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アルセリア外縁の転移ゲートが青白い光が円を描き、空気が押し潰されるように震える。
次の瞬間――
悠真たち第零班と、レオンの姿が転移陣の中心に現れた。
待機していたARC警備兵が一斉に動く。
魔導スキャナーが展開され、結界が即座に張られた。
「帰還確認!
第零班、全員生存!」
その声に、緊張していた空気がわずかに緩む。
だが――完全には解けない。
悠真は周囲を見回した。
ARC職員、冒険者連盟幹部、そして――
地球側G.O.Dの臨時通信ホログラム。
ノヴァが一歩前に出る。
「すぐに報告を。
――“前線で何が起きたか”を。」
簡易会議室へ移動する間も、
悠真たちの身体データはリアルタイムで解析されていた。
「魔力残滓、異常値……」
「戦闘規模、想定を超えています……」
円卓に着くと同時に、ノヴァが会議を開く。
悠真が一歩前に出た。
「魔王領深層で、異変が起きました。
魔物が一斉に撤退し、魔力の流れが――止まった。」
室内がざわめく。
黒瀬が続ける。
「嵐みたいだった魔力が、
一点に吸い上げられる感じだ。
正直……あれは“自然現象”じゃねぇ。」
神谷が静かに補足する。
「俺たちが知ってる魔族の動きじゃない。
指揮系統が上書きされたみたいだった。」
ARC研究員が即座に反応する。
「……一致します。
同時刻、魔王領全域で“理の揺らぎ”を観測。」
ノヴァが目を伏せ、低く告げた。
「深淵姫リグレア。
――彼女が前線に干渉した可能性が高い。」
ホログラム越しに、篠原の姿が映る。
『……確認する。
魔王クラスが、直接動いたと?』
レオンが腕を組み、口を開いた。
「間違いねぇな。
ありゃ“出迎え”だ。
戦う気はなかったが……存在を知らせに来た。」
『つまり――』
篠原の声が硬くなる。
『向こうは、
“ゼロが本格的に動き始めた”と認識したわけだ。』
悠真は、無意識に拳を握っていた。
恐怖ではない。
不思議な――既視感。
「現時点では、
魔王軍の大規模侵攻は確認されていない。」
だが、と前置きして続ける。
「しかし、“観測された”という事実は重い。
ゼロ――相原悠真の存在は、
確実に魔王領を刺激している。」
ノヴァが視線を悠真に向ける。
「だからこそ、
あなた達の行動は、今後さらに重要になる。」
短い沈黙の後、エルスは宣言した。
「第零班は、
引き続き行動を継続。
ただし――次からは“調査”ではなく“監視”も含める。」
黒瀬が小さく息を吐く。
「……なんか、
一気にレベル上がった感じだな。」
神谷が苦笑する。
「平穏な冒険者生活、
どこ行ったんだよ。」
レオンは楽しそうに笑った。
「いいじゃねぇか。
本番はこれからだろ?」
悠真は、アルセリアの夜空を思い浮かべた。
静かな都市。
だがその向こうで、確実に何かが動き始めている。
(……戻ってきて正解だった)
そう思いながら、
彼は次の任務を静かに待つのだった。




