表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
173/174

172

 観測局ARCの巨大な会議ホール。

 複数のホログラム画面に、迷宮の地図、魔導数値、音声データが映し出されている。

 司会進行役の観測局官僚が、震える声で議題を読み上げた。

「本日の議題は……

 二点です。

 ――一点目。

 『迷宮出口から発見された“地球人”について』

 ――二点目。

 『その中の一名が“ゼロと反応”を示した件について』」

 その場にいた全員が、ざわめいた。


 映像には、悠真たちが迷宮出口で保護された記録が流れる。

「まず……ご覧の通り、彼らは自ら“地球人”と名乗り、

 この世界と異なる文明圏から来たことを主張しています。」

 観測主任エルスが腕を組む。

「迷宮が……異世界と繋がったというのか。」

「事実……彼らの装備、衣服、言語、文化的背景すべてが一致しています。」

 軍顧問ハルドが叫ぶ。

「だが、地球? それはどこだ!

 魔王領の奥地でもこんな文化は存在しないぞ!」

「門の向こう側で、次元的な接続が起きた可能性があります。」

「時空断層かもしれません。」

「いや迷宮の自己回復機能による“ランダム接続”だ。」

 意見が飛び交い、会議室が熱を帯びる。

 別のホログラムが表示される。

 そこには、悠真の身体から検出された“異常値”が記録されていた。

「ご覧ください。

 地球人のうち三名は一般兵レベルの魔力量だったのに対し……」

 室内が凍りつく。

「ひとりだけ――

 魔王級の魔力反応が観測されました。」

 どよめきが走る。

「その上……こちらをご覧ください」

 解析官が別のデータを投影した。

【観測データ No.481】

音声記録:

 ――『対象ゼロとの観測を開始します』

「数日前、ノヴァ主任が迷宮内部で受信した音声……

 この“ゼロ”という単語。

 そして今回の反応値……」

 エルスが静かに言い切った。

「…こちらにいる彼が、”ゼロ”ということになります。」


「ゼロは魔王を討った存在だぞ……!?」

「本当に実在したのか?」

「敵なら都市が壊滅するぞ!」

「いや、地球人には敵意は見られない!」

「むしろ接触して友好関係を――」

 騒然とする空気。

 その中で、軍顧問ハルドが声を張り上げた。

「私は言ったはずだ!

 即刻拘束し、魔力封印具にかけるべきだ!!」

 研究主任エルスが静かに返す。

「魔王級に拘束具が効くと思うか?

 もし本当にゼロなら、刺激した瞬間に都市が消えるぞ。」

「し、しかし……!」

「……ノヴァを呼べ。

 彼女はこのことを知っていたのだろう?」


 会議ホールが静まり返ったまま、

 ゆっくりと扉が開いた。

 白いロードコート。

 銀糸のような髪。

 冷徹に揺れない瞳。

 観測局主任――ノヴァ・ヴェルナー。

 彼女が一歩、二歩と進むたび、

 周囲の観測機械がかすかに反応音を立てる。

 彼女自身が“異界の境界”を帯びているようだった。

「……君が戻ってきてくれて助かった」

 研究主任エルスが安堵の声を漏らす。

「報告を。

 ノヴァ主任――“ゼロ”とは何者なのだ?」

 ノヴァは一度、静かに目を閉じた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ