表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/183

23

 赤黒い苔が広がる洞窟。

 誰もが声を失い、絶望だけが充満していた。

「くっ……もう、だめだ……」

「助からない……俺たち死ぬんだ……!」

 震えるクラスメイトたちは、武器を握ることすら忘れ、膝をついていた。

 監督冒険者も血を吐きながら立ってはいるが、肩で息をし、膝が折れそうになっている。

 その前に、ずしん、と足音を響かせながら迫るトロル。

 巨腕が振り上げられ、悠真へと振り下ろされた。



 ――ドガァンッ!!

 轟音と共に地面が割れ、砂塵が舞い上がる。

 だが、そこに立っていた悠真の体は――傷一つなかった。

「……え?」

「嘘、だろ……直撃したのに……」

 クラス全員が息を呑む。

 監督冒険者でさえ、瞳を見開いて固まっていた。

 視界にコメントが飛び込んでくる。

《効いてない!?》

《人間か? いや、もう人間じゃねえだろ》

《無傷で笑った、バケモン確定》

 悠真自身も信じられなかった。

(なんで……俺、普通なら死んでるはずなのに……)



 混乱する頭のまま、体は勝手に動いていた。

 目の前のトロルに拳を叩き込む。

 ――ズガァァンッ!

 岩壁が崩れ落ち、トロルの巨体は一撃で吹き飛び絶命した。

「な、なんなんだよ……」



 呆然とする声が背後から漏れる。

 その間にも、二体のオーガが棍棒を振りかざして突進してきた。

 俺はもう武器を構えない。

 右拳を突き出すだけで、オーガは壁ごと叩き潰された。

 左拳を振り抜けば、二体目の首が折れ、地面に沈む。

 ほんの数秒の出来事だった。



 配信画面が激しく揺れ、コメントが爆速で流れていく。

《何だこれ!?》

《クラッシャーやべぇwww》

《監督が押されてた相手をワンパン》

《国家戦力級だろ……高校生がこんなんアリかよ》

 視聴者数は一気に数万へと跳ね上がり、全国規模の“事件”として拡散していく。



「……俺、なんで……」

 拳を握ったまま、俺は震えていた。

 心臓が早鐘のように鳴る。

 恐怖か、混乱か、それとも別の感情か――自分でもわからなかった。

(俺はただ、みんなと同じように冒険者になって……少しお小遣い稼ぎしたかっただけなのに……)

 崩れ落ちたモンスターの残骸を前に、誰も声を出さない。

 ただ全員が、悠真を「同級生」ではなく「異常な存在」として見ていた。



 コメント欄に新たな文字が流れ込む。

《救援部隊、もう出発したって!》

《帝都探索学園も動いてる!》



「……俺が、守るしかないのか」

 暗闇の中、悠真は拳を握りしめた。

 孤立無援の下層で、その異常性を証明しながら――救援が来るまで戦う覚悟を固めた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
Sランクであることは把握されてる割には よそからのアプローチがなかったのが 不自然なくらいですよね それともSランクは希少ですごいけれど 囲い込みに動くほどでもないんかな?
オーガでやったことをそのままトロールで繰り返すのおもろい天才。
オーガの棍棒とかいうちょうどいい換えの武器あるやんけ。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ