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投稿予約時間を間違えてました!!!
教室の空気は、以前とは少し違っていた。
「相原、また潜るの?」
そんな声が飛んできても、どこか探るような調子が混じっている。
「……まぁ、軽くね」
俺は笑って返すけど、胸の奥はざらついたままだ。
(距離を取られてるのは分かってる。でも……俺は俺で、やれることをやるしかない)
放課後。ギルドに顔を出すと、受付の職員がニヤリとした。
「おう、相原くん。また来たか。……頼むから、今日こそ武器は壊さないでくれよ?」
「……はは、気をつけます」
苦笑しつつレンタル剣を受け取り、浅層ダンジョンへと足を踏み入れた。
モンスターは相変わらずのスライムやゴブリン。
だが、剣を振るえばすぐに軋み、数分もしないうちに――バキィッ!
「またかよ……」
結局は拳を握りしめ、まとめて叩き伏せるしかなかった。
(……普通に戦おうとしても、普通にはなれないんだよな)
視界の隅でコメントが流れる。
《クラッシャー安定w》
《拳で解決》
《また壊した》
最近はこうしたネタ扱いが増えてきた。
けれど、中には――
《なんでこんなEランクにいるんだ?》
《これ、マジで異常だろ》
冷静な分析もちらほら混じり始めている。
「……俺は、まだEランクでいたいんだよ」
小さく呟いた言葉は、誰にも届かず闇に溶けていった。
帝都探索学園の広大な訓練場でも変化が起きようとしていた。
「……あの時、私の結界は砕かれた」
天城凛は深呼吸し、再び光の結界を展開する。
仲間たちもそれぞれ修練に打ち込んでいた。
雷撃を操るアシュベルは苛立ったように放電を繰り返し、他の十支族も黙々と力を研ぎ澄ませる。
「あんな強さ、見たことなんてない……。あの“人”でも……」
誰かがぽつりと呟く。
凛は手を止めず、瞳に決意を宿す。
「負けない。彼がどんなに特殊でも、私は私の全力を高める」
十支族には十支族の使命がある。だからこそ、立ち止まるわけにはいかなかった。
一方その頃。
探索を終えた俺は、街の夜景を眺めながら歩いていた。
(帝都探索学園からのスカウト……本気で考えないといけないのかもしれない)
(でも……ここを離れたら、今の俺は“普通”からもっと遠ざかってしまう)
拳を握りしめると、まだ温かい余韻が掌に残っていた。
(この力に答えを出す時が……近づいている)
同じ夜。帝都の空を見上げた凛もまた、拳を握って呟いた。
「次に会うときは――必ず」
まだ遠く離れた場所で、二人の決意は同じ空に溶けていった。




