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 放課後、俺はいつものようにギルドへ立ち寄った。

 上層に潜ってスライムやゴブリンを狩り、素材を売却して小遣いを稼ぐ――もう数度目になるせいか、だいぶ慣れてきた。

 今日もダンジョンへ潜ろうと準備をしていると

「おい、始まったぞ!」

「帝都探索学園の実習配信だ!」

 ロビーの中央に設置された大画面に、人だかりができていた。

 好奇心に引かれて、俺もつい足を止める。



 映し出されたのは、暗い岩壁に囲まれた広い空間。

 新宿ダンジョンの中層――俺たち新人が到底踏み入れられない階層だ。

 画面の中央に立っていたのは、一人の少女。

 長い黒髪を後ろでまとめ、冷静な瞳で前を見据えている。

 両手を広げると、周囲の空間がゆらりと歪んだ。

「――天城凛だ!」

「やっぱ本物は違うな……」

 観客の誰かが声を上げる。

 次の瞬間、襲いかかってきた群れのモンスターが、一斉に見えない壁に弾き飛ばされた。

 天城凛の結界。

 空間そのものを操る彼女の力は、まさに別格だった。

 続いて画面の奥から、雷鳴のような轟音。

 金髪の少年が槍を振り抜くと、雷撃が奔り、岩をも砕きながらモンスターを焼き尽くしていく。

「アシュベル家の後継者だってよ。ドイツから留学してきたって噂だ」

「十支族が二人も同じチームとか反則だろ」

 ざわめく観客の声と、画面に流れるコメントが重なる。

《やっぱ十支族の世代は化け物だな》

《新人で中層安定って意味わからん》

《帝都探索学園の黄金世代やべぇ》



 俺は息を呑んで画面を見つめていた。

 同じ“新人”のはずなのに、戦っている世界がまるで違う。

(これが……帝都探索学園……。

 これが十支族……。

 同じ世代に、こんな化け物がいるのか……)

 拳を握る。

 胸の奥に広がるのは、恐怖でもあり、憧れでもあった。

 自分は武器を壊して慌てているだけ。

 それなのに、画面の向こうの彼らは堂々とモンスターを圧倒している。

(……俺が、あんな連中と同じ舞台に立つことになるのか?)

 ぞわりと背筋に走る感覚。

 不安と期待が入り混じって、目が離せなかった。



 画面から目を離せずにいたが、やがて俺は深く息を吐いた。

 ――羨ましいとか、怖いとか、そんな気持ちよりも、胸の奥で「俺もやってみたい」という感情が芽生えていた。

「……行くか」

 カードを握りしめ、俺は再び上層へ向かうためにギルドの奥へ歩き出した。



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