4話 剣術授業
陽の光が差し込む武道場で、生徒たちは一列に並び、ひたすら剣を振っていた。
掛け声、踏み込み、呼吸。すべてが揃ってこそ「型」になる。
その空間には、汗と緊張の匂いが混じっていた。
「脇をしめろ!!」
ギル教官の鋭い声が武道場を切り裂く。
「「「はい!!」」」
声が木霊し、生徒たちの背筋が正される。
「腹に力を込めろ!! 背中を抜くな!」
鋭い檄が続き、生徒の顔に真剣さが宿る。誰一人として気を抜ける雰囲気ではない。
――だが、そんな中でも、一人だけ異質な存在がいた。
ギルの視線が、ある生徒で止まる。
(……こいつは……)
彼の眼前にいたのは、金眼の天才――ベルグ・ジーカ。
剣を握る姿には一切の無駄がなく、風のように剣が流れる。
ベルグの一振りに空間に斬音が響く。
異質な音。
他の学生の音とはまるで違う。
(12歳の子供にこれほどの剣が振れるのか……)
ギルは、ただ静かに見つめるしかなかった。あの動きは、もはや訓練生の域を超えていた。
⸻
カーン、カーン、カーン――。
武道場に鐘の音が鳴り響く。授業終了の合図だ。
「今日はここまでとする」
「しっかり復習するように!」
「「「はい!ありがとうございました!!」」」
生徒たちは次の授業へ向けて、ぞろぞろと武道場を後にしていく。
その流れの中、ひときわ大きな声が飛ぶ。
「おい!平民!」
呼び止めたのは、当然のようにゴールだった。
彼は腕を組み、当然のような態度でトランを見下ろしていた。
「……」
トランは無言のままゴールの方を向く。
表情に緊張も、怒りも、何も浮かんでいない。ただ淡々と、見る。そしてすぐにそっぽを向いた。
武道場の出口へ歩き出そうとする。
「貴様!」
怒りの声をあげたのは、横にいた取り巻きの一人。
だが、次の瞬間、ゴールがそれを制止した。
「まー待て」
彼の口元が変わる。
「模擬戦をしないか? 」
「……オレ様が、貴様に“本当の剣”を教えてやる」
「……。」
ゴールを無表情で見つめるトラン
「心配するな。庶民の骨は柔らかいからな。少し当たるだけで折れてくれる」
ゴール本人は気づいているのか、
声には毒と興味が混じっていた。
その提案は挑発であり……。
だが――
「やる!」
トランは即座に答えた。
躊躇わずに即答する。まるで子供のように、そして楽しそうに笑った。
その無邪気さに、ゴールの眉がわずかに動き。
一歩踏み出そうとした足が、勝手に止まった。
(……なんなんだ、あの笑い)
ただの笑顔に、なぜか違和感を感じるゴール。
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