表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/173

15

 遠征が来週に迫った放課後、俺はまたギルドに足を運んでいた。

 とにかく「今のままじゃ不安だ」という気持ちが背中を押していた。

 窓口にカードを差し出すと、受付の職員が苦笑いを浮かべる。

「また来たのか、相原君。真面目だな」

「は、はは……まあ、その……」

(バレるのは嫌だけど、実績を積まないと落ち着かない……)

 軽く頭を下げ、レンタル武器を受け取って上層へ向かう。



 スライムはもう問題にならなかった。

 一撃で沈む。

 むしろ問題は、その一撃を受け止めきれない武器の方だ。

 ゴブリン三体に囲まれたときも、剣を振り下ろした瞬間――

 ――バキィィッ!

 嫌な音と共に、また刃にヒビが走る。

「……はいはい、またね」

 もう驚きもしない。苦笑して剣を収め、素手でゴブリンを叩き伏せる。

 拳を振るうたびに、相手が壁際に吹き飛んで沈んでいく。

 それを見て、視界の端にコメントが浮かんだ。

《素手のが強くね?》

《これ新人?》

《武器いらないの草》

「……っ!」

 心臓が跳ねる。

 視聴者数は十数人。以前より増えている。

 それだけで妙に落ち着かなくなり、俺はわざとらしく「ふぅ」と息を吐いた。

(やばい、気をつけないと。これ以上は……)

 それでも探索は無事に終わり、いつもの素材を集めて帰還する。



 窓口で素材を差し出すと、職員が端末を操作しながら首を傾げた。

「……ほう。条件を満たしたな。相原君、今日からEランクだ」

「え、えっ……俺が?」

 渡されたカードを見下ろす。そこには《冒険者ランク:E》の文字。

 実感が湧かず、ただオロオロとするしかなかった。

「普通ならもっと時間がかかる。だが――君の戦闘データを見ると、やはり規格外だな」

 そう言って職員はにやりと笑い、指を突きつけてきた。

「ただし! Eランクになったからには、武器を壊したらちゃんと料金いただくからな!」

「ひぃっ!」

 背後からクスクスと笑い声が漏れる。

 周囲の冒険者が「クラッシャー昇格おめでと」「今度は請求書が飛ぶぞ」と茶化してくる。

 俺は情けなく肩をすくめるしかなかった。



 ギルドを出て夜道を歩く。

 カードには確かに「Eランク」の文字。

 小さな達成感はある。でも同時に――

(……武器を持つ意味があるのか? でも素手で戦ってたら、いつか絶対バレる……)

 街灯に照らされた自分の拳を見つめ、ため息をついた。

 美肌や瞬間記憶なんて役立たずなスキルしか持っていない。

 この拳に頼るしかないのだと分かっていても、不安は消えない。

(遠征にはもっと化け物みたいな連中が集まる。俺なんかが通用するのか……)

 それでも、立ち止まるわけにはいかない。

(……やれるところまでやるしかない)

 夜空を見上げ、次の決意を固めた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
世間に広くバレたくないけど、ちょっと自己顕示欲もある、ということですね。 わかります。
同じ規格品をレンタルして 壊しまくってるんだから 同じモノ借り続けるのに ギルド側も何か言わんのやろかね?
ばれるの意味が分からない まずギルドや学校?にはもうS判定は出ているわけで ばれたらまずい理由もわからない。 いろいろ言ってごめんなさい。 余りにも入り込めないのでリタイア
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ