表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/8

7話 魔物戦闘訓練2 異変



アルトール騎士学校の生徒たちは、順調に魔物を討伐していた。日頃の過酷な訓練に比べれば魔物討伐は遠足と変わらない。


アルトールの門を潜る遥か前より鍛え上げられている猛者たち。それが彼らだ。




その時ーー


陽気で余裕がある声が聞こえる。


「よし!これで3体目!」


蜘蛛型の魔物が生き絶え転がる。息一つ乱れず剣を収める。

その生徒――パル。



「僕が最多かも」


静かに微笑むパル。

余裕があるが、微塵も油断していない。

漂う雰囲気で音が霞む。


強者集団ぞろいのアルトール騎士学校の中であっても剣技は5指に入る実力者。




突然ーー



「うわああっ!!誰か助けてーー!」



一人の生徒が何かから逃げている。生徒の後方には巨大な黒い何かが。


その時ーー


クガァァアアァ!!!


咆哮が響く。

景色が歪むほどの狂気を含む咆哮



「……あんなのもいるのか」


パルは息を呑む。

今までの魔物と明らかに雰囲気が違う。

あまりのにも異常な存在感に、体が固まる。


ーー


逃げていた生徒が木の根に足を取られ転んだ。巨大な魔物の牙が生徒に迫るーー!



パルは剣を抜き走る。


しかし


(やばい!間に合わない……!)


パルは生徒を助けようとするが間に合いそうにない。





ーーガキン!!


硬い音が弾ける。

魔物の牙が寸前で止まる。



「ベルグ!!」


パルが後方から叫ぶその先に。


最強の剣士、ベルグ・ジーカ。

脅威を真正面から受け止めていた。



その存在にパルは安堵する。




しかしーー



ベルグの剣が少しずつ押され始めている。

ベルグは感じる。


(長くはもたない。)


「はやく逃げて!」


ベルグが転んだ生徒に叫ぶ


転んだ生徒は急いで起き上がりよろめきながらパルの方に走り出す。



ベルグの剣が限界に近い!


(剣が……)



ーーその時。



「ファイヤー!!」



誰かが後方から魔法を発動する。

その魔法は魔物の顔面に直撃。

予想外の攻撃に怯む黒い魔物。



「助かったよ……トラン」



ベルグの視線の先にいるのは学校ただ一人の平民。


変人トラン。

訓練の魔法禁止ルール?そんなものは覚えていない。

草をむしるトラン。


「……」

トランは無言でうなずき魔物を見ている。

その瞳は不思議な色。

興味?恐怖?

……別の何かか……



パルはトランの魔法に驚く。

(今……杖無しで魔法を発動した?)



そんな驚きに浸る間はなく、ベルグが状況を伝える。


ベルグは理解していた。


「これは明らかに緊急事態だね。」



「えっ!……なるほど……」

ベルグの言葉にパルは瞬時に状況を理解する。




「パル!急いで教官を呼んで来てくれないか?」


ベルグの声が響く。


「こいつは僕たちじゃどうにもならない!」


「でも!ベルグはどうするんだ!?」




「時間を稼ぐだから!はやく!!」


パルは拳を握る。

決意のように見えるが…


「……わかった!!」


パルは走り出す。

迷わず。


ーー


ベルグは魔物を観察する。


(……この魔物は狼型?いや……狼型にしては大き過ぎる。そして……恐ろしく強い)


黒い狼型の魔物は異様な姿をしていた。

全身は闇の様に黒く。

2つの目は血のように赤。

口からは凶悪な二本の牙が伸びている。



ベルグは魔物を見据えたままトランに声をかける。


「トラン!援護を頼めないかな?」




「……ああ」


トランは無表情で答え、ベルグの横に立つ。


最強の剣士と草むしり平民。


二人の視線は同じ物を見ていた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ