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 ダンジョンから戻った夜。

 悠真は黒く濁った魔石を手に、帝都探索者ギルドへ足を運んだ。

 受付嬢が顔を上げ

 「配信確認してます、相原さん。無事に帰還していただきありがとうございます。

  ……しかし、その魔石の色、初めて見ますね。」

 悠真はカウンターに小袋を置く。

 「中層で戦った個体が異常個体だった。熱を持ってて、普通の魔石とは違う。」

 封を開けた瞬間、受付奥の分析班がざわついた。

 「熱反応あり?」「研究所に運ぼう」

 端末のモニターに、規格外の数値が走る。

 受付嬢は眉を寄せながらも、丁寧に言葉を選ぶ。

 「後日、正式な調査報告書を提出していただけますか?」

 悠真は肩をすくめ、苦笑した。

 「調査報告書って言っても……ワンパンだったからなぁ。」

 「まぁ、確かにそうですね...」

 悠真は軽く手を振り、出口へ向かった。

 「結果が出たら教えてください。やはり気になる事件ではありますので。」

「もちろんです。今回もお疲れ様でした。」


 ギルドの奥、関係者以外立ち入り禁止の研究棟。

 並んだモニターのひとつが不規則な波形を描き、電子音が静寂を裂いた。

 「……解析班、止めるな。そのまま波形を追え!」

 白衣の職員たちが慌ただしく端末を操作する。

 スクリーンには、見慣れない形の魔力パターンが映っていた。

 「この波形……既存の異能とも、魔物の魔力反応とも一致しませんね。」

 「値が周期的じゃない。いや、これは――流入してる?」

 主任研究員がモニターに顔を寄せ、眉をひそめる。

 「空間の歪みが記録されてる。……まるで、外部から魔力が流れ込んでるみたいだ。」

 静まり返る室内。

 研究員のひとりが、椅子をきしませながら呟いた。

 「外部……? まさか魔石、いやモンスターに干渉なんて聞いたことがないぞ。」

 別の研究員が息を呑んだ。

 「理論的に不可能です。外界との魔力循環は閉鎖されているはず……。

  でも、この反応――まるで、何らかの技術でモンスターそのものが強化されているような……」

 主任が短く頷く。

 「通常の魔石からは抽出不可能なエネルギー値だ。……誰が、どうやってこんな干渉を?」

 その場にいた誰も、答えを出せなかった。

 ただひとり、若い研究員が控えめに口を開く。

 「帝都探索学園に報告を……特に、相原くんには知らせるべきでは?」

 主任はしばし考え、静かに頷いた。

 「……あぁ。彼が見つけた以上、無関係では済まないだろう。」


 同時刻、アメリカ西部・ネバダ砂漠。

 赤茶けた大地を貫くように口を開く、政府管理下の第七ダンジョン。

 爆風と砂煙の中、探索部隊が警戒態勢を取っていた。

 「……視認確認! 黒い装甲種、こちらへ接近中!」

 前衛が叫ぶ。砂を割って現れたのは、全身を黒い結晶で覆った巨躯のモンスターだった。

 肌の表面からは赤黒い蒸気が立ち昇り、まるで熱そのものが生きているかのように蠢いている。

 「見たことねぇぞ、こんな個体!」

 「資料データにもない……未登録種だ!」

 「距離二十、攻撃許可!」

 数本のエネルギーランスが閃き、轟音とともに異形の体を貫く。

 巨体がのけ反り、断末魔の咆哮を上げながら砂上に崩れ落ちた。

 砂煙の中に転がったのは、黒く濁った魔石。

 隊員のひとりが魔力計を取り出し、数値を確認した。

 「……反応値が高すぎる。通常の魔力計が振り切れてるぞ。」

 別の隊員が魔石をケースに収め、眉をひそめる。

 「これ、ただの個体変異じゃない……何かが混じってる。」

 その光景は記録カメラを通して中継され、

 数時間後には全世界のニュースで流れていた。

  『アメリカ西部ダンジョンにて、未登録モンスターを確認』

  『現場映像には、黒い結晶体を体内に持つ個体が――』

 同じ頃、ワシントン郊外の豪邸。

 アメリカ十支族・グレンデル家の当主、レオン・グレンデルがその映像を見つめていた。

 炎を象徴する家系の男は、静かに笑みを浮かべる。

 「黒い魔石、ね……。日本のギルドでも似た報告があったはずだ。

  あとは相原悠真――か。……面白い。」

 立ち上がり、窓の外を見やりながら呟く。

 「近いうちに会いに行くさ。新宿のダンジョンも、この目で確かめてやろう。」

 夜のニュースヘッドラインが流れる。

 > 『帝都に続き、アメリカでも異常魔石確認』

 > 『二国間での連携調査へ。国際探索者連盟、調査チームを結成予定』

 ニューススタジオの奥で、誰かが小さく呟いた。

 「……これ、本当に地球の魔力なのか?」




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