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 「……あなたは優しいわ。

  誰かが行かなきゃって、そう思ったんでしょう?」

 その言葉に、悠真の動きがピタリと止まった。

 しばらく沈黙が落ちる。

 悠真はゆっくりと視線を落とし、

 絞り出すように口を開いた。

 「……いや。

  もちろん、行くべきだとは思った。

  誰かがやらなきゃって。

  レオンさんのことも……放ってはおけない。」

 そこで一度、言葉が切れる。

 呼吸を整えるように小さく吸って、

 再び凛を見た。

 「でも、それだけじゃない。俺は、知りたいんだ。」

 「……知りたい?」

 「うん。」

 悠真は続けた。

 声は静かだが、その奥に揺るぎない意志があった。

 「俺が何者なのか。

  なんでこんな力があるのか。

  あの“ゼロ”って呼ばれた理由も……全部。」

 少し笑う。

 自嘲でもなく、不安でもなく――決意の笑みだった。

 「帝都探索学園に転校したのも、

  自分が何なのか知りたかったから。

  ずっとずっと、胸につっかえてた。」

 凛は息を呑む。

 「だから……これは、俺のためでもあるんだ。

  誰かのためだけじゃない。

  ――俺自身のルーツを知りたい。」

 沈黙。

 だがその沈黙は、もう拒絶の沈黙ではなかった。

 凛はゆっくり目を伏せ、

 そして小さく頷いた。

 「……そう。

  なら、止められないわね。」

 顔を上げたその瞳には、覚悟と寂しさと――信頼があった。

 篠原も静かに息をつく。

 「……自分のために選んだなら、それでいい。

  ただし――必ず戻ってこい。」

 悠真ははっきりと頷いた。

 「もちろんです。」


 翌日。

 G.O.D本部の特別ミーティングルームで、

 異界調査のための新しい部隊――

 **「G.O.D調査第零班」**の結成が正式に発表された。

 ホログラムにメンバー一覧が映し出される。

 【第零班メンバー】

  ・相原悠真(前衛/観測適応候補)

 ・黒瀬武(前衛・索敵)

  ・神谷京介(防御・前衛)

  ・G.O.D研究班4名(環境解析、地形スキャン、エネルギー計測)

  ・支援AI《G-Assist01》(データ解析・戦闘補助)

 凛は地上本部からサポートチーフとして全通信を管理する。

 緊張した空気の中、篠原が口を開いた。

 「……この任務は、想像以上に危険だ。

  正直まだ戻ってこれる確証もない。向こうのダンジョン?がどういうところかもわからない...」

 悠真は息を呑んだ。

 篠原は続ける。

 「まぁ、入ってヤバそうだったらすぐ戻ってきても大丈夫だ。」

 凛が言葉を補う。

 「――今、向こうに最も近づける可能性があるのは、あなた。」

 黒瀬が腕を組む。

 「俺、異世界ってやつ行ってみたいんだよな。結構そういう作品好きなんだよ。」

 神谷も肩をすくめた。

 「俺も好きなんだよ。だから志願したとこある。」

 悠真は静かに頷く。

 「……俺が確かめてくる。」

 その言葉は迷いなく、

 しかしどこか優しい響きを持っていた。

 篠原は満足げに頷き、

 最後にホログラムを切り替えた。

  【任務開始地点:新宿ゲート】

  【出発予定:明朝 06:00】

 「――第零班。

  未知の世界を、頼んだぞ。」



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