表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/189

32

 東京から地元に戻った日の夜。

 玄関を開けた瞬間、居間から両親の気配が伝わってきた。

「……担任の先生から連絡があった」

 父が真剣な表情で言った。

「帝都探索学園からスカウトが来たそうだな」

 母も心配そうに身を乗り出す。

「本当なの、悠真?」

「……うん」

 俺は短く答えた。曖昧な返事しかできなかった。


 夕飯の席につくと、重苦しい空気のまま箸が進む。

 やがて父が口を開いた。

「父さんたちも心配なんだ。東京遠征の事故、ニュースでも大きく取り上げられていた」

「悠真が無事で良かったけど……でも、悠真のおかげでみんなも無事だったって。母さん、誇らしかったのよ」

 母の言葉に、胸の奥が少し温かくなった。

「……俺は、普通に過ごしたいんだ。でも……この力と、ちゃんと向き合っていきたい」

 自分でも驚くくらい、素直な言葉が口をついた。


 父は真剣な眼差しで俺を見つめる。

「帝都探索学園は全国から人材を集める場所だ。力のある者が正しく学ぶには適していると思う」

「佐伯くんのこと、覚えてるでしょ?」

 母が続けた。

「いい環境で学んで、今は立派にやってるじゃない。悠真にも、ちゃんと支えてくれる人が必要なの」

 父はゆっくりと言葉を選ぶように口を開く。

「無理に押しつけるつもりはない。けど……俺たちは、悠真が一人で悩んで苦しむのを見ていたくないんだ」


 俺は箸を置き、俯いた。

「……俺、自分の力が怖いんだ。どうしてこんなに強いのか分からないし、クラスメイトとは差を感じてしまう」

「だからこそ、ちゃんと学べる場所に行った方がいいのよ。安心して力を試せるところで」

 母の声は柔らかかった。

「選ぶのはお前だ。でも、どんな道を選んでも俺たちは悠真の味方だ」

 父の言葉に、胸が詰まった。


 食卓に静かな時間が流れる。

 俺は心の中で繰り返した。

(転校……。俺が選ぶべき道は――)

 その夜、天井を見つめながら、葛藤と期待がないまぜの思いを抱えて目を閉じた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
そんなに普通でいたいなら、探索者にならなければいいのでは? なんで無理して探索者を続けようとするのか。 物語的には、得体の知れない力に不安を抱えながら強くなりたいという一心で成長して行く、っていう流れ…
アイディアは良かったけど,作者の実力が足りてなくて勿体無いな。
能力がSランクってわかった時点でこの話をするべきでは?なぜそんなに普通にこだわるのか?主人公に違和感があって感情移入できない。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ