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26

 東京本部の訓練施設――巨大なドーム状の建物に案内されると、俺たちの心臓の鼓動まで反響するような静けさに包まれた。

 壁一面がガラス張りになっていて、その向こうにはクラスメイトや天城凛、アシュベル、そして数多の職員や冒険者たちが見守っている。

「では、まずは再測定だ。ここでは限定的に能力の使用が可能となっている。」

 職員の一人が机の上に水晶球を置いた。

「前回の数値が正確なのか確認する必要がある」

「……はい」

 俺はごくりと唾を飲み込み、両手を水晶に添えた。

 ――ゴッ。

 低い地鳴りのような音が響き、水晶に蜘蛛の巣状のヒビが走る。

 次の瞬間、バァン!と破裂音を立てて粉々に砕け散った。

「っ……!」

 職員が慌ててモニターを確認する。

「なんですか?これは……測定不能……?」

「おい……まただよ……」

 見学席からクラスメイトの声が漏れる。

 俺はただ、砕けた水晶の欠片を呆然と見下ろすしかなかった。



「次は攻撃力を測る。天城さん」

 職員が声をかけると、凛が静かに前へ出た。

「……分かりました」

 床がせり上がり、厚さ数メートルのコンクリート壁が姿を現す。

 その瞬間、凛の指先から淡い光が溢れ、壁全体を覆うように結界が張られた。

 まるで光の檻のように、硬質で揺るがない壁。

「この二重防御は、通常ならBランク冒険者でも破れません」

 職員が俺を見た。

「安心して全力で叩き込め」

「ほ、本気でいいんですか……?」

「構わん。測定だからな」

 背後でクラスの生徒たちが囁く。

「さすがに壊せないだろ……」

「結界付きだしな」



 俺は拳を握り、深呼吸を一つ。

 踏み込み、一気に拳を突き出す。

 ――轟音。

 まず、凛の結界に亀裂が走った。

 ビシィッ、と音を立てて蜘蛛の巣状のひびが広がり――瞬く間に砕け散る。

 光の破片が宙を舞い、眩い閃光が視界を覆った。

 そのまま拳はコンクリートに突き刺さり、分厚い壁を粉砕。

 余波は止まらず、はるか後方にあった訓練場の壁にまで届き、大穴を穿った。

 空気が爆風となって押し寄せ、観客席の生徒たちが思わず身を庇う。



「……っ!」

 凛が顔を青ざめさせ、数歩後ずさった。

「……嘘……私の結界が……?」

「バ、バカな……! 結界ごと破壊……!?」

 職員の声が裏返る。

「やっぱり相原、怪物だ……」

 クラスの誰かが震え声で呟く。

 アシュベルは腕を組み、鋭い眼差しで俺を睨んだ。

「結界ごと砕くなど聞いたこともない。……間違いない。規格外だ」



 俺は呆然と拳を見下ろした。

「……俺、ただの《身体能力上昇》のはずなのに……」

 モニターは「測定不能」の赤文字を繰り返し点滅していた。

 (……どうして、こんな力が俺に……?)

 彼は知らない。この世界にはステータスという概念がないのだから。


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― 新着の感想 ―
そっか〜測る物差しが無いのか〜
>>彼は知らない。この世界にはステータスという概念がないのだから。 あー、基礎ステータス(レベル)が高いから…なるほど
寝返りで魔王を倒すクラッシャー。
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