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10

 帝都探索学園の配信を見た衝撃は、まだ頭から離れていなかった。

 天城凛。アシュベル家。

 同じ世代とは思えないほどの圧倒的な実力。

(……あそこに、俺が並べるはずない。

 でも……少しでも、強くならなきゃ……)

 そう自分に言い聞かせるように、俺は再び上層へ足を踏み入れていた。

 ギルドカードが光り、頭上に追尾カメラが浮かび上がる。

 視界の端には小さなウィンドウ。視聴者数は一桁で、コメントもない。

(……見られてなくて助かるな。こんな未熟な姿……)

 苦笑しながら剣を抜き、探索を開始した。



 スライムは難なく倒せた。

 袋に核を入れ、少し奥へ進むと――ゴブリンが姿を現した。

「よし……!」

 剣を振り下ろす。

 だが、その瞬間。

 ――バキィィィィンッ!

 耳障りな音と共に、手にしていた剣が粉々に砕け散った。

「ま、またかよ!?」

 柄だけが手に残り、先端は床に散らばっている。

 ゴブリンは一瞬たじろいだが、すぐに仲間を呼ぶように甲高い声を上げた。

 ――ギギギャァァ!

 奥から複数の影。

 次々とゴブリンが現れ、俺を取り囲む。

(やばい……! 丸腰だぞ……!)

 背中に冷たい汗が流れる。



 四方から一斉に棍棒が振り下ろされる。

 反射的に腕を上げた。

 ――ドゴッ!

「ぐっ……」

 鈍い衝撃が走る。

 だが、痛みは――ない。

「……あれ?」

 さらに横から棍棒が脇腹に直撃する。

 ドゴォッ! という音が響く。

 しかし、体はびくともしなかった。

 ゴブリンがきょとんとした顔をして、もう一撃を叩き込む。

 ドガッ!

 ドガンッ!

 それでも、俺の体は無傷だった。

「……痛くも、痒くもない……」

 俺自身が一番驚いていた。



 パニックのまま、俺は反射的に拳を振るった。

 ――ゴシャァッ!

 手に伝わったのは、何か柔らかいものが砕ける感触。

 次の瞬間、殴られたゴブリンが壁際まで吹き飛び、動かなくなっていた。

「……っ!?」

 力を込めたつもりはない。ただ払いのけようとしただけ。

 それなのに、一撃で沈んだ。

 残りのゴブリンたちが怯えたように後ずさる。

 俺はもう一度拳を振るう。

 ドガァッ!

 ズガァンッ!

 殴るたびにゴブリンが吹き飛び、床に沈む。

 数秒後には、辺りに静寂だけが残っていた。



 はぁ、はぁ、と息を整える。

 手のひらを見つめても、傷一つついていない。

(……俺、やっぱりおかしいんじゃないか?)

 頭上のカメラが、淡々とその様子を記録している。

 コメント欄は相変わらず無反応。

 だが、この映像は確かに保存されている。

 俺は拳を握りしめ、震える吐息を吐いた。

「……どうなってるんだ、俺……」

 不安と恐怖が、心の奥底でじわじわと広がっていった。



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― 新着の感想 ―
三回も同じ事繰り返して、アホの子にしか思えないんだけど、、、
身体強化状態って見た目もそのままなのかね? 北斗の人や幽白の闇のブローカーの人?みたいに筋骨隆々になるのかな?
主人公思考停止すぎて草
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