほしいわ」

 俺は二人を見つめ、言葉をはっきりさせた。

「……俺、行くよ。帝都探索学園に」

 父と母は黙って頷き、その目には安心と少しの寂しさが混じっていた。

 夜、自室。

 ベッドに腰を下ろし、拳を握りしめる。

(逃げ続けるのはもう終わりだ。俺は俺の力を――正しく学ぶ)

(普通じゃなくてもいい。前を向いて、胸を張れる自分になりたい)

 窓の外、夜空を見上げる。

 スマホにはまだ佐伯のメッセージが残っていた。

『負けんなよ!』

「……あぁ、負けない」

 強い決意を胸に、俺はゆっくり目を閉じた。



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― 新着の感想 ―
危険人物にされとるけど、なんで?素行が悪いわけでも無いのにか?
何回同じシーンやるんすかね?あと3回くらいは親からスカウトの話されそうですか?笑 それとも皆1日の終わりに中途半端に記憶消える設定とかあります?
最初に同じシーンが繰り返されすぎて、どの話を読んでるかわからなくなる
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